商業登記関係 自己株式を無償で取得する場合の手続き
自己株式を取得する
機動的な資本政策の遂行を可能とするため等を理由として、株式会社が株主から株式を無償で取得することができます(会社法第155条13号、会社法施行規則第27条1項)。
もちろん、株主には財産権がありますので、原則として株主の同意なく強制的に無償で株式を取得することはできません。
会社法第155条13号による自己株式の無償取得は株主の同意(株主との合意)があることが前提となっています。
対価を無償とする取得条項付株式は株主の同意なく株式を回収できますし、一定の条件を満たした全部取得条項付株式は特定の株主の同意なく株式を回収することができる場合があります。
自己株式を取得と財源規制
有償で自己株式を取得するときは、財源規制に注意をする必要があります。
しかし、無償で自己株式を取得するときは、取得の対価を支払うことはありませんので財源規制というものを考慮する必要はありません。
株主から無償で自己株式を取得する
株主から無償で自己株式を取得するには、取締役会の決議(取締役会非設置会社の場合は取締役の過半数の決定)によって行います。
株主から有償で自己株式を取得する場合とは異なり、株主総会の決議や他の株主への通知等の手続きは不要とされています。
会社が特定の株主から無償で株式を取得する行為は、他の株主が損となることがないためです。
自己株式の取得と登記
自己株式を取得したときは、株式の保有者が変わっただけであり発行済みの株式数に変更は生じません。
そのため、自己株式を取得しただけでは登記事項に変更はなく、登記が問題になることはありません。
取得した自己株式を取締役会の決議(取締役会のない会社は取締役の過半数の決定)によって消却したときは、発行済株式数の変更の登記をすることになります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。