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台湾進出を成功させる日本企業のための実務ガイド― 経済動向から税務・労務リスクまで、RSMのプロフェッショナルが徹底解説 ―

台湾進出を成功させる日本企業のための実務ガイド― 経済動向から税務・労務リスクまで、RSMのプロフェッショナルが徹底解説 ―

海外進出
2026年6月3日

AIブームを背景とした半導体産業の急成長、安定した内需、そして地政学的な観点からのサプライチェーン再編——。これらの要因が重なり、台湾は日本企業にとってますます戦略的な重要性を増しています。

一方で、台湾特有の税務規制・労働法制・都市開発規制などを十分に理解しないまま進出した場合、予期せぬコストやコンプライアンスリスクに直面することも少なくありません。

本稿では、RSM Taiwanの専門家チームから収集した情報をもとに、台湾への新規進出を検討している日本企業、および既に現地で事業を展開している企業の双方に向けて、実務上の重要ポイントを整理します。

ハイテク製造業:AIが牽引する成長と、影に潜む課題

台湾経済を語る上で外せないのが、AI関連需要の急拡大です。先端半導体やAIサーバー向け部品の受注は好調を維持しており、主要メーカーが先端プロセスおよび高度なパッケージング・テスト設備への投資を加速させています。

しかし、産業内の恩恵は均等ではありません。石油化学や一部の汎用半導体分野は、需要の低迷や価格競争にさらされており、同じ「製造業」でも業績の格差が広がっています。米国の金融政策や中国経済の動向といった外部変数も、輸出依存度の高い台湾製造業に引き続き影響を与え得る点は、日本企業としても注視すべきリスク要因です。

サービス・建設業:内需の底堅さが支える安定成長

一方、金融・運輸・倉庫・建設といった内需型セクターは、株式市場の上昇と輸出拡大による波及効果を受け、総じて安定的な成長軌道にあります。台湾行政院主計總處の直近データによれば、失業率は3%台前半で推移しており、労働市場の安定が個人消費を下支えしています。

台湾経済研究院も経済成長率予測を上方修正しており、民間投資の堅調さが主因とされています。国内外の需要が連動する形で台湾経済の自律的な成長モデルが機能していることを示しており、引き続き安定した成長が期待されています。

電力インフラ:北部集中リスクと政府の対応策

台湾への製造拠点設置や大規模データセンター投資を検討する際、電力インフラの安定性は見落とせない論点です。台湾北部は電力消費量が発電能力を大きく上回っており、南部・中部からの送電でギャップを補完している構造が続いています。送電ロスの問題も依然として解消されていません。

台湾政府はこの課題に対し、再生可能エネルギーの普及促進とエネルギー効率の改善を軸としつつ、原子力発電の活用も政策的選択肢として検討しており、北部を重点エリアとした電力インフラの整備・拡充を計画しています。事業用途によっては、電力供給の安定性を立地選定の重要な判断軸に加えることをお勧めします。

法改正の背景と企業への影響

台湾は急速に超高齢社会へと移行しており、2023年の労働基準法第54条改正はその直接的な対応措置です。従来の「65歳一律定年」という画一的な制度が廃止され、雇用者・労働者双方が退職年齢を個別に協議して決定できる枠組みに移行しました。

日本企業の台湾子会社や駐在員事務所にとって、この変更が意味するのは、退職時期に関するコミュニケーションと文書管理の重要性が増したということです。

実務上の3つの確認事項

(1)既存の早期退職制度は有効か

希望退職の申請要件(勤続15年以上かつ55歳以上、勤続25年以上、または勤続10年以上かつ60歳到達)は法改正後も変更されていません。退職1ヶ月前までの事前通知義務も従来通りです。

(2)協議が決裂した場合の取り扱い

雇用者と労働者が退職年齢について合意に至らなかった場合は、旧来の65歳定年の取り扱いに準じて処理されます。

(3)差別的取り扱いに対するペナルティ

「中高齢及高齢者就業促進法」第12条は、継続雇用となった高齢労働者への賃金・福利厚生上の差別的取り扱いを明確に禁じています。違反した場合には30万〜150万台湾ドルの罰金が科される可能性があり、コンプライアンス管理の観点から人事担当者は制度内容を正確に把握しておく必要があります。

論点(1):移転価格文書の三層構造対応は万全か

台湾では毎年5月末が法人税の申告期限となっており、一定規模以上のグループ企業は、台湾法令が定める「三層構造の移転価格文書(マスターファイル・ローカルファイル・国別報告書)」の整備が継続的に義務付けられています。

