商業登記関係 代表社員ではない業務執行社員の職務執行者と登記事項
合同会社の登記事項
合同会社の登記簿には次の事項が記載されます(会社法第914条)。
登記簿に記載される事項を登記事項といいます。
- 目的
- 商号
- 本店の所在場所
- 支店の所在場所
- 合同会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
- 資本金の額
- 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称
- 合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所
- 合同会社を代表する社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所
- 公告方法
なお、業務執行社員や代表社員につき「氏名」又は「名称」となっているのは、個人だけではなく法人も業務執行社員や代表社員になることができるためであり、職務を行うべき者(職務執行者)は個人しかなることができないため「氏名」となっています。
職務執行者とは
合同会社の社員は、個人だけではなく法人もなることができます。
合同会社の社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、合同会社の業務を執行し(会社法第590条)、法人が業務を執行する社員である場合には、当該法人はその業務執行に関して職務を行うべき者を選任しなければなりません(会社法第598条1項)。
業務執行社員が法人であるときのその職務を行うべき者のことを職務執行者といいます。
業務執行社員たる法人が職務執行者を選任したときは、職務執行者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければなりません(会社法第598条1項)。
代表社員ではない業務執行社員
合同会社では定款に別段の定めがない限り、社員=業務執行社員=代表社員となります。
定款に定めることにより、例えば社員ABCといたときに、次のようにすることもできます。
社員 | ABC |
業務執行社員 | AB |
代表社員 | A |
職務執行者と登記事項
冒頭に記載のとおり、次の事項は登記事項とされています。
- 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称
- 合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所
- 合同会社を代表する社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所
業務執行社員は必ずしも代表社員とは限りませんが、代表社員は必ず業務執行社員です(会社法第599条)。
そのため、合同会社の代表社員が法人であるときは、代表社員○○職務執行者●●のように、代表社員の欄に職務執行者の氏名及び住所が登記されることになります。
業務執行社員の職務執行者と登記
業務執行社員が法人であるときは、業務執行社員ののうち、代表社員である社員については職務執行者の登記が必要です。
それでは業務執行社員が法人である場合の、代表社員ではない業務執行社員の職務執行者の登記はどうなるでしょうか。
代表社員ではない業務執行社員の職務執行者は、登記事項とはされていませんので登記簿には記載されません。
なお当該職務執行者は登記簿には記載されませんが、会社法第598条1項により当該法人は職務執行者を選任して、社員全員の職務執行者の氏名及び住所を通知しなくてはなりません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。