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RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2026年6月号

RSM汐留パートナーズ・ニュースレター 2026年6月号

ニュースレター
2026年6月1日

今月のニュースレターは以下の通りです。

  • 税理士法人:ミニマムタックス強化と実務上の留意点
  • 社会保険労務士法人:労働基準法の改正論点②
  • 司法書士法人:退職者とストックオプション
  • 今月のサービスPickup

税理士法人では、2027年以降に強化が予定されるミニマムタックスについて、制度の概要と、M&Aや事業承継、自社株式の譲渡を検討する際の実務上の留意点をお伝えします。 

社会保険労務士法人では、労働基準法の見直しに向けた議論のうち、労働時間通算ルールの見直し、法定労働時間の特例措置の廃止など、今後求められる対応の方向性と社内ルール・管理体制整備のポイントを取り上げます。

司法書士法人では、スタートアップ企業が役職員に対して新株予約権(ストックオプション)を付与した後に、当該役職員が退職したときの会社法上の処理方法について確認します。

今月のニュースレターも、日々の実務にぜひお役立てください。


 

はじめに

近年、個人所得課税において、いわゆる「ミニマムタックス(超富裕層課税)」への関心が高まっています。正式には「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」といい、2025年分の所得税から適用が開始されています。更に、令和8年度税制改正大綱では、2027年分以後の所得税から同制度を強化する内容が示されています。これにより、M&A、事業承継、自社株式や不動産の譲渡等を検討する個人にとって、実務上の影響がより大きくなることが見込まれます。

ミニマムタックスの制度概要

ミニマムタックスは、いわゆる「1億円の壁」を是正する目的で導入された制度です。給与所得や事業所得は総合課税の対象となり、所得が増えるほど高い税率が適用される一方、株式譲渡所得や上場株式等に係る一定の配当所得、不動産の譲渡所得などは、申告分離課税により比較的低い税率で課税される場合があります。そのため、高額所得者ほど所得全体に占める分離課税所得の割合が高くなり、結果として実質的な税負担率が低下することが指摘されていました。

現行制度では、その年分の基準所得金額が3.3億円を超える場合に、通常の所得税額と次の金額を比較します。

(基準所得金額-3.3億円)×22.5%

この計算額が通常の所得税額を上回る場合には、その差額を追加で申告納税することになります。

2027年分以後は、控除額を3.3億円から1.65億円へ引き下げ、税率を22.5%から30%へ引き上げる方向で見直しが予定されています。改正後は、次の金額と通常の所得税額を比較することになります。

(基準所得金額-1.65億円)×30%

この見直しにより、これまで対象とならなかった所得水準の方であっても、追加納税が生じる可能性があります。

今後の留意点

今後、特に影響が想定されるのは、M&Aや事業承継に伴い創業者やオーナー経営者が自社株式を譲渡するケース、不動産・有価証券を売却するケースです。

現行制度では、所得が株式譲渡所得のみである場合、対象となるのは概ね10億円超と考えられていましたが、2027年以降は約3.3億円超で追加課税が生じる可能性があります。

また、判定は「株式譲渡所得だけ」でなく、役員報酬、不動産所得、退職所得、配当所得など他の所得も含めて行うため、同じ譲渡金額でも他の所得の有無や発生時期により税負担額が変わる可能性があります。M&Aや事業承継を予定している場合には、事前に税負担を試算しておくことが重要です。

おわりに

ミニマムタックスは、一般的な高所得者すべてに広く課税される制度ではありませんが、M&A、自社株式の売却、不動産の譲渡などにより一時的に多額の所得が発生する場合には、実務上無視できない制度です。事業承継、資産整理、株式譲渡等を検討される場合には、早い段階で所得全体を把握し、適用可能性を確認しておくことが重要です。ご不明点等ございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせ下さい。
 

はじめに

労働基準法の見直しに向けた議論のうち、企業実務に影響し得る論点を整理し、今後求められる対応の方向性と社内ルール・管理体制整備のポイントを確認します。

1987年改正以降、労働基準法(以下「労基法」といいます。)の本格的な見直しが検討されています。2026年通常国会への労基法改正案の提出は見送られましたが、改正に向けた議論は継続しているため、現時点で報告書等に示されている主な論点を説明します。

「つながらない権利」ガイドラインの策定

デジタル技術の発達や新型コロナウイルス感染症の影響を契機として、テレワークを導入する企業が増えました。一方で、休日や勤務時間外であってもメールやチャットによる業務連絡が届く状況が生じています。フランスでは2017年に「つながらない権利」に関する制度が導入され、勤務時間外の業務連絡に応答しないことを理由とする不利益取扱いを防ぐ仕組みが設けられています。日本でも、勤務時間外の連絡への対応ルールや、労働者の休息時間を確保するためのガイドライン策定が検討されています。

