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インドネシア進出を成功させる日本企業のための実務ガイド―プラボウォ政権・新首都・税制の最新動向、RSMのプロフェッショナルが解説

インドネシア進出を成功させる日本企業のための実務ガイド―プラボウォ政権・新首都・税制の最新動向、RSMのプロフェッショナルが解説

海外進出
2026年6月19日

インドネシアは人口約2億8,000万人(ASEAN最大)、名目GDP世界16位(2024年)、そして2,100社超の日系企業拠点を擁する、日本にとって戦略的に重要な進出先です。2024年の政権交代を経てプラボウォ政権が発足し、新首都ヌサンタラ(IKN)の開発が本格化するなかで、製造業・インフラ・再生可能エネルギー・デジタルサービスを中心に、中長期の事業機会はむしろ拡大しています。

一方で、税制・外資規制・労務規制の変化が続いており、特に2025年のVAT引き上げ(12%)、2025〜2026年にかけてのグローバルミニマム課税(第2の柱)の国内適用開始、デジタル税務管理システム(Coretax)の導入など、制度面の対応コストも増している点は見逃せません。本稿では、RSM Indonesiaの専門家チームの知見をもとに、「2026年6月現在」の最新情報をもとに、インドネシアへの新規進出・既存拠点の運営強化を検討する日本企業に向けて、実務上押さえるべき重要ポイントを整理します。

政権交代の意味と政策の継続性

2024年の大統領選挙を経て発足したプラボウォ・スビアント政権は、インドネシアの民主主義の定着と政治的安定を改めて示すものです。前ジョコウィ政権が推進してきたインフラ整備・産業高度化・投資誘致の基本路線は維持されており、外資系企業にとって急激な環境変化リスクは限定的とみられます。

ただし、プラボウォ政権が優先する政策領域は「食料安全保障」「国内産業保護」「税収強化」に重点が移りつつあります。特に税収強化の観点から、外資系企業に対する移転価格調査の強化、PE(恒久的施設)認定の厳格化、デジタル取引への課税拡大が続いています。進出判断にあたっては、政権交代そのものをリスクとみるのではなく、自社の事業内容と政策優先順位の整合性を確認することが重要です。

長期プロジェクトとして捉える視点

東カリマンタン州の新首都ヌサンタラ(Ibu Kota Negara Nusantara:IKN)は、ジャカルタの交通渋滞・人口過密・環境負荷への対処と、2045年を見据えた国土均衡発展を目的とする国家プロジェクトです。建設・インフラ・エネルギー・IT・スマートシティ・環境関連分野では、民間投資の機会が広がっています。

一方で、計画の変更・予算配分の不透明性・民間投資の進捗遅れ・土地利用・許認可手続きの煩雑さなど、不確実性も残ります。IKN関連投資を検討する際は、優遇措置の有無だけでなく、事業開始までの時間軸・契約相手・土地権利関係・税務上の取扱い・撤退時リスクまで事前に精査することが不可欠です。

ヌサンタラ開発の8原則と日本企業の機会領域

IKNの都市開発は「グリーン・スマート・インクルーシブ・レジリエント・サステナブル」というキーワードで整理できる8つの原則に基づいています。以下の表に、各原則と日本企業にとっての機会領域を整理します。

原則日本企業にとっての主な機会領域
① 自然との共生環境配慮型建築・省エネ設備・グリーンインフラ
② 多様性の共存宗教・文化・所得層の多様性を前提とした設計
③ 交通アクセス公共交通・MaaS・スマートモビリティ
④ ゼロ・エミッション再生可能エネルギー・蓄電池・スマートグリッド
⑤ 循環・レジリエント廃棄物処理・水処理・防災・都市農業
⑥ 包括的住宅供給不動産開発・建材・スマートホーム
⑦ スマートシティ技術ITインフラ・クラウド・IoT・電子政府
⑧ 経済機会の創出教育・医療・金融・物流・デジタルサービス

これら8原則のどの領域に自社の技術・サービスが合致するかを確認することが、IKN参入可能性を検討する最初のステップとなります。なお、環境性能基準・現地調達要件・政府調達ルールへの対応が参入条件となるケースが多く、早期の情報収集が重要です。

インドネシアの税制は近年、VAT引き上げ、グローバルミニマム課税の国内実装、デジタル税務管理システム(Coretax)の導入など、大きな変化が続いています。以下の表に主要税目をまとめます。

税目税率実務上のポイント
法人所得税(CIT)22%(標準税率)売上高・規模に応じて軽減あり
ファイナルタックス売上高の0.5%新設法人等、最長3課税年度
VAT(付加価値税)12%(2025年1月〜)実質11%の特例措置あり
源泉税(非居住者)原則20%日尼租税条約で配当・利子・ロイヤリティ各10%に軽減可
個人所得税(駐在員)最高35%(累進)給与設計・申告義務の事前確認が必要
グローバルミニマム税(第2の柱)実効税率15%以上2026年からUTPR適用開始、大規模MNE対象

