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タイ進出を成功させる日本企業のための実務ガイド― 外国人事業法・BOI奨励・会計税務・労務まで、RSMのプロフェッショナルが解説 ―

タイ進出を成功させる日本企業のための実務ガイド― 外国人事業法・BOI奨励・会計税務・労務まで、RSMのプロフェッショナルが解説 ―

海外進出
2026年7月9日

タイは、ASEANにおける主要な製造・輸出拠点の一つであり、日本企業にとって長年にわたり重要な投資先として位置付けられてきました。自動車、電気・電子、機械、金属・素材、食品、サービスなど、幅広い分野で日系企業の集積があり、現地でのサプライチェーン、工業団地、専門人材、金融・専門サービスの基盤も一定程度整っています。

一方で、タイでの事業展開では、成長市場としての魅力だけでなく、外国人事業法、BOIによる投資奨励、JTEPAの活用、法人所得税、VAT、源泉税、会計監査、労務管理、外国送金規制など、複数の制度を踏まえた事前検討が必要です。特に、日本企業がタイ法人を設立する場合、資本構成や事業内容によっては、外資規制や許認可の影響を受ける可能性があります。

本稿では、RSM Thailandから提供された情報をもとに、タイへの新規進出を検討している日本企業、および既にタイで事業を展開している日本企業に向けて、ビジネス・経済・会計・税務・金融・労務の主要論点を整理します。

タイ経済の特徴は、安定した産業基盤、輸出競争力、そして国内消費市場の存在にあります。製造業を中心に外国直接投資を受け入れてきた歴史があります。日本企業も、タイにおける主要な投資主体の一つとして、長年にわたり現地経済と深く結びついてきました。

近年のタイ経済は、観光需要の回復、サービス部門の改善、政府支出、民間消費、公共・民間投資の継続により、緩やかな回復基調にあります。日本企業にとっては、タイを単なる生産拠点として見るだけでなく、消費市場、サービス市場、周辺国展開の地域拠点として捉える視点も重要です。

特に、観光、物流、デジタルサービス、保守・修理、コンサルティング、外食・小売などの分野では、現地需要を取り込む余地があります。一方で、自動車産業では、世界的なEV化や環境規制の影響を受け、従来型の自動車部品・内燃機関関連ビジネスだけでは中長期的な成長を見通しにくい局面も生じています。タイ政府もEV・HEVの普及や関連産業の育成を進めており、既にタイに拠点を持つ日本企業にとっては、既存製品の需要動向、現地調達、設備投資、研究開発機能の見直しが課題となります。

新規進出企業においても、現在の市場規模だけで判断するのではなく、産業政策、サプライチェーン再編、環境対応の方向性を踏まえ、タイ拠点にどのような機能を持たせるかを検討することが重要です。

タイで事業を行う日本企業は、会社法制、会計税務、金融規制、労働法制を総合的に確認する必要があります。一般的な進出形態としては、タイ民商法に基づく非公開株式会社の設立が考えられます。非公開株式会社の設立には、原則として複数の発起人・株主が必要となり、設立後も株主構成、取締役、定款、会計期間などを適切に管理しなければなりません。

会計面では、会計期間ごとに財務諸表を作成し、公認監査人による監査を受ける必要があります。会計期間は原則12か月であり、設立初年度や決算期変更を行う場合には、現地当局の取扱いを確認することが重要です。日本本社への連結パッケージ提出や月次レポーティングを行う場合には、現地法定決算と本社管理会計の双方に対応できる体制を早期に整えておくことが望まれます。

税務面では、タイで事業を行う法人には原則として法人所得税が課されます。また、物品販売・サービス提供、輸入取引、国外事業者から提供されるサービスの国内利用などについては、VATや源泉税の検討が必要となる場合があります。税率だけで判断するのではなく、契約条件、請求書発行、申告・納税時期、資金繰りへの影響まで含めて確認することが重要です。

労務面では、タイ労働者保護法を中心に、労働時間、休日、休暇、賃金、時間外労働、解雇補償、福利厚生などに関するルールを遵守する必要があります。日本本社の就業規則や雇用慣行をそのまま適用するのではなく、現地法令に即した雇用契約、就業規則、賃金制度、勤怠管理体制を整備することが求められます。

タイでは、外国投資を促進するため、BOIによる投資奨励、タイ工業団地公社に関する制度、日本・タイ経済連携協定(JTEPA)など、複数の投資優遇制度が設けられています。これらの制度は、進出初期の税負担、設備投資、土地利用、外国人従業員の就労、輸入コストに大きな影響を与える可能性があります。

BOIの投資奨励を受けることができれば、法人所得税の免除・減免、機械・原材料の輸入関税の免除、外国人専門家の就労許可、土地所有に関する特例など、税制・非税制の両面でメリットを享受できる場合があります。ただし、BOIの適用可否は、対象業種に該当するかどうかだけで決まるものではありません。最低投資額、負債資本比率、使用する機械の状態、所在地、技術移転、雇用計画、環境対応など、プロジェクトごとに要件を確認する必要があります。

また、日本企業の場合、JTEPAの活用可能性も検討対象となります。JTEPAの適用を受けることで、サービス業・販売業を中心とした一定の事業について、通常の外国人事業許可証取得手続きではなく、より簡便な外国人事業証明書の取得によって事業を行える場合があります。ただし、各事業には出資比率や資本金、取締役構成、技術移転義務などの個別要件が設けられているため、制度名だけで判断せず、自社の事業実態が要件を満たすかを専門家とともに確認することが不可欠です。