実務上の落とし穴として多いのが、関連者間取引の個別分析が不十分なまま一括処理されているケースです。取引の種類ごとに適切なテストを実施し、財務諸表・税務申告書・取引契約書との整合性を確保することが求められます。グループ全体の収益状況を年度内に定期的に確認し、異常値が検出された場合は価格政策の早期調整によって移転価格リスクを事前に軽減するアプローチが有効です。また、相手国が台湾と租税条約を締結している場合、二重課税リスクの回避手段として二国間APA(事前確認制度)の活用も検討に値します。

なお、グローバルなBEPS(税源浸食・利益移転)対策の強化により、タックスヘイブンを利用した節税スキームの実効性は低下しており、コンプライアンスと税務効率のバランスを重視した戦略的アプローチへの転換が求められています。

論点(2):外国企業への支払いにおける源泉徴収20%の罠

台湾企業が海外企業からサービスやソフトウェア、ライセンスを購入する際、その報酬が「台湾源泉所得」と判断されると、支払額の20%を所得税として源泉徴収する義務が生じます。

問題は、外国企業がこの源泉徴収を拒否するケースで、台湾企業がグロスアップ(税負担の肩代わり)を求められ、実質的なコスト増につながるケースが多発している点です。

では、この20%は必ず発生するのか?

実際には軽減措置が存在します。以下の場合は税率の引き下げまたは免除が適用される可能性があります。

  • 外国企業が台湾と租税条約を締結している国に本拠を置く場合
  • 提供サービスがコンサルティング・技術研修等の技術サービスに該当する場合

ただし、ロイヤルティ・配当・利子については支払時に条約上の限度税率を適用できますが、それ以外の所得については事前承認申請が必要です。契約締結前に専門家へ相談し、税務コストを正確に試算しておくことが、後のトラブル防止につながります。

企業会計準則(EAS)第12号の改訂

台湾の企業会計準則(EAS)第12号「所得税」が改訂され、国際会計基準(IAS)第12号との整合性が強化されました。主な変更点は、繰延税金負債の認識免除の範囲の見直しであり、グループ内の税務ポジション管理において影響が生じる可能性があります。

議決権付優先株式の持分法適用

IAS第28号「関連会社及び共同支配企業への投資」第6項によれば、ある企業が投資先の議決権の20%以上を直接または間接的に保有している場合、反証がない限り「重要な影響力あり」と推定されます。逆に20%未満の保有であれば、重要な影響力がないと推定されます。なお、他の投資家が過半数を保有していたとしても、この判断は必ずしも覆されるものではありません。

ここで実務上の論点となるのが、議決権付優先株式の取り扱いです。当該優先株式の議決権が普通株式のそれと実質的に同等であり、かつ20%以上を直接・間接的に保有している場合、重要な影響力がないことを示す反証がない限り、持分法の適用対象となります。

持分法が適用される場合、投資損益は優先株式の損益分配条件に従って認識されます。ただし、その評価にあたっては、投資先企業の定款および優先株式の発行条件を精査することが不可欠です。投資スキームの設計段階や持分変動時には、会計処理への影響を事前に確認されることをお勧めします。

飲食・小売・サービス業として台北市内に拠点を設ける場合、立地の法的適合性の確認が事業の成否を左右します。

近年、台北市中山区において70店舗超が住居系用途地域での無許可営業として行政指導を受け、多くが閉店を余儀なくされた事例が報告されています。この問題の背景には、路地裏の商店街文化を守りたい地域住民と、居住環境の整備を優先する都市再開発行政との間の根深い対立があり、地域住民からは商店街保全を求める要望書も提出されています。こうした動向は、台北市内での出店・拠点設置において、開業前の立地適合性の確認がいかに重要かを端的に示す事例といえます。

台北市の用途地域規制(「台北市土地使用分区管制自治条例」等)では、住居系地域での商業利用について、接道幅員8メートル以上の道路への接続や、階層・延床面積等の条件が課せられています。開業前に会計・法律事務所を通じて台北市商業処への事前審査を申請することを強く推奨します。

本稿でご紹介した税務・労務・会計・規制の各論点は、いずれも専門的な判断を要する領域です。当社は、台湾に精通したチームを擁し、RSM Taiwanと密に連携し、日本企業の台湾進出・現地事業運営を一貫してサポートしています。

当社は台湾子会社や駐在員事務所の設立検討から、移転価格文書の整備・二国間APA申請のサポート、源泉徴収リスクの事前診断と契約設計、現地スタッフの労務管理制度の構築、さらには台湾IFRS・EAS対応の財務諸表作成まで、台湾ビジネスに関わるあらゆる局面で企業の皆様をサポートいたします。

日本国内からのご相談はRSM汐留パートナーズ(RSM Japan)が窓口となっております。まずはお気軽にお問い合わせください。

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