商業登記関係 合同会社の社員のうち、登記簿に住所や氏名が記載される社員の範囲
合同会社の登記事項
合同会社の登記事項のうち、社員に関するものについては次の3つがあります。
登記事項とは、登記簿に記載される事項のことをいいます。
- 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称
- 合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所
- 合同会社を代表する社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の
氏名及び住所
合同会社の業務を執行する社員を「業務執行社員」といい、合同会社を代表する社員を「代表社員」といいます。
また、合同会社を代表する社員が法人であるときの当該社員の職務を行うべき者を「職務執行者」といいます。
株式会社に置き換えると、業務執行社員は株主である取締役、代表社員は株主である代表取締役のようなイメージです。
業務執行社員と代表社員
合同会社の特徴として、株式会社と同様に出資者である社員(株式会社では株主)は会社の債務について有限責任(出資した分を限度として責任を負う)であることと、株式会社と異なり所有と経営が分離されていないことが挙げられます。
所有と経営が分離されていないとは、原則として社員(出資者)全員が経営を行っていくことをいいます(出資者=経営者)。
社員は原則として(定款に別段の定めがある場合を除き)、持分会社の業務を執行し(会社法第590条)、業務を執行する社員は原則として持分会社を代表します(会社法第599条)。
(持分会社の代表)
会社法第599条1. 業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2. 前項本文の業務を執行する社員が二人以上ある場合には、業務を執行する社員は、各自、持分会社を代表する。
3. 持分会社は、定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定めることができる
(4項、5項省略)
合同会社の登記簿に記載される社員
合同会社の登記簿にその氏名や住所が記載させる社員は冒頭のとおりです。
裏を返せば、業務執行社員でなく、かつ、代表社員でもない社員は、登記簿にその氏名や住所を記載されることはありません。
なお、業務執行社員でない社員は代表社員となることはできませんので(会社法第599条1項、3項)、言い換えれば、業務執行社員でない社員は、登記簿にその氏名や住所を記載されることはありません。
社員が1名のとき
合同会社の社員(出資者)が1名のときは、当該社員が業務執行社員であり代表社員となります。
そして、社員以外の者を業務執行社員や代表社員として選ぶことはできません。
つまり、当該社員の氏名及び住所は業務執行社員、代表社員として当該合同会社の登記簿に記載されることになります。
社員が2名以上のとき
社員がABといたときに、定款に別段の定めがなく、また代表社員について何ら定めがないときは、社員ABともに業務執行社員となり、かつ代表社員となります。
- 社員 AB
- 業務執行社員 AB
- 代表社員 AB
つまり、社員ABの氏名及び住所は業務執行社員、代表社員として当該合同会社の登記簿に記載されることになります。
社員が2名以上いるときに、1名のみを業務執行社員とする
社員がCDと2名いたときに、定款に「業務執行社員はDとする」という定めがあったときは、当該合同会社の業務執行社員はDのみとなり、従って代表社員もDのみとなります。
- 社員 CD
- 業務執行社員 D
- 代表社員 D
業務執行社員は合同会社を代表することになるからです(会社法第599条1項)。
つまり、社員Dの氏名及び住所は業務執行社員、代表社員として当該合同会社の登記簿に記載されることになり、社員Cの氏名及び住所は登記簿に記載されません。
社員が2名以上いるときに、1名のみを代表社員とする
上記のように、社員Dのみを代表社員とすることもできますが、例えば社員EFといたときに、業務執行社員にはEFともになるけれども、Fのみを代表社員にするというケースもあります。
- 社員 EF
- 業務執行社員 EF
- 代表社員 F
このような場合、業務執行社員EFとして氏名が登記簿に記載され、代表社員Fとして氏名及び住所が登記簿に記載されることになります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。