論点① 法人所得税22%と軽減税率

法人所得税(CIT)の標準税率は課税所得の22%です。年間売上高500億ルピア以下の法人については、売上高48億ルピア相当部分に対応する課税所得に11%の軽減税率が適用される場合があります。進出初期の事業計画では、売上規模・適用可能な軽減措置を踏まえて実効税負担を試算することが重要です。

論点② 新設法人のファイナルタックス(売上高0.5%)

一定の新設法人については、通常の利益課税に代えて売上高の0.5%がファイナルタックスとして課される場合があります。適用期間は最長3課税年度(翌課税年度に利益ベース課税への切替申請が可能)で、赤字でも売上が発生すれば納税義務が生じる点に注意が必要です。なお、中小企業向け0.5%税率(UMKM税制)については、納税者ごとに最大7年の適用期間が設定されており、個人事業主は2026年1月以降、適用期間が終了するケースが生じています。

論点③ VAT12%と実務上の価格設定への影響

VATは2025年1月1日より12%に引き上げられました。ただし、多くの課税品・サービスについて課税基礎額の計算に特例が設けられており、実質的な負担は11%相当となるケースが多いとされています(ジェトロ等の情報を要確認)。日本本社からのサービス提供・現地法人からの顧客向けサービスいずれについても、VATの課税対象となるか、税額を契約金額に含めるか別途請求するかを契約書で明確にしておくことが重要です。

論点④ 非居住者への支払いには原則20%の源泉税(租税条約で軽減可)

現地法人から日本本社・海外関連会社などへ配当・利子・ロイヤリティ・サービスフィー等を支払う場合、原則として20%の源泉徴収税が課されます。ただし日尼租税条約(1982年署名、2021年適用開始)が適用できる場合、配当・利子・ロイヤリティはそれぞれ10%に軽減されます。適用を受けるには、日本の税務署による居住者証明書(DGTフォーム)の取得が必要です。契約締結前に受益者要件・PE認定リスク・源泉税の負担者を確認しておくことが重要です。

論点⑤ 個人所得税と駐在員管理

居住者個人の所得税は累進税率で、年間所得5億ルピア超〜50億ルピアまでは30%、50億ルピア超は35%が適用されます。日本人駐在員については、給与負担者(本社か現地法人か)・住宅手当・税負担補填の取扱いによって、個人所得税・法人税・移転価格の複数の論点が生じます。赴任前に給与設計・出向契約・申告義務を整理しておくことが望まれます。

論点⑥ 2026年から本格化するグローバルミニマム課税(第2の柱)

インドネシアは2024年12月にGloBEモデル規則の国内法(PMK-136/2024)を公布しました。所得合算ルール(IIR)は2025年1月から、軽課税所得ルール(UTPR)は2026年1月から適用されています。年間総収入金額7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループが対象で、実効税率15%未満の国での事業に対してトップアップ税が課される仕組みです。インドネシアでタックスホリデーや投資優遇措置を活用している大規模グループは、実効税率の確認と申告体制の整備が急務となっています。

論点⑦ Coretaxによる税務管理の厳格化

2025年から導入が進むデジタル税務管理システム「Coretax」により、VAT請求書と源泉税の支払いがリアルタイムで当局に把握される体制となっています。給与記録・BPJS申告・売上とVAT計上額の不一致が自動検出される仕組みのため、従来以上に正確な帳簿管理が求められます。外資系企業にとっては、現地の経理・税務体制の整備が喫緊の課題です。

インドネシアは、日本企業にとって依然として大きな成長機会を持つ市場です。プラボウォ政権のもとでの安定した政策運営、新首都ヌサンタラの開発加速、着実な内需成長——これらは中長期の事業投資を後押しする要素です。一方で、2025〜2026年にかけての税制変化(VAT引き上げ・グローバルミニマム課税・Coretax導入)は、現地法人の利益計画・資金繰り・コンプライアンス体制に直接影響します。

本稿の作成にあたり、RSM IndonesiaのシニアパートナーであるNicholas James Graham氏をはじめとする専門家チームより、現地の実務に基づく貴重な知見をご提供いただきました。RSM Indonesiaは、外国投資家向けの税務・会計・コンサルティングに豊富な実績を持つ、インドネシアにおけるRSMインターナショナルのメンバーファームです。

RSM汐留パートナーズのインドネシア進出支援では、現地法人設立の検討から投資優遇措置の確認、PE認定リスクの評価、税務コストの試算、源泉税・VATの取扱い整理、駐在員税務、グローバルミニマム課税への対応まで、RSM Indonesiaとの連携を通じてワンストップでサポートしています。インドネシアでの事業展開をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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