不動産登記関係 所有権移転登記と抵当権設定仮登記(1号仮登記)を連件で申請する
所有権移転登記と抵当権設定仮登記
金融機関の融資を受けて不動産を新しく購入した人がその登記をするときは、一般的には次のような登記を連件で申請します。
- 所有権移転登記
- (根)抵当権設定登記
買主の名義になった後に他の登記(他の抵当権設定の登記等)が入れられてしまうと上記金融機関が困ってしまうため、連件という形で登記申請をすることになります。
登記識別情報の提供の省略に関する規定
A不動産について所有権移転、(根)抵当権設定のように2つの登記が連件で申請がされた場合、(根)抵当権設定の登記の申請情報と併せて提供すべき登記識別情報は、(根)抵当権設定の登記の申請情報と併せて提供されたものとみなされます(不動産登記規則第67条)。
XがYから不動産を購入し、その資金をC銀行から調達したようなケースでは、(根)抵当権設定登記にはXの登記識別情報の提供が必要となりますが、この規定によってXの登記識別情報を提供するという作業をすることなく登記を完了させることができます。
これらが連件での登記申請でなければ、(根)抵当権設定登記の申請につき、Xの登記識別情報の提供が必要となってしまいます。
(根)抵当権設定仮登記と登記識別情報の提供
(根)抵当権の設定契約は済んでいて抵当権の効力は生じているけれども、所有権の登記識別情報を提供することができないときは(根)抵当権設定の仮登記を申請することができます(不動産登記法第105条1号)。
この(根)抵当権設定の仮登記は、いわゆる1号仮登記と呼ばれています。
上記のように所有権移転登記と抵当権設定登記を連件で申請するときに、抵当権設定登記を登記識別情報が提供できないことを理由として抵当権設定仮登記とすることができます。
登記原因証明情報としての抵当権設定契約書
1号仮登記は抵当権の効力が生じているけれども、登記識別情報(に限られませんが)を提供することができないため、仮登記で申請をするというものです。
そのため、抵当権設定契約書を登記原因証明情報として提出することができます。
登記申請書の登記の目的を「抵当権設定仮登記」としておかないと、添付書類の欄に登記識別情報の記載漏れとして、抵当権の本登記で登記されてしまうリスクがあると思います。
なお、オンライン申請では登記原因証明情報に大きな間違いがあると訂正できず、抵当権設定仮登記につき取下げとなってしまうためお気を付けください。
抵当権設定の登録免許税
抵当権設定の登録免許税は、債権額(根抵当権の場合は極度額)に1000分の4を乗じた額です。
住宅用家屋証明書を添付してする申請においては、債権額に1000分の1を乗じた額となっています。
抵当権設定仮登記の登録免許税は、不動産の個数×1000円ですので、債権額によっては金額に大きな差が生じます。
ただし、仮登記は本登記をしなければ実行することはできず、本登記をするには所有者の協力が原則として必要となります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。