商業登記関係 取締役会の決議で代表取締役の予選をできる場合、できない場合
代表取締役の選定方法
株式会社においては、必ず代表取締役が1名以上います。
取締役会設置会社では、取締役会が取締役の中から代表取締役を選定しなければならないとされており(会社法第362条3項)、取締役会非設置会社では、取締役各自が株式会社を代表することになります(会社法第349条2項)。
また、取締役会非設置会社では、定款の定め等により特定の取締役を代表取締役とすることもできます(会社法第349条3項)。
取締役会非設置会社の代表取締役の選定方法については、こちらの記事をご参照ください。
代表取締役をあらかじめ決めておく
取締役会を開催するには、取締役の過半数の出席が必要です。
各取締役が忙しいため、取締役会を頻繁に開催することができないような会社では、代表取締役を事前に選定(予選)したいというニーズがあります。
- 1ヶ月後に代表取締役が辞任するので、取締役会が開ける今日、次の代表取締役を選んでおきたい。
- 取締役を改選する定時株主総会後に、取締役会を開催することができないため、あらかじめ次の代表取締役を選んでおきたい。
なお、取締役全員が議案に同意をし、監査役が異議を述べないのであれば、取締役会の決議があったとみなされる方法があります(会社法第370条)。
代表取締役を予選できるかどうか
代表取締役を予選できるかどうかの判断基準は、
- 予選時と効力発生時の取締役のメンバーに変更がなく、
- 予選時と効力発生時の期間が1ヶ月以内程度
というのが一つの目安となります。
後者の1ヶ月以内程度という期間は、1ヶ月を過ぎれば100%却下されるというわけではありません。
しかし予選の期間が1ヶ月を超える場合、事前に法務局と相談をしておいた方が無難でしょう。
なお、上記基準は取締役会の設置の有無により変わりません。
代表取締役を予選できるケース
取締役(代表取締役)の構成が、
- 取締役ABCD 代表取締役A
という取締役会設置会社において、2017年8月20日に取締役会を開催し、2017年9月1日を効力発生日として代表取締役Bを選定した場合、2017年9月1日時の取締役がABCDであれば、予選として有効です。
上記会社の2017年9月1日時点の役員は、
- 取締役ABCD 代表取締役AB
となります。
代表取締役を予選できないケース
取締役(代表取締役)の構成が、
- 取締役ABCD 代表取締役A
という取締役会設置会社において、2017年8月20日に取締役会を開催し、2017年9月1日を効力発生日として代表取締役Bを選定した場合、2017年9月1日時の取締役がABCEであれば、予選として有効ではありません。
これは、効力発生時の取締役がABCやABCDEであるときも同様です。予選時と効力発生日の取締役のメンバーが異なるためです。
この場合、取締役を変更(DとEの入れ替え)した後に改めて取締役会を開催して、代表取締役Bの選定をしなくてはなりません。
取締役が一堂に会することが難しいのであれば、会社法第370条によるみなし取締役会(書面ではなく電磁的記録(Eメール等)による同意も可)を利用したり、テレビ会議システム等により取締役会を開催することも検討することになります。
なお、株主総会の決議で代表取締役を選定することでこの問題をクリアする方法があり、こちらの記事もご確認ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。