さらに、JTEPAを利用した関税の免除・軽減を検討する場合には、原産地証明書の取得、部材調達、製造工程、輸入時の書類整備など、取引ごとの管理体制も求められます。

タイでは、会社法、会計基準、税務、労働法の分野で制度改正が行われています。会社法制では、企業結合や事業運営の柔軟性を高める観点から、タイ民商法の改正が行われています。企業再編、合併、資本政策を検討する日本企業にとっては、従来より柔軟な選択肢が生まれる一方、登記手続や株主・債権者対応の確認が必要です。

会計・税務面では、タイ財務報告基準およびタイ会計基準の改訂が継続しています。会計上の見積り、会計方針の開示、繰延税金、TFRSの改訂などは、現地法人の財務諸表だけでなく、日本本社の連結決算にも影響を与える可能性があります。特に、重要な会計処理や税効果会計に関する論点は、監査対応の段階で初めて検討するのではなく、月次決算や四半期決算の段階から確認しておくことが望まれます。

労働法制では、最低賃金や出産関連休暇など、従業員保護を強化する方向での改正が行われています。最低賃金は地域によって異なるため、複数地域に工場や拠点を置く企業では、人件費の見通しを地域別に把握する必要があります。また、出産関連休暇や有給部分の取扱いなどは、就業規則、給与計算、社会保険手続にも影響するため、制度改正に合わせた社内規程の見直しが必要です。

タイ現地法人を運営するうえでは、制度を理解するだけでなく、日常取引や本社とのやり取りの中で、どのように運用するかが重要になります。特に、契約、請求、送金、雇用管理は、会計税務や労務上の問題が発生しやすい領域です。

税務面では、VATと源泉税の取扱いに注意が必要です。契約金額にVATを含めるのか、別途請求するのかが曖昧なまま契約を締結すると、後に利益率や資金繰りに影響する可能性があります。また、日本本社や海外関連会社との役務提供、ソフトウェア利用、ライセンス、保守・管理サービスなどについては、源泉税やVATの課税関係を契約締結前に確認しておく必要があります。

金融規制についても、税務処理と切り離して考えることはできません。タイへの外貨送金や国外送金に関しては、送金目的、証憑、外貨口座の管理、タイバーツへの両替など、一定のルールがあります。配当、ロイヤリティ、サービスフィー、親子ローン返済などを予定している場合には、契約書、請求書、税務申告、銀行提出書類の整合性を確保することが重要です。

労務面では、従業員数の増加に応じて、就業規則や社内規程の整備が必要になります。正規従業員が一定数以上となる場合、タイ語による就業規則の作成・掲示が求められます。また、雇用条件を変更する場合には従業員の同意が問題となることもあるため、設立時には小規模であっても、将来の人員拡大を見据えた制度設計を行うことが望まれます。

タイで非公開株式会社を設立する場合、一定の条件下では外国人が100%出資することも可能です。しかし、外国人事業法(FBA)上、外国人が行うことを禁止または制限される事業が定められているため、資本構成だけでなく、実際に行う事業内容を確認する必要があります。

FBAでは、タイ国籍を有しない自然人やタイ国外で登記された法人だけでなく、外資比率や支配関係によってはタイで登記された会社も「外国人」として扱われる場合があります。そのため、出資構成の設計段階から外資規制の観点を組み込むことが重要です。

FBAが規制する事業は、外国人による営業が禁止されるもの、条件付きで許可されるもの、許可証を取得すれば営むことができるものの3段階に分かれています。サービス業、販売業、保守・修理、コンサルティング、物流関連などは、日本企業が想定する事業内容と規制区分が必ずしも一致しない場合があるため、進出前に専門家とともに確認することが不可欠です。

BOIの投資奨励を受ける場合には、外国人事業許可証が不要となるケースもありますが、その場合でも外国人事業証明書の取得など、別途手続きが必要となることがあります。したがって、タイ進出の初期段階では、法人設立、資本構成、許認可、BOI・JTEPAの活用可能性を並行して検討し、後から事業内容や出資構成を修正する事態を避けることが重要です。

タイは、日本企業にとって引き続き大きな事業機会を有する市場です。製造業の集積、消費市場の成長、観光・サービス需要の回復、投資優遇制度の存在など、進出を後押しする要素は数多くあります。

一方で、タイ進出を成功させるためには、会社設立、外資規制、投資優遇、税務、会計、労務、外国送金をそれぞれ別個に確認するだけでは不十分です。これらの論点は、事業開始時期、資本構成、契約条件、価格設定、人員計画、親会社への資金還流に相互に影響します。

本稿の作成にあたり、RSM ThailandのLegal DirectorであるPardorn Suchiva氏をはじめとする専門家チームより、現地の実務に基づく貴重な知見をご提供いただきました。RSM Thailandは、外国投資家向けの税務・会計・コンサルティングに豊富な実績を持つ、タイにおけるRSMのメンバーファームです。

当社は、RSM Thailandをはじめとする現地専門家と連携し、日本企業のタイ進出・現地事業運営をサポートしています。現地法人設立の検討、投資優遇措置の確認、税務コストの試算、会計・監査体制の整備、労務管理、親子会社間取引の整理など、タイビジネスに関わる各局面で支援が可能です。タイでの事業展開をご検討の際は、まずはお気軽にご相談ください。

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