商業登記関係 株主名簿の作成は義務?株主名簿の記載事項を確認しましょう
株主名簿とは
株主名簿とは、株式会社がその株主を把握するために、株式会社が作成して会社に備え置いておくべき帳簿のことをいいます。
株主名簿の作成は会社法で義務付けられており、またその記載内容も会社法に定められています(会社法第121条)。
会社側が株主が誰であるかを把握するためだけのものではなく、株主側からも自分が株主であることの証明となるため、株主名簿は出資者のためのものでもあります。
株主名簿記載事項の請求
株主名簿に記載された株主は、株式会社に対して、当該株主についての株主名簿に記載された株主名簿記載事項を記載した書面の交付を請求することができます(会社法第122条1項)。
また株主は、株式会社の営業時間内はいつでも、正当な理由があるときは、株主名簿の閲覧を請求することができます。次に掲げる請求をすることができる(会社法第125条1項)。
これら株主の請求に対して対応できるようにしておくためにも、株主名簿の作成しておいた方がいいでしょう。
株主への通知は株主名簿記載の住所へ
株式会社が株主に対してする通知または催告は、株主名簿に記載し、または記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知または催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所または連絡先)にあてて発すれば足ります(会社法第126条1項)。
株主総会の招集通知を発送するときに、株主と連絡が取れなくなってしまったような場合においても、株主名簿に記載されている当該株主への住所へ招集通知を発送すれば会社側の義務を果たしたことになるため、会社側のリスクヘッジにもなります。
株主名簿と対抗要件
株主名簿に記載されている株主は、当該株式会社に対して自分が株主であることを主張することができます。
逆に、株式を第三者から取得した人でも株主名簿の名義を書き換えるのをしていない人は、自分が新しい株主であることを会社に主張できません。
日本の多くの会社は非公開会社であり、非公開会社の株式を譲渡するには譲渡人・譲受人の合意だけでは足りず、一定の手続きが必要ですのでご注意ください。
特に、株券不発行会社においては株主名簿の名義書換えは会社のみならず、第三者への対抗要件にもなりますので非常に重要といえます(会社法第130条1項)。
株主リストと株主名簿
平成28年10月1日以降に申請する株式会社の登記につき、株主総会の決議または総株主の同意が必要となる登記申請には株主リストの添付が必要となりました。
株主リストは、当該株式会社が、誰が株主かを把握していないと作成することができません。株主リストの添付が要求されたことを機に、株主名簿の整備をしたという会社も少なくありません。
株主名簿を整備しましょう
株主名簿の作成は会社法第121条により義務付けられています。
また、今後の登記申請のほとんどのケースでは株主リストの添付が求められます。これを機に株主名簿の整備をしてみてはいかがでしょうか。
株主名簿記載事項
それでは株主名簿とは具体的にはどのようなものなのでしょうか。
株主名簿の記載事項は会社法で定められています(会社法第121条)。
- 株主の氏名又は名称及び住所
- 株主の有する株式の数
- 株式を取得した日
- 株券の番号(株券発行会社で、株券が発行されている場合
- 質権者の氏名又は名称及び住所(質権の設定がある場合)
- 質権の目的である株式の数(質権の設定がある場合)
株主名簿サンプル
株主名簿
サンプル汐留株式会社
(株 主)
住 所 東京都港区新橋1-7-10
氏 名 汐留太郎
所有株式数 100万株
平成28年7月1日 | 平成28年7月1日 | 設立時取得 | |||
平成28年8月1日 | 平成28年8月1日 | 募集株式発行 | |||
平成28年9月1日 | 平成28年9月1日 | 新橋太郎へ譲渡 |
※下線のあるものは抹消事項であることを示します。
株主が誰か分からない?
名義だけを貸していた株主がいる、株主が亡くなったけどその相続人が分からないからそのまま、株主が行方不明に・・・、など株主名簿の作成について迷われた方は、当事務所までご相談ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。