商業登記関係 株主名簿管理人を設置するときの登記手続き
株主名簿管理人を設置する
株式会社は、株主の氏名や持株数等を記載した株主名簿を作成する義務があり(会社法第121条)、その作成した株主名簿を本店に備え置かなければなりません(会社法第125条1項)。
一方で、株式会社は株主名簿管理人(株主名簿の作成及び備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者)に、株主名簿に関する事務を委託することができます(会社法第123条)。
(株主名簿管理人)
会社法第123条株式会社は、株主名簿管理人(株式会社に代わって株主名簿の作成及び備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者をいう。以下同じ。)を置く旨を定款で定め、当該事務を行うことを委託することができる。
株主名簿管理人を設置する手続き
株主名簿管理人を設置するときは、一例として次のような流れで手続きを進めていきます。
- 株主総会を開催して定款に定める
- 取締役会を開催して株主名簿管理人を選任する
- 株主名簿管理人と契約を締結する
- 登記申請をする
定款で定める(株主総会の決議)
株主名簿管理人を置くときは、定款にその旨の記載が必要です。
新たに株主名簿管理人を置くようなケースでは、定款に株主名簿管理人を置く旨の記載がないことがほとんどだと思いますので、株主総会の特別決議で定款変更を決定することになるでしょう。
定款の記載は、日本公証人連合会のHPのサンプルでは次のとおりですが、こちらは公開会社に関するサンプルですので、2項の「公告」の部分はなくても良いかと思います。
(株主名簿管理人)
第17条 当会社は,株主名簿,実質株主名簿、株券喪失登録簿及び新株予約権原簿(以下「株主名簿等」という。)の作成及び備置きその他株主名簿等に関する事務を取り扱わせるため,株主名簿管理人を置き,当会社においてこれを取り扱わない。
2 株主名簿管理人及びその事務取扱場所は,取締役会の決議によって定め,これを公告する。
3 株主名簿等は,株主名簿管理人の営業所に備え置く。
株主名簿管理人を選任する
上記定款記載例では、株主名簿管理人及びその事務取扱場所を取締役会の決議によって定めることになりますので、それらを取締役会で決定します。
株主名簿管理人を置くケースでは、会社がIPOを目指している段階で、信託銀行を株主名簿管理人として置くことがほとんどではないでしょうか。
個人が株主名簿管理人になることも可能ですが、そのようなケースはあまりありません。
株主名簿管理人と契約を締結する
株主名簿管理人となる人(法人)と委託契約を締結します。
口頭でも契約は成立し得ますが、必ず契約書を作成して、お互いに記名押印(または署名)しておきましょう。
また、この契約書は、「株主名簿管理人の設置」の登記申請の添付書類となります。
登記申請をする
株主名簿管理人設置の効力発生日から2週間以内に管轄法務局へ、「株主名簿管理人の設置」の登記申請をします。
添付書類の一例は次のとおりです。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 取締役会議事録
- 株主名簿管理人との契約書
- 定款
登録免許税は3万円です。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。