商業登記関係 株式会社の代表取締役を解職する方法(取締役会設置会社)
代表取締役を解職する
代表取締役が代表として不適格であるときは、代表取締役を解職することが可能です。
代表取締役の地位を解職するには、取締役会設置会社の場合、取締役会の決議によって行うことができます(会社法第362条1項)。
取締役会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行います(会社法第369条1項)。
代表取締役の解職決議と特別の利害関係
取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(会社法第369条2項)。
代表取締役の解職に関する議案については、当該議案の対象となっている代表取締役は特別の利害を有する取締役に該当するとされています。
そのため、当該代表取締役は定足数に含めずに、残りの取締役の過半数が取締役会へ出席し、その過半数が解職に賛成をすれば代表取締役を解職することができます。
取締役会の議長
取締役会の議長が誰になるのかは会社法上は定められていませんが、多くの会社では代表取締役を議長とするという定款の定めを置いています。
また、各取締役会で議長を定めるとする場合でも代表取締役を議長とすることが多いでしょう。
しかし、特別の利害関係を有する取締役は議長となることができないとされていますので、解職の対象となっている取締役以外の取締役が議長を務めることになります。
取締役の地位は残る
代表取締役を取締役会の決議で解職したとしても、解職できるのは代表取締役の地位のみです。
代表取締役は当然に取締役であるわけですが、代表取締役を解職したとしても当該取締役の取締役としての地位は残ります。
取締役を解任するには、株主総会の決議が別途必要となります。
権利義務取締役と解任
取締役を解任するときは、解任の対象となる取締役が権利義務取締役であるときは解任をすることができません。
当該取締役が権利義務取締役であるときに、当該取締役が取締役としても退任してもらうのであれば、権利義務が生じないよう十分な人数の後任取締役を選任しなければなりません。
後任の代表取締役を選定する
代表取締役が1名の株式会社において代表取締役を解職したときは、代表取締役が誰もいなくなってしまいますので、後任の代表取締役を選定しておくことが望ましいです。
代表取締役の選定も取締役会の決議で行い、その決議要件は議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数の賛成が必要となります。
代表取締役の選定の決議においては、代表取締役の候補者は特別の利害関係を有する取締役に該当せず、決議に参加することができるとされています。
登記申請をする
代表取締役を解職したときは、その効力発生日から2週間以内にその旨の登記申請をします。
解職された代表取締役が登記簿にいつまでも代表として記載されているのは望ましくないため、なるべく早く登記申請をした方が良いことは間違いありません。
代表取締役1名の取締役会設置会社が、当該取締役を解職して新しく代表取締役を選定した場合の添付書類の一例は次のとおりです。
- 取締役会議事録
- 就任承諾書
- 印鑑証明書(新任代表取締役)
この他に、印鑑届書も登記申請書と一緒に提出することになります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。