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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株式会社における発行可能株式総数のいろいろ

発行可能株式総数とは

発行可能株式総数とは、株式会社または有限会社会社(以下、併せて単に「会社」といいます)が発行することができる株式の総数をいいます。「授権枠」と言われたりもします。

会社は発行可能株式総数を定款に記載することが一般的で、登記簿には必ず記載されています。

例えば、発行可能株式総数が100株のX株式会社が既に80株の株式を発行している場合は、あと20株発行することができます。

発行可能株式総数は変更できる

もちろん会社の存続中ずっと、あと20株しか株式を発行できないのだとすれば、新しく資金調達等をするときに困ってしまいます。

発行可能株式総数は定款に定められていることが一般的ですので、株主総会の特別決議によって発行可能株式総数の定款規定を変更することができます。

上記のX株式会社が株式を新しく120株発行しようとするときは、新しく株式を発行した後の発行済株式総数(200株)が現在の発行可能株式総数(100株)を超えてしまうため、そのままでは120株を新しく発行することができません。

この場合、株主総会で募集株式の発行(120株)にかかる決議と併せて、発行可能株式総数の定款規定を変更(200株以上)する決議もすることになります。

発行可能株式総数の意義

発行できる株式の数に上限を設けなければならない理由は、取締役会の権限乱用を防ぎ、株主の権利を保護するためだと言われています。

公開会社や一定の条件を満たした非公開会社は、取締役会決議により新しく株式を発行して資金調達をすることが可能です。取締役会決議だけで株式を発行することができることそれ自体は、会社の運営をスムーズに行うために必要なことです。

しかし、取締役会の決議によって何株でも自由に株式を新しく発行することができてしまうと、既存株主は自身が持つ議決権の割合が低下する、配当金額が下がる(資金調達による結果として、利益が増え、配当金額が上がる可能性もあります)など、自分が出資をする際には想定をしていなかった不利益を被るおそれがあるといえます。

このような不利益から既存株主を守るために発行可能株式総数というものがあるとされています。

公開会社と発行可能株式総数

公開会社の場合は、定款を変更して発行可能株式総数を増加するときは、定款の変更後の発行可能株式総数を、定款変更の効力が生じた時における発行済株式総数の4倍を超えることができません(会社法第113条3項)。

つまり、発行可能株式総数100株、発行済株式総数80株の会社は、発行可能株式総数を320株まで拡大することができます。

また、発行可能株式総数100株、発行済株式総数80株の会社で、新規に株式を120株発行する際に、当該新規株式発行を条件に発行可能株式総数を800株にすることは可能です(200×4=800)。

なお、非公開会社においてはそのような制限がありませんので、発行可能株式総数は発行済株式総数の何倍でもOKです。

改正会社法と発行可能株式総数

平成27年5月1日に施行された改正会社法で、発行可能株式総数に係る規定である会社法第113条の一部が変更されました。

しかし、同条第3項はあくまで公開会社を対象としていますので、非公開会社には特に影響はありません。

(発行可能株式総数)
会社法第113条第3項

定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合には、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の4倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

発行可能種類株式総数と発行可能株式総数

各発行可能種類株式総数の合計が、発行可能株式総数より多いということも可能です。

なかなかイメージがしづらいと思いますが、例えば次のようなケースです。

「発行可能株式総数」 200株
「発行可能種類株式総数」
普通株式 150株
A種株式 150株

このような会社では発行されている各種類株式(普通株式を含む)の合計数が200株まで、そして各種類株式を150株までは新しく各種類株式を発行することが可能です。

例えば、発行可能株式総数ぎりぎりまで発行する場合は次のようになります。

例)発行済みの普通株式総数150株、発行済みのA種株式50株
例)発行済みの普通株式総数100株、発行済みのA種株式100株

なお、発行ずみの各種類株式数が、発行可能種類株式総数(150株)の上限に達していなくても、全体の発行済株式総数が、発行可能株式総数(200株)に達している場合は、発行可能株式総数の定款規定を変更(増枠)しない限り、新しく株式を発行することはできません。

次のように株式を発行することはできないということです。

発行済みの普通株式150株、発行済みのA種株式150株

株式併合と発行可能株式総数

公開会社においては、株式併合後の発行可能株式総数が、株式併合後の発行済株式総数の4倍を超えることはできません(会社法第113条第180条)。

また、株式併合をするときの株主総会の決議事項に株式併合後の発行可能株式総数が、改正会社法で加えられました(会社法第180条2項4号)。

(株式の併合)
会社法第180条2項
株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
1 併合の割合
2 株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)
3 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
4 効力発生日における発行可能株式総数

新株予約権と発行可能株式総数

行使期間の到来している新株予約権があるときは、当該新株予約権の目的となる株式は、いつ新株予約権を行使されても発行できるようにしておかなければなりません(会社法第113条4項)。例えば次のような場合です。

「発行可能株式総数」200株
「発行済株式総数」150株
「行使期間の到来している新株予約権」1個(対象となる株式 普通株式100株)

行使期間が到来していない新株予約権や、行使期間が到来した場合でも新株予約権の目的となる株式につき自己株式として保有しているときは、当該規定の対象外となります。

(発行可能株式総数)
会社法第113条第4項

新株予約権(第236条第1項第4号の期間の初日が到来していないものを除く。)の新株予約権者が第282条第1項の規定により取得することとなる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式を除く。)の総数を控除して得た数を超えてはならない。

発行可能株式総数の変更手続き

  1. 株主総会において、発行可能株式総数の変更に係る定款変更の決議をします。
  2. ※この決議は特別決議の要件を満たす必要があります。

  3. 発行可能株式総数変更の登記申請を、効力発生日から2週間以内に法務局へ登記申請します。
  4. ※登録免許税は3万円です。

登記申請添付書類
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 登記委任状

この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

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