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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

子会社が存続会社となる、100%親子会社間の吸収合併の登記手続き(株式会社)

吸収合併とは

吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます(会社法第2条)。

合併により消滅する会社の権利義務の全部を承継し合併後に存続する会社を「存続会社」といい、合併により消滅する会社を「消滅会社」といいます。

存続会社は1社となりますが、消滅会社は2社以上でも問題ありません。

完全親子会社間において吸収合併をすることは少なくなく、消滅会社の株式を全て存続会社が保有していることから手続きをスムーズに行えることがあります。

100%親会社

100%親会社とは、ある株式会社の発行済株式の全て(100%)を保有している会社のことをいいます(間接保有については省略)。

100%親会社は「完全親会社」ともいい、完全親会社に株式を保有されている株式会社は「完全子会社」と呼ばれています。

このページでは、完全子会社である存続会社を単に「存続会社」、完全親会社である消滅会社を単に「消滅会社」といい、存続会社・消滅会社ともに株式会社であることを前提としています。

なお、事業規模の小さい会社が存続会社、事業規模の大きい会社が消滅会社となる吸収合併は、「逆さ合併」と呼ばれています。

吸収合併のスケジュール

完全親子間の吸収合併で、仮に両社に債権者がいない場合でも、吸収合併をするには最短で1.5ヶ月程度の期間、通常は2ヶ月程度の期間がかかります。

吸収合併をすると決めても、明日すぐに吸収合併ができるわけではありません。

これは、反対する株主がおらず、債権者が全くいない(借入が全くない)状況でも同様です。

仮に、4月1日を効力発生日とした場合のスケジュール例は次のとおりです。

日程
存続会社
消滅会社
1月中旬合併の準備
(合併契約内容、債権者の確認等)
合併の準備
(合併契約内容、債権者の確認等)
2月1日取締役会決議
(合併契約承認、株主総会の招集決定)

官報公告の申込み
取締役会決議
(合併契約承認、株主総会の招集決定)

官報公告の申込み
2月10日合併契約の締結合併契約の締結
2月25日官報に合併公告が掲載

債権者への個別催告

契約書等の事前備置
官報に合併公告が掲載

債権者への個別催告

契約書等の事前備置
3月1日株主総会招集通知

反対株主等への通知
株主総会招集通知

反対株主等への通知
3月25日株主総会決議(合併契約承認)

債権者異議申述期間満了
株主総会決議(合併契約承認)

債権者異議申述期間満了
4月1日合併の効力発生合併の効力発生
4月1日以降合併の登記申請(2週間以内)

合併に関する書類の事後備置
合併の登記申請(2週間以内)

吸収合併の一般的な手続き

吸収合併の一般的な手続きは次のとおりです。吸収合併を行う会社の事情等により、他の手続きが必要となるケースもあります。

  1. 吸収合併の内容の決定
  2. 取締役会の決議
  3. 吸収合併契約の締結
  4. 事前備置書類の備置
  5. 債権者保護手続き
  6. 吸収合併の効力発生
  7. 事後備置書類の備置
  8. 登記申請
吸収合併の内容の決定

吸収合併の内容の決定をします。

合併後の存続会社の目的や役員を増やすかどうか、消滅会社を支店として残すか、合併の手続きの確認や、消滅会社の従業員の合併後の配置等も含まれるでしょう。

100%親会社の株主がABCであるときに、100%親会社が100%子会社に承継されることになるため、存続会社の株式を対価とするときは、100%子会社の株式をABCに交付します。

このときに、親会社が保有していた子会社の株式を、存続会社である子会社が承継することになるため、当該承継した子会社の株式をABCに交付することが可能とされています。

このようにすることにより、存続会社における自己株式の保有+新株発行をすることを避けることができます。

 
吸収合併前
吸収合併後
存続会社(100%子会社)の株主
100%親会社
ABC
消滅会社(100%親会社)の株主
ABC
会社が消滅

取締役会の決議

取締役会の決議(取締役会非設置会社は、取締役の過半数の決定)によって、吸収合併をすることを承認します。

存続会社の取締役が消滅会社の代表取締役となっていること等もあり、特別利害関係人が決議に参加しないよう注意をします。

吸収合併契約の締結

吸収合併をする会社は、合併契約書の締結が必須です。合併契約書には最低限、次の事項を定める必要があります(会社法第749条1項)。

100%子会社においては、新株予約権や種類株式を発行していることは非常に少ないため、それらに関する記載はここでは省略しています。

  • 存続会社・消滅会社の商号・住所
  • 合併の対価と割当てに関する事項
  • 効力発生日
事前備置書面の備置

存続会社・消滅会社は債権者保護手続き等の合併手続きを行う日から、一定の事項を記載した書面等を本店に備え置かなければなりません。

消滅会社では効力発生日まで、存続会社では効力発生日から6ヶ月を経過するまで備え置きます。

以下は一定の事項の一例です。

<存続会社>

  • 合併契約の内容
  • 合併対価の相当性に関する事項
  • 計算書類等に関する事項
  • 効力発生日以降に存続会社の債務の履行の見込みに関する事項

<消滅会社>

  • 合併契約の内容
  • 合併対価の相当性に関する事項
  • 合併対価について参考となるべき事項
  • 計算書類等に関する事項
  • 効力発生日以降に存続会社の債務の履行の見込みに関する事項
債権者保護手続き

