商業登記関係 NPO法人も2018年10月1日(予定)から貸借対照表の公告が必要になります。
特定非営利活動促進法の改正
特定非営利活動促進法(以下、NPO法といいます)が平成28年6月7日に一部改正されました。
このNPO法の平成28年改正は、平成29年4月1日に施行されています。
この改正により、今までは特定非営利活動法人(以下、NPO法人といいます)にも株式会社と同様に貸借対照表の公告義務が課されることになりました。
貸借対照表の公告が必要となること以外にも改正点があります。
ここではNPO法人における貸借対照表の公告が必要となる点しか取り上げていませんが、その他の改正点につきましては次のURLからご確認ください。
NPO法人における貸借対照表の公告
NPO法が改正されたことにより、今までは不要であったNPO法人の貸借対照表の公告が義務となります。
いつから公告が必要となるか
平成28年改正のうち、貸借対照表の公告に関する規定については、平成29年4月1日から起算して2年6ヶ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。
そのため、平成30年(2018年)10月1日がその施行日と見込まれています。
平成30年10月1日以後に作成された貸借対照表が公告の対象となりますが、平成30年9月30日以前に作成された貸借対照表のうち、直近のものについても公告義務があります。
平成30年9月30日以前に作成された貸借対照表を公告するときは、
- 施行日である平成30年10月1日(予定)までに公告する
- 施行日以後遅滞なく公告する
のどちらかを選択することになります。
公告する貸借対照表は全文か要旨か
官報または日刊新聞紙に掲載する方法により貸借対照表を公告するときは、貸借対照表の要旨を公告すれば足ります(NPO法第28条の2-2)。
それ以外の方法で貸借対照表の公告をするときは、要旨だけでは足りず、全文を掲載するものと思われます。
貸借対照表の公告方法としてどのようなものがあるか
貸借対照表の公告方法としては次の5つが挙げられます。
- 官報に掲載する方法
- 日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告(ホームページ等)
- 内閣府ポータルサイトを利用する方法
- 公衆の見やすい場所に掲示する方法
貸借対照表の公告だけ別の方法で公告することはできるか
NPO法人が公告方法を官報に掲載する方法と定めているときは、貸借対照表の公告も官報に掲載する方法によって行います。
しかし、貸借対照表以外の公告方法とは別に、貸借対照表の公告方法についてのみ別途規定することは可能とされています。
公告方法の定款の定め方の記載例
貸借対照表の公告方法について別途規定するときの定款の定め方の記載例は次のとおりです。
官報
この法人の公告は、この法人のホームページに掲載して行う。
ただし、貸借対照表の公告については、官報に掲載して行う。
日刊新聞紙
この法人の公告は、この法人のホームページに掲載して行う。
ただし、貸借対照表の公告については、日本経済新聞に掲載して行う。
電子公告
この法人の公告は、官報に掲載して行う。
ただし、貸借対照表の公告については、この法人のホームページに掲載して行う。
内閣府ポータルサイト
この法人の公告は、この法人のホームページに掲載して行う。
ただし、貸借対照表の公告については、内閣府NPO法人ポータルサイト(法人入力情報欄)に掲載して行う。
公衆の見やすい場所
この法人の公告は、この法人のホームページに掲載して行う。
ただし、貸借対照表の公告については、この法人の主たる事務所に掲示して行う。
「及び」はOK、「又は」はNG
公告方法は、公告がどこに掲載されるか明確である必要があります。
例えば、
- この法人の公告は、官報及びこの法人のホームページに掲載して行う。
という表現であればどちらかを確認すれば公告をチェックすることができますが、
- この法人の公告は、官報又はこの法人のホームページに掲載して行う。
では、どちらをチェックすればいいか不明確であり、このような定め方は不適切とされています。
貸借対照表の公告期間
貸借対照表の公告期間は、貸借対照表を公告する方法によって異なります。
官報・日刊新聞紙に掲載する場合
官報あるいは日刊新聞紙で貸借対照表の公告をするときは、(一事業年度の貸借対照表につき)1回掲載すれば済みます。
電子公告の場合
ホームページ等で貸借対照表の公告をするときは、約5年間継続して公告をする必要があります。
約5年間とは、貸借対照表の作成日から5年を経過した日を含む事業年度の末日まで、です。
ですので、実際には5年よりも長い期間、貸借対照表の公告を掲載し続けることになります。
公衆の見やすい場所に掲示する場合
公衆の見やすい場所に掲示して貸借対照表の公告をするときは、1年間公告をする必要があります。
定款の公告方法を変更する
定款の公告方法を変更するときは、NPO法人の社員総会の決議によって変更します。
定款変更は、定款に別段の定めのない限り、社員総数の2分の1以上が出席し、その出席者の4分の3以上の多数をもって行います(NPO法第25条2)。
なお、この定款変更には所轄庁の認証は不要とされています。
(公告方法以外の定款の内容を変更するときは、所轄庁の認証が必要なケースがあります。)
公告方法につき定款の記載を変更したときは、所轄庁へ定款変更届出を行いましょう(NPO法第25条6)。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。