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松橋 亮太 Ryota Matsuhashi

この記事の著者

松橋 亮太 Ryota Matsuhashi

パートナー  / 税理士

移転価格税制と独立企業間価格の算定方法について解説 – 国際税務の重要性とOECDガイドライン

2023年10月25日

はじめに

グローバルなビジネス活動を展開する企業にとって、移転価格税制は重要な税制です。
そして、国際取引において独立企業間価格を適切に算定することは、税務上のトラブルを避けるために欠かせない要素です。
本記事では、移転価格税制の基本と日本における独立企業間価格の算定方法を解説します。
さらに、国際税務における重要性とOECD(経済協力開発機構)のガイドラインについても触れます。

移転価格税制とは何か?

移転価格税制とは、多国籍企業がグループ内で取引を行う際に、その取引価格を「独立企業間価格」と同等であるかのように適正に設定することを求める税制です。
つまり、グループ内での取引価格が市場価格と一致するように調整し、適切な税金を納めることが求められます。
これにより、企業が意図的に利益を移転することで利益移転課税を回避する行為を防ぎます。

独立企業間価格の重要性

独立企業間価格とは、企業グループ以外の独立した第三者間で同様の条件下で行われる取引の価格です。
これを参考にして、グループ内での取引価格を算定します。

独立企業間価格の適用により、企業が自社の利益を過度に移転してしまうことを防ぐことができます。
もしグループ内での取引価格が市場価格と大きく乖離している場合、税務当局は利益の不当な移転を疑い、適切な調整を求める可能性があります。

日本における独立企業間価格の算定方法

日本では、移転価格税制を適用する企業は独立企業間価格を算定する必要があります。

以下6つの独立企業間価格の算定方法から最適なものを利用します。

  1. 独立価格比準法
  2. 再販売価格基準法
  3. 原価基準法
  4. 取引単位営業利益法
  5. 利益分割法
  6. ディスカウンティッド・キャッシュ・フロー法(DCF法)

※①②③が基本三法

①独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method – CUP法)

同じ製品やサービスを提供する独立した企業間の価格を比較し、価格を算定します。
類似の商品やサービスが市場で取引されている場合に有用です。

②再販売価格基準法(Resale Price Method – RP法)

親会社と関連会社間の商品の再販売価格を基準にして、利益を算定します。
再販売価格から一定の利益率を差し引いた価格を設定することが一般的です。

③原価基準法(Cost Plus Method – CP法)

原価基準法では、親会社が関連会社に提供する商品やサービスの製造コストに一定の利益率を加えて価格を設定します。
この方法は製造業やサービス業に適しています。

④取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method – TNMM)

取引単位営業利益法では、関連会社の売上高や利益率を基に、取引単位での営業利益を算定します。
他の独立企業との比較により、適切な価格を導き出します。

⑤利益分割法(Profit Split Method – PS法)

利益分割法は、関連会社が共同で創出した利益を分割する方法です。
各企業の寄与度に基づいて、利益を適切に分配します。
その分配された利益に基づいて独立企業間価格を算定する方法をいいます。

⑥ディスカウンティッド・キャッシュ・フロー法(DCF法)

DCF法では、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて、企業間の価格を算定します。
将来のキャッシュフローの予測に基づいて、適切な価格を評価します。

国際税務とOECDガイドライン

国際税務においては、異なる国の税制を調整することが必要とされます。
この調整において重要な役割を果たすのがOECDのガイドラインです。
OECDは移転価格に関するガイドラインを定め、各国の税務当局に対して指針を示しています。

このOECDガイドラインは、独立企業間価格の算定方法や国境を越える取引における税務上の課題について詳細な解説を行っています。
多くの国がこれを参考にしており、国際的な税務調整において重要な基準となっています。

おわりに

移転価格税制は、グローバルなビジネス展開において欠かせない税制であり、適切な独立企業間価格の算定が重要です。
日本においては、比較価格法、所得割合法、取引価格法などを用いて独立企業間価格を算定します。
さらに、国際税務においてはOECDのガイドラインが重要な役割を果たしています。

企業は適切な移転価格税制の実施に努めることで、税務上のリスクを最小限に抑え、円滑なビジネス運営を図ることが肝要です。
今後も、国際税務の動向の注視と、適切な税務戦略を策定が成功への鍵となるでしょう。

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