存続会社・消滅会社はその債権者の保護のために、官報公告によって次の事項を掲載します(会社法第789条第2項、799条2項)。

  1. 合併をすること
  2. 合併をする相手の商号・住所
  3. 貸借対照表の要旨(大会社以外の場合)
  4. 債権者が一定期間異議を述べることができる旨

これは会社の公告方法として日刊新聞紙や電子公告を定めている場合も同様です。

合併公告と一緒に貸借対照表の要旨も掲載する場合は、官報申込みから10~11営業日程度、貸借対照表の要旨を掲載しない場合は5~6営業日程度、申込みから掲載まで要します。

合併公告の記載例
合併公告
 左記会社は合併して甲は乙の権利義務全部を承継して存続し乙は解散することにいたしました。
 この合併に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
 なお、最終貸借対照表の要旨は次のとおりです。
 令和1年9月24日
  東京都中央区銀座●丁目●番●号
(甲)存続会社名 
代表取締役 ●●●● 
  東京都中央区銀座●丁目●番●号
(乙)消滅会社名 
代表取締役 ●●●●
(貸借対照表の要旨の掲載)
債権者への個別催告

官報公告と併せて、知れたる債権者へ個別の催告もしなければなりません(会社法第789条第2項、799条2項)。

この知れたる債権者への催告は、定款で公告方法を日刊新聞紙や電子公告と定めているときは、官報公告に加えて定款の公告方法による公告を行うことにより省略することができます(会社法第789条第3項、799条3項)。

公告方法が官報である会社は、知れたる各債権者への催告を省略をすることはできません。

この債権者への個別催告を省略するために、債権者保護手続き前に、公告方法を官報から日刊工業新聞や電子公告へと変更することもあります。

≫いわゆるダブル(二重)公告

消滅会社の株券等提出公告

消滅会社が株券等を発行をしている株式会社である場合は、効力発生日の1ヶ月以上前の日までに、株券等の提出公告及び各株主等への通知が必要とされています。

株券発行会社においても、実際に株券を発行していない会社はこの手続きは不要です。

消滅会社が株券発行会社であっても、株券不所持の申出をすることにより、上記公告及び通知をしなくて済ませることができます。

株主総会招集通知と反対株主等への通知

株主総会を開催するときは、原則として総会日の1週間前、公開会社においては2週間前までに招集通知を発送しなければなりません。

≫株主総会の招集通知はいつまでに発送しなければならないか

存続会社・消滅会社ともに、その株主等に対して、効力発生日の20日前までに吸収合併をする旨等を通知または公告をする必要がありますが(会社法第785条3項、第797条3項)、これは必ずしも単独でする必要はなく、株主総会の招集通知と併せて通知をしたり、合併公告と併せて公告をしたりすることもできます。

株主総会の決議

吸収合併をするときは、原則として吸収合併の効力発生日の前日までに株主総会の特別決議による承認が必要です(会社法第783条1項、第795条1項)。

簡易合併や略式合併の場合は、合併差損が生じる場合等を除き株主総会の決議は不要となります。

100%親子会社間の場合は、子会社(存続会社)においては略式合併の要件に該当するため、株主総会の決議を省略することが可能です(会社法第796条1項)。

吸収合併の効力発生

吸収合併においては、登記が効力発生要件ではないため、吸収合併契約書において効力発生日と定めた日に吸収合併の効力が発生します。

そのため、効力発生日として法務局が開いていない土日祝日を定めることも可能です。

吸収合併の登記申請

吸収合併の登記は、効力発生日から2週間以内に、吸収合併存続会社の変更登記と吸収合併消滅会社の解散登記を同時にしなければなりません。

<存続会社にかかる登記申請添付書類(一例)>

  • 吸収合併契約書
  • 合併契約を承認した株主総会議事録(存続会社・消滅会社)
  • 債権者保護手続き関係書面
  • 株券提供公告をしたことを証する書面
  • 消滅会社の登記事項証明書(存続会社と管轄法務局が異なる場合、会社法人等番号で代替可)
  • 株主リスト(存続会社、消滅会社)
    ≫組織再編、組織変更時の株主リストの作成者

<消滅会社にかかる登記申請添付書類>
不要

事後備置書面の備置

存続会社が株式会社であるときは、吸収合併の効力発生日以後遅滞なく、法務省令で定められている事項につき記載した書面または電磁的記録を作成し、効力発生日から6ヶ月間会社の本店に備え置きます(会社法第801条)

法務省令で定められている事項とは、吸収合併の効力が発生した日、当該合併により承継した重要な権利義務等です。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

汐留司法書士事務所では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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