副業・兼業者の労働時間通算ルールの見直し

現行の取扱いでは、労働者が複数の事業場で働く場合、労働時間を通算したうえで時間外労働の割増賃金を計算する必要があります。しかし、通算管理は企業にとって実務負担が大きく、労働者が副業・兼業を申告しないケースもあるため、副業・兼業を認める際の課題となっています。報告書では、健康確保のための労働時間通算管理は維持しつつ、割増賃金の算定については通算を不要とする制度改正が提案されています。これにより、副業・兼業制度を導入する際のハードルが下がることが期待されます。

法定労働時間の特例措置の廃止

現行法では、常時10人未満の労働者を使用する一定の事業場について、週44時間までの労働を認める特例措置が設けられています。しかし、同じ業種であっても労働者数によって法定労働時間が異なることへの公平性の問題や、実際には週40時間で運用している事業場も多いことから、特例措置の必要性は低下していると指摘されています。そのため、この特例措置を廃止する方向で検討が進められています。

おわりに

今回の改正論点は、長時間労働の抑制と、多様な働き方に対応した労働時間管理の見直しを目的とするものと考えられます。副業・兼業を選択しやすくする一方で、健康確保措置や勤務時間外の連絡ルールなど、企業側の管理体制の整備も重要になります。制度を形骸化させないためには、就業規則や社内ルールの整備に加え、従業員、とりわけ管理職への周知・教育が不可欠です。社内ルールの策定や教育体制の整備についても、お気軽にご相談ください。
 

はじめに

スタートアップ企業(ここでは公開会社以外の株式会社を前提とします。)が役職員に対するインセンティブとして新株予約権(ストックオプション)を発行することがあり、行使条件としてIPOすることが定められているのであれば、IPOした後に新株予約権を行使することで行使価格と株式の売却時の株価の差額を利益として享受することができます。ストックオプションの目的の多くは、役職員に対する報酬やモラル向上であることから、退職した者が(一部の例外を定めた場合を除き)新株予約権を行使することができないように設計されることが少なくありません。

役職員の退職

役職員が退職したときに、退職者が退職後も新株予約権を保有し続けるのか、発行会社が取得するのか、それとも放棄してもらうのか等、発行会社は新株予約権を管理することが通常求められます。

新株予約権の消滅

新株予約権者がその有する新株予約権を行使することができなくなったときは、当該新株予約権は消滅します。行使条件として新株予約権の行使時に役職員であることを要する旨が定められている場合、新株予約権を有する役職員が退職したとしても、復職したときは当該行使条件を(再び)クリアすることができると考えると、当該行使条件だけでは退職をもって新株予約権が消滅したと解されない余地があります。

新株予約権の放棄

新株予約権者がその有する新株予約権を放棄すると、当該新株予約権は消滅します。退職者に退職日をもって新株予約権を放棄してもらうことで、当該新株予約権が消滅したことが明確となります。ただし、自己新株予約権の取得及び消却に比べて、放棄の場合、その消滅の都度登記申請をしなければならなくなる点に注意が必要です。

取得条項に基づく自己新株予約権の取得

新株予約権の内容として、発行会社が一定の事由が生じたことを条件として新株予約権を取得することができる旨を定めることができます。新株予約権者の退職を取得条項の内容として定めている場合は、新株予約権者が退職するときに、退職者の有する新株予約権を発行会社が取得するのであれば、対象となる新株予約権者へ取得日を定めて一定の事項を通知する等の会社法の手続きを踏むことで自己新株予約権を取得します。

自己新株予約権の消却

会社法上、自己新株予約権を消却する義務はありませんが、一定の期間(3ヶ月~1年程度)ごとに自己新株予約権を消却することも少なくありません。自己新株予約権の消却は取締役会の決議(取締役会非設置会社においては取締役の決定)によって行います。

新株予約権の個数の変更と登記

新株予約権が行使不能又は放棄により消滅したとき、自己新株予約権を消却したときは、発行済みの新株予約権の個数に変更が生じますので、その変更が生じた時から2週間以内に管轄法務局へ登記申請を行います。行使不能又は放棄により消滅する度に変更登記を行うよりも、自己新株予約権としておき、一定期間ごとに消却する方が登記手続きにおけるコスト面で優位性があります。めまぐるしい改正についていくのはとても大変です。しかしながら、「知らなかった」では済まされないのが法律の世界です。もし情報整理が必要な場合や企業の対策を考えたいときは是非ご相談いただければ幸いです。
 

【今月のサービスPickup】

防犯・安全セキュリティ支援

拠点や店舗、従業員の安全対策は、単なる「対策」ではなく経営リスク管理の重要なテーマです。現場の実態に即したリスク評価から体制設計、規程整備、教育、改善計画の実行・定着化まで、組織の安心を一貫してサポートします。

ESG・サステナビリティサービス

ESG・サステナビリティへの対応は、情報開示にとどまらず、企業価値や信頼性にも直結する経営課題です。現状整理から方針策定、目標設定、施策の実行、開示準備まで、各企業の状況に合わせて継続的にサポートします。

M&Aコンサルティングサービス

後継者問題や成長戦略、経営資源の選択と集中など、M&Aはさまざまな経営課題の解決手段となります。会計・税務・法務の専門家が一体となったワンストップ体制で、経営者の想いと企業価値を次世代へつなぐお手伝いをします。