商業登記関係 相談事例 【相談事例】明日、株式会社の増資をしたい。
増資(募集株式の発行)に必要な日数
明日、急遽出資を受けることになったので、その登記をお願いしたいというご依頼をいただくことがあります。
株式会社において借入ではなく出資を受けるのであれば、出資者に対して全て自己株式を交付した場合を除き、少なくとも「発行済株式総数」と「資本金の額」が変更となるためその登記が必要となります。
募集株式の引受人に対して、全て自己株式を交付した時は登記事項に変更は生じません。
≫募集株式の発行時に自己株式のみ処分をしたときの登記
さて、増資(以下、募集株式の発行)によって登記事項に変更が生じたときは、その効力発生日から2週間以内に当該変更登記を申請しなければならないとされていますので、翌日出資を受けることになったとしても同日にその登記を申請しなければならないわけではありません。
しかし、株主総会の決議等の出資を受けるための手続きは出資を受ける前にしておかなければなりません。
ここでは1人会社(株主1名、取締役1名)における募集株式の発行の最短手続きについて確認をします。
募集株式の発行手続き
募集株式の発行は、次のような流れで進めます。
- 募集事項の決定(株主総会)
- 募集事項の通知
- 出資予定者からの申込み
- 割当ての決定(株主総会)
- 割当ての通知
- 出資金の払い込み
公開会社を除き、ほとんどのケースにおいて出資予定者は決まっています。
そのため、「1.募集事項の決定」の際に、「4.割当ての決定」についても、申込みを条件とする等として一緒に決議してしまうことが少なくありません。
また、下記のとおり上記235については「総数引受契約」に代えることができます(会社法第205条)。
株主総会決議
株主総会の決議は、会社の形態や委任状の有無により、その開催の2週間前、1週間前または定款で定めた期間までに招集通知を発送して開催することになります。
≫株主総会の招集通知はいつまでに発送しなければならないか
しかし、一定の場合を除き、株主全員の同意があるときは招集通知を省略することができます(会社法第300条)。
また、議案の内容に株主全員が同意するときは、株主総会の決議があったものとみなすことが可能です(会社法第309条1項)。
≫みなし株主総会(決議)-会社法第319条
どちらの方法にしても、1人会社においてはすぐに株主総会の決議をすることが可能です。
募集株式総数引受契約
募集株式の手続きを「申込み+割当て」方式で行う場合は、割当ての決議をした日と同日を払込日とすることができません。
というのも、払込日の前日までに割当てしたことを申込者に通知しなければならないとされているためです(会社法第204条3項)。
しかし、「総数引受契約」方式で行う場合は、上記のような日数の制限はありませんので、割当ての決議をした日と同日を払込日とすることができます。
そのため、「総数引受契約」方式で行えば1日で行うことができます。
出資金の払込み
募集株式の発行手続きには、払込日までに払込金の全額を振り込まなければなりません。
募集株式の発行の登記申請には、出資金が払い込まれたことを証明するために申請会社の金融機関の預金口座の写しを添付する必要があります。
払込みが15時を過ぎてしまい、着金が翌日となってしまうような場合は当日を効力発生日とすることは難しいかもしれません。
募集株式の発行手続きは1日で行うことが可能
条件が揃っていれば募集株式の発行手続きは1日で行うことが可能であり、その時にリソースがあれば当事務所でも対応することができます。
※会社の状況、ご用意いただくもののご準備等によって、即日増資(募集株式の発行)ができないこともあります。
増資のご依頼は、スケジュールに余裕を持ってご相談ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。