商業登記関係 組織変更(株式会社⇆持分会社)の登記と同時に変更できる登記事項、できない登記事項
組織変更とその他の登記
組織変更とは、その組織を変更することにより株式会社が合名会社、合資会社又は合同会社となること、あるいは合名会社、合資会社又は合同会社が株式会社となることをいいます(会社法第2条)。
以下、合名会社、合資会社及び合同会社をまとめて「持分会社」といいます。
組織変更のうち持分会社が株式会社となる組織変更の登記は、次の2つの登記を同時に申請する方法によって行います。
- 株式会社の設立登記
- 持分会社の解散登記
組織変更の手続きには1.5ヶ月以上の期間を要します。
組織変更の手続きについては、次の記事をご参照ください。
≫組織変更の手続き(株式会社から合同会社へ)
≫組織変更の手続き(合同会社から株式会社へ)
≫組織変更の手続き(合資会社から株式会社へ)
≫組織変更の手続き(合名会社から株式会社へ)
組織変更と同時に役員を増やしたい
合同会社から株式会社へ変更するときに、それと同時に代表社員1名だった組織体制を取締役3名に変更したいというニーズがあったとします。
合同会社の資本金が2,000万円以下であるときは、組織変更の登録免許税は合計6万円(設立3万円、解散3万円)であり、これは新しい役員を就任させた形で設立登記をしても登録免許税は変わりません。
しかし、設立登記と役員変更登記を別の申請でした場合は、役員変更登記の登録免許税は別途かかってしまいます。
組織変更と同時に変更できる登記事項と変更できない登記事項
組織変更をするときは、特に持分会社から株式会社へ組織変更するときは、新しい事業展開をしたり、新しい組織体制にする等のきっかけがあったりします。
そのため、組織変更と同時に会社目的を追加する、本店を移転する等、登記事項の変更をともなうことも少なくありません。
組織変更の登記と一括して申請できる登記と申請できない登記があります。
商号の変更
合同会社から株式会社へ組織変更する場合、「合同会社汐留ABC」が組織変更後の商号は「株式会社汐留ABC」または「汐留ABC株式会社」とすることが多いでしょう。
しかし、「汐留ABC」という名称は必ず使用しなくてはならないわけではなく、組織変更後の商号を「株式会社新橋XYZ」とすることも可能です。
この場合、設立する株式会社の商号を「株式会社新橋XYZ」として、設立登記及び解散登記を申請することになります。
目的の変更
合同会社から株式会社へ組織変更する場合、合同会社の目的が
- 不動産の売買
- 飲食店の経営
であったとしても、設立する株式会社の目的を
- ソフトウェアの開発
- イベントの企画及び運営
等のように合同会社の目的から変更することも可能です。
この場合、変更後の目的を設立する株式会社の目的として設立登記を申請することになります。
本店の変更
組織変更と同時に本店を移転した場合、組織変更の登記と本店移転の登記は一括して申請することはできません。
一括して申請できないとは、組織変更の登記と同じ申請書で申請できないことを意味しますので、同じタイミングで別の申請書にて申請することはできます。
具体的には、管轄外本店移転の場合、「設立登記「解散登記」「本店移転登記(旧管轄)」「本店移転(新管轄)」を4連件で申請することになるでしょう。
資本金の額の変更
組織変更と同時に資本金の額を増やした場合、組織変更の登記と増資の登記は一括して申請することはできません。
一括して申請できないとは、組織変更の登記と同じ申請書で申請できないことを意味しますので、同じタイミングで別の申請書にて申請することはできます。
この場合、増資をしてから組織変更する、あるいは組織変更をしてから増資をすることになります(なお、必ずしも組織変更日と別日にする必要はありません)。
役員の変更
合同会社から株式会社へ組織変更するときに、役員を増やすことも少なくありません。
代表社員がAである合同会社が、取締役ABC(代表取締役C)とする株式会へ組織変更することも可能です。
この場合、設立する株式会社の取締役をABC(代表取締役C)として、設立登記を申請することになります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。