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外資系企業の人事労務アウトソーシング完全ガイド|委託できる業務・選び方・導入の流れ

外資系企業の人事労務アウトソーシング完全ガイド|委託できる業務・選び方・導入の流れ

人事・労務
2026年9月14日

日本で事業を行う外資系企業では、「日本の労働法や社会保険制度に詳しいHR担当者がいない」「海外本社のHRが日本法人の人事労務まで管理している」「給与計算や入退社手続きが特定の担当者に集中している」といった課題が生じることがあります。

特に日本進出直後は、従業員数が少なく、専任のHR Managerや労務担当者を何人も採用することが現実的でないケースもあります。

そこで選択肢となるのが、**人事労務アウトソーシング(HR Outsourcing)**です。

ただし、外資系企業の人事労務では、単に給与計算や社会保険手続きを外注すればよいわけではありません。海外本社のGlobal HR Policyと日本の労働法令・実務をどのように整合させるかという視点が必要です。

本記事では、日本の外資系企業が人事労務アウトソーシングで委託できる業務、導入するメリット、委託先の選び方、導入の流れまでまとめて解説します。

人事労務アウトソーシングとは

人事労務アウトソーシングとは、企業が自社で行っている人事・労務業務の一部または全部を、外部の専門会社へ委託することです。

給与計算だけを委託する方法もあれば、勤怠管理、社会保険・労働保険、入退社、人事データ管理、従業員からの問い合わせ対応などをまとめて委託する方法もあります。

特に外資系企業では、海外本社 → 日本法人 → アウトソーシング会社という三者間で人事情報を連携するケースが多いため、業務処理だけでなく、英語でのコミュニケーションやGlobal HR Systemとの連携も重要になります。

給与計算アウトソーシングとの違い

給与計算アウトソーシングは、人事労務アウトソーシングの一部です。人事労務アウトソーシングでは、給与計算以外にも次のような業務を対象にできます。

領域主な業務

入社・退社

入退社情報管理、必要書類案内、手続き対応

給与・賞与

給与計算、賞与計算、給与明細作成

勤怠

勤怠データ確認、残業・休暇データ管理

社会保険・労働保険

資格取得・喪失、各種届出等

年次業務

年末調整、住民税年度更新、算定基礎等

人事管理

Employee Master管理、人事データ更新

規程・労務

雇用関連書類、就業規則等の運用支援

従業員対応

給与・社会保険等に関する問い合わせ対応

本社連携

HR Report、人事データの英語での連携

自社の課題に応じて、一部だけを外注することも、複数業務をまとめて委託することも可能です。

なぜ外資系企業では人事労務アウトソーシングが有効なのか

日本の労務と英語の両方に対応できる人材が必要になる

外資系日本法人のHR担当者には、日本の労働法や社会保険、給与計算についての知識に加え、海外本社と英語でやり取りする能力が求められることがあります。

例えば、本社から、

「なぜこの従業員には残業代が発生しているのか」
「日本ではこのLeave Policyを適用できるのか」
「なぜ社会保険料が変更されたのか」

といった質問を受けるケースがあります。

日本独自の制度を理解し、それを海外本社へ説明できる人材を確保することが難しい場合、人事労務の外部専門家を活用することが選択肢になります。

Global HR Policyをそのまま日本へ適用できるとは限らない

海外本社が作成したEmployment AgreementやEmployee Handbook、Leave Policyなどを、そのまま日本法人で利用できるとは限りません。

日本では、労働契約の締結時に賃金、労働時間その他一定の労働条件を明示する必要があります。また、2024年4月からは就業場所・業務の「変更の範囲」など、労働条件明示に関するルールも変更されています。

そのため、海外本社の制度を日本へ導入する際には、Global Policyと日本の法令・実務を照合する工程が重要になります。

外資系企業がアウトソーシングできる主な人事労務業務

入社・退社手続き

従業員の入社・退社では、Employee Masterへの登録だけでなく、給与、社会保険、雇用保険など複数の業務が連動します。

特に海外本社が人事情報を管理している場合、Global HR System → 日本側給与システム → 社会保険等の手続きというデータ連携を設計する必要があります。

