商業登記関係 組織再編時の事前備置書面等は、いつからいつまで本店に備え置くか
組織再編と書類の事前備置
吸収合併等の組織再編の手続きにおいては、効力発生日より前の日で、会社法で定められた日から一定期間、吸収合併契約等の内容その他一定の事項を記載した書類又は電磁的記録を本店に備え置かなければなりません(会社法第782条、第794条)。
この吸収合併契約等の内容その他一定の事項を記載した書類は、「事前備置書面」「事前備置書類」等と呼ばれています。
吸収合併等の手続きについては、これらの記事をご覧ください。
≫吸収合併の手続き
≫新設合併の手続き
≫吸収分割の手続き
≫新設分割の手続き
≫株式交換の手続き
事前備置書面の備置開始日
吸収合併の手続きの一例は次のとおりです。
これらの手続きのうち、いつから事前備置書面を本店に備え置けばいいのでしょうか。
1月中旬 | 合併の準備 (合併契約内容、債権者の確認等) | 合併の準備 (合併契約内容、債権者の確認等) |
2月1日 | 取締役会決議 (合併契約承認、株主総会の招集決定) 官報公告の申込み | 取締役会決議 (合併契約承認、株主総会の招集決定) 官報公告の申込み |
2月10日 | 合併契約の締結 | 合併契約の締結 |
2月25日 | 官報に合併公告が掲載 債権者への個別催告 契約書等の事前備置 | 官報に合併公告が掲載 債権者への個別催告 契約書等の事前備置 |
3月1日 | 株主総会招集通知 反対株主等への通知 | 株主総会招集通知 反対株主等への通知 |
3月25日 | 株主総会決議(合併契約承認) 債権者異議申述期間満了 | 株主総会決議(合併契約承認) 債権者異議申述期間満了 |
4月1日 | 合併の効力発生 | 合併の効力発生 |
4月1日以降 | 合併の登記申請(2週間以内) 合併に関する書類の事後備置 | 合併の登記申請(2週間以内) |
事前備置書面はいつから備え置くか
事前備置書面は、次の事項のうちいずれか早い日から備え置きます。
- 株主総会で吸収合併等の承認が必要な場合は、当該株主総会の決議日の2週間前の日
- 上記1.をみなし決議(会社法第319条1項)で行う場合は、株主への提案日
- 株主に対する相手会社の商号及び住所の通知日又は公告日のいずれか早い日
- 新株予約権者に対する相手会社の商号及び住所の通知日又は公告日のいずれか早い日
- 債権者保護手続きにおける公告日又は催告日のいずれか早い日
- 上記以外の場合には、吸収分割契約又は株式交換契約の締結の日から2週間を経過した日
債権者保護手続きの開始と同時に備え置く
組織再編を行うときは、株主総会での承認が得られることを前提に手続きを進めることが少なくありません。
株主総会で承認を得てから債権者保護手続きをスタートする、というケースでない限り、その多くは債権者保護手続きの開始と同時に事前備置書面の備え置きを開始します。
つまり、債権者保護手続きに関する官報公告の掲載日(又は債権者への催告日のいずれか早い日)から事前備置書面を備え置くことが多いと言えます。
組織再編時に債権者保護手続きが不要のケースにおいてはどうでしょうか。
「株主に対する相手会社の商号及び住所の通知」と「株主総会の招集通知」を同時に(同じ書面で)行うことが少なくなく、そうであれば「株主に対する相手会社の商号及び住所の通知日」から事前備置書面を備え置くことが多い、ということになります。
事前備置書面はいつまで備え置くか
事前備置書面は、その効力発生日から6ヶ月を経過する日まで備え置かなければなりません。
吸収合併の消滅会社においては、会社そのものが消滅してしまうため、吸収合併の効力発生日まで備え置いておくことになります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。