商業登記関係 未成年者が取締役へ就任する方法と登記手続き
未成年者は取締役となれるか
株式会社で新しく取締役を選ぶときは、一般的には株主総会の決議によって取締役を選任し、その取締役がその就任を承諾することが必要です。これは会社と取締役が委任関係にあるため、会社側が取締役として選任するだけでは不十分であり、就任の承諾があって初めて委任関係が成立し、新しく会社の取締役が誕生します。
未成年であることは取締役の欠格自由ではない
会社法には取締役の欠格事由が定められており、例えば法人や成年被後見人は取締役となることはできません(会社法第331条1項)。しかし、未成年者は当該欠格事由に含まれていません。
つまり、未成年者は取締役に就任できることになります。
取締役としての業務を行うことのできる判断能力
取締役は、基本的には会社の業務を執行しますので、取締役に就任する人(未成年者含む)はその職務内容を理解している必要があるでしょう。また、取締役には善管注意義務や忠実義務(会社法第355条)が課せられており、その義務に反して会社に損害を与えたときは損害賠償責任を負う可能性があります。
未成年者は取締役に就任することができますが、当該未成年者はこのことを認識していなくてはならず、個人差はありますが12歳や15歳の方には難しいケースもあるかと思います。
一般的には、10歳未満の方には意思能力がないとされていますので、10歳未満の方が取締役に就任することは難しいかもしれません。
未成年者が取締役に就任するときの手続き
取締役は、株主総会の決議によって選任され、選任された取締役がその就任を承諾することによって就任することになります。株主総会の決議によって選任されることは、未成年者であっても20歳以上の方が取締役となるケースと異なる点はありません。
しかし、会社と取締役は委任関係であるため、お互いに契約を締結することのできる能力が必要とされています。未成年者には(一定以上の年齢であり意思能力があったとしても)単独で契約を締結する能力はありません。
そのため、一般的には当該未成年者が取締役になることへの親権者(父親・母親健在のときは両名)や未成年後見人の同意が必要となります。
登記申請に必要な添付書類
未成年である子Xが取締役会非設置の株式会社の取締役に就任するときの役員変更登記申請に必要な添付書類は次のとおりです。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- X及びXの親権者の印鑑証明書
- Xの親権者の同意書
- 同意者がXの親権者であることの分かる戸籍
※親権者が複数いるときは両名の同意書、印鑑証明書が必要です。
15歳未満の方は印鑑証明書を取得できない
15歳未満の方は、住所を登録している市区町村役場で印鑑証明書を取得することができません。
そのため、15歳未満の方は次に挙げる会社の(代表)取締役に就任することができないことになります。
- 取締役会非設置会社の取締役・代表取締役
- 取締役会設置会社の代表取締役
- 有限会社の取締役・代表取締役
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。