商業登記関係 合同会社の公告方法は官報?電子公告?それぞれのメリットを比較する。
合同会社の公告方法と登記事項
公告方法は、合同会社の登記事項とされています(会社法第914条9号乃至11号)。
そのため、合同会社は次の3つのうちから公告方法を選択する必要があり、どれも選択しなかったときは自動的に「官報に掲載する方法」が当該会社の公告方法となります(会社法第939条4項)。
- 官報に掲載する方法
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告
各公告方法については、こちらの記事にも記載していますのでご確認ください。
公告とは
会社の行う公告とは、株主や債権者等利害関係者に一定の重要な事項を知らせるために行われ、これは会社法等の法令によって義務付けられています。
会社が義務付けられている公告としては、毎年の決算公告(下記のとおり、合同会社においては不要)や、一例として次のような行為をするときに求められます。
- 資本金の額の減少
- 株券提供公告
- 基準日を定めたとき
- 吸収合併、一部の吸収分割・株式交換・株式移転等の組織再編
- 株式会社から持分会社への組織変更
- 持分会社から株式会社への組織変更
- 解散
- 外国会社の日本における代表者退任(日本支店閉鎖) 等
「及び」はOK、「又は」はNG
公告方法の定め方として、3つ(官報、日刊新聞紙、電子公告)のうち複数を選択することはできるでしょうか。
例えば、「官報及び日本経済新聞に掲載してする。」のような定め方は可能とされています。
一方で、「官報又は日本経済新聞に掲載してする。」のように「又は」で繋ぐことはできないとされています。
利害関係人がどの媒体を見れば良いか分からないためです。
合同会社が公告することを求められるとき
合同会社の公告方法を検討するには、どのようなときに合同会社が公告をする必要があるのかを知っておいた方がいいでしょう。
合同会社は決算公告が不要
合同会社の1つの特徴として、「決算公告が不要」というものがあります。
株式会社の場合は、法律上決算公告をすることが義務付けられているため、毎年の決算公告を安くするために会社の公告方法(あるいは貸借対照表の公告のみ)として電子公告を選択することも考えられます。
決算公告は、非公開会社の大会社以外の会社で貸借対照表の要旨を掲載するパターンでも、1回につき7万円以上はかかります。
合同会社には決算公告義務がありませんので、決算公告に関する官報掲載費用を考える必要がありません。
債権者保護手続きは、公告方法に関わらず官報公告が必要
合同会社において公告が求められるケースは、主に次のような行為をするときです。
- 資本金の額の減少
- 吸収合併、吸収分割等の一部の組織再編
- 株式会社への組織変更
- 解散
これらの行為をするときは、会社の公告方法に関わらず、原則として官報公告が必要となります。
つまり、会社の公告方法を「日刊工業新聞」や「電子公告」と定めている会社においても、必ず「官報公告」をしなければなりません。
公告方法を電子公告とするメリット
知れたる債権者がいるときは、減資や合併等を行うときに、官報公告に加えて各債権者への個別催告も必要となります。
公告方法として電子公告を選択するメリットとしては、減資や合併等を行うときに、各債権者への個別催告に代えて電子公告をすることにより、各債権者への個別催告を省略できる点にあります。
なお、自社のホームページがない会社や、自社のホームページには決算公告を掲載したくない会社向けに、電子公告用のサイトを有料で貸し出している会社もあります。
公告方法を日刊新聞紙とするメリット
公告方法として日刊新聞紙を選択するメリットとしては、電子公告と同様に、減資や合併等を行うときに、各債権者への個別催告に代えて日刊新聞紙での公告をすることにより、各債権者への個別催告を省略できる点にあります。
加えて、電子公告には無いメリットとして、ホームページが無くてもダブル公告が可能なことと、債権者保護手続き期間終了と同時に(効力発生すれば)登記申請ができる点が挙げられます(電子公告の場合は、調査機関の結果が出てくるまで多少タイムラグがあります)。
デメリットとしては、公告掲載費用が高額となる可能性がある点が挙げられます(ただし、電子公告も調査機関の調査費用が発生します)。
官報を選択する合同会社が多い
合同会社を設立するときは、公告方法として「官報」を選ばれる方が多い印象です。
個人事業主から法人成りするケースや、資産管理会社として合同会社を選択される場合、官報以外の公告方法を選択するメリットはあまり感じられないかもしれません。
今日現在、もし私が自分の合同会社を設立するときは、公告方法は「官報」を選択します。
ところで、公告方法として「電子公告」を採用するときは、公告を掲載するサイトのURLを登記簿に載せることになります。
ホームページを持っていなければならない点(公告用WEBページを貸し出している会社もありますが、ランニングコストが発生します)や、当該URLを変更したら原則としてその変更登記(登録免許税3万円)が必要となる点にも注意が必要です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。