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代表司法書士・相続診断士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株主を特定しないで自己株式を有償で取得する場合の手続き

自己株式を取得する

株主への利益還元や機動的な資本政策の遂行を可能とするため等を理由として、株式会社が株主から株式を取得するケースがあります。

株主は平等に取り扱うことが原則ですので、株式を会社が買い取りキャッシュ化できる機会というものも株主に平等に与える必要があります。

そのため、有償で株主から自己株式を取得するときの手続きについては会社法で定められています。

特定の株主と会社の「株式譲渡契約」+「譲渡承認機関による譲渡承認」では有償で自己株式を取得することはできません。

自己株式を取得と財源規制

有償で自己株式を取得するときは、財源規制に注意をする必要があります。

株主から有償で自己株式を取得するときは、株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額につき、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない(会社法第461条1項2号)、という規制です。

株主を特定しないで有償で自己株式を取得する

株主を特定しないで有償で自己株式を取得するには、株主全員に譲渡しの権利を与えるということが一つのポイントとなります。

この手続きは、次のような流れで進めていきます。

  1. 株主総会の決議
  2. 取締役会の決議
  3. 株主への通知
  4. 株主からの申込み

なおここでは普通株式しか発行していない、取締役会のある株式会社を前提としています。

株主総会の決議

株式会社が株主から株式を有償で取得するときは、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければなりません(会社法第156条1項)。

  • 取得する株式の数
  • 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及びその総額
  • 株式を取得することができる期間

この株主総会の決議要件は、普通決議とされています。

なお「株式を取得することができる期間」は1年を超えることはできません(会社法第156条1項ただし書き)。

取締役会の決議

上記株主総会の決議が承認された後、会社がその内容に従い株式を取得しようとするときは、取締役会の決議によって次に掲げる事項を定めなければなりません(会社法第157条1項)。

  • 取得する株式の数
  • 株式1株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
  • 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額
  • 株式の譲渡しの申込みの期日

株主から取得する株式が100株、1株1万円で総額100万円、平成30年12月28日を申込みの期日とするときは、次のとおりとなります。

  • 取得する株式の数:普通株式 100株
  • 株式1株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容:1株につき金1万円
  • 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額:金100万円
  • 株式の譲渡しの申込みの期日:平成30年12月28日
株主への通知

上記取締役会の決議が承認された後、株式会社は、株主に対して、次の事項を通知しなければなりません(会社法第158条1項)。

これらは上記取締役会の決議によって定められた事項と同じものです。

  • 取得する株式の数
  • 株式1株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
  • 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額
  • 株式の譲渡しの申込みの期日

公開会社はこの通知を公告をもってこれに代えることができます(会社法第158条2項)。

株主からの申込み

通知を受けた株主が期限までに株式の譲渡しの申込みするには、会社に対してその申込みに係る株式の数を明示する方法によって行います(会社法第159条1項)。

株主への通知書に、申込書が添付されていることが一般的ではないでしょうか。

譲渡しの申込みをした場合、会社は株主が申込みをした株式の譲受けを承諾したものとみなされることになっていますので(会社法第159条2項)、会社側が特定の株主からの申込みのみを拒否することはできません。

会社が定めた取得株式数を超える株式の譲渡しの申込みがあった場合は、その割合に応じて取得株式数の範囲内で取得します(会社法第159条2項ただし書き)。

取得株式数を100株として募集したところ、株主4名から100株ずつ譲渡しの申込みがあった場合は、当該各株主から25株ずつ取得することになります。

例外:株主総会の決議が不要となる場合

次の条件を満たしている株式会社は、株主総会の決議を経ることなく、株主を特定しないで自己株式を有償で取得することができます(会社法第459条1項1号、2項)。

なお、特定の株主から有償で自己株式を取得する場合は株主総会の決議を省略することはできません。

  1. 会計監査人設置会社
  2. 取締役の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日である
  3. 定款に会社法第156条第1項各号は取締役会が決定する旨の記載がある
  4. 最終事業年度に係る計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する

自己株式の取得と登記

自己株式を取得したときは、株式の保有者が変わっただけであり発行済みの株式数に変更は生じません。

そのため、自己株式を取得しただけでは登記事項に変更はなく、登記が問題になることはありません。

取得した自己株式を取締役会の決議(取締役会のない会社は取締役の過半数の決定)によって消却したときは、発行済株式数の変更の登記をすることになります。

≫自己株式の消却手続き


この記事の著者

司法書士/相続診断士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士・相続診断士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

汐留司法書士事務所では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
様々なサポートを行っております。


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