外国人従業員を雇用する場合には、在留資格上、その業務に従事できるかを確認することも必要です。厚生労働省も、外国人を雇用する事業主に対して、労働・社会保険関係法令の遵守や在留資格の確認などを求めています。

外国人従業員を雇用する場合は、在留資格の確認に加えて、雇用保険の被保険者になるかどうかにかかわらず、氏名・在留資格・在留期間等をハローワークへ届け出る「外国人雇用状況届出」が事業主に義務付けられている点も押さえておきたいポイントです。海外本社側では想定されていないローカルルールであることが多く、見落とされがちな手続きの一つです。

給与・賞与計算

毎月の給与計算や賞与計算は、アウトソーシングしやすい代表的な業務です。

ただし、給与計算は基本給を計算するだけではありません。勤怠、残業、各種手当、欠勤、社会保険料、所得税、住民税など、複数の情報を正確に反映する必要があります。

海外本社が給与データを必要とする場合は、英語のPayroll Reportや人件費データの作成まで委託範囲に含めることも考えられます。

勤怠・労働時間管理

日本では原則として、法定労働時間は1日8時間、週40時間です。法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合には、一定の場合を除き、36協定の締結・届出が必要になります。時間外労働には原則として月45時間・年360時間という上限も設けられています。外資系企業では、海外本社が日本の36協定という仕組みを知らないケースもあります。

そのため、勤怠システムで労働時間を集計するだけでなく、日本の法令を前提として労働時間を管理する体制が重要です。

実務上特に注意したいのが、海外本社からのプロジェクト納期や決算対応などにより、原則の上限(月45時間・年360時間)を超えて時間外労働が発生するケースです。この場合は「特別条項付き36協定」の締結が必要ですが、特別条項を適用しても、時間外労働は年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、単月100時間未満(休日労働を含む)という上限を超えることはできません。「必要な分だけ残業させればよい」という海外本社の感覚のまま運用すると、これらの上限を超過し罰則の対象となるおそれもあるため、繁忙期の見込みを早めに把握し、特別条項の要否を検討しておくことをお勧めします。

社会保険・労働保険手続き

法人事業所で常時従業員を使用する場合は、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。入社・退社だけでなく、報酬額の変更、扶養、育児休業などに伴い、年間を通じてさまざまな手続きが発生します。

なお、労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成、提出代行、事務代理を報酬を得て業として行うことについては、社会保険労務士法上の制限があります。委託先を選ぶ際には、必要な業務を社会保険労務士等が適切に対応できる体制か確認することが重要です。

就業規則などの労務管理

日本では、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長へ届け出る必要があります。変更した場合も同様です。

外資系企業では、本社のEmployee Handbookだけで運用を開始し、日本で必要となる就業規則との関係が整理されていないケースに注意が必要です。

日本法人の規模が拡大する前に、雇用契約、就業規則、社内ポリシーの関係を整理しておくことが重要です。

外資系企業が特に注意したい日本独自の人事労務ルール

年次有給休暇は会社独自のLeave Policyだけで判断しない

日本の年次有給休暇は労働基準法に基づく制度です。一定の要件を満たした労働者には法定の年次有給休暇が付与され、法定の年次有給休暇が年10日以上付与される労働者については、使用者が毎年5日を確実に取得させる必要があります。

海外本社のVacation Policyが存在していても、日本側で法定の年次有給休暇を適切に管理する必要があります。

「Manager」という役職名だけで労働時間管理を判断しない

海外本社では、Manager以上を一律に時間管理の対象外としている場合があります。しかし、日本における労働時間や割増賃金の適用は、単純に英語のJob Titleだけで決まるものではありません。海外本社のJob GradeやTitleを日本へ導入するときは、日本の制度との整合性を確認することが重要です。

管理監督者に該当するかどうかは、①経営者と一体的な立場で重要な職務・権限を有しているか、②出退勤について厳格な制限を受けていないか、③その地位にふさわしい待遇(基本給・手当等)を受けているか、といった実態で判断されます。「カントリーマネージャー」「Head of〇〇」といった役職名がついていても、実態が伴わなければ管理監督者とは認められません。いわゆる「名ばかり管理職」が問題となった日本マクドナルド事件(東京地裁平成20年1月28日判決)でも、店長という肩書があるにもかかわらず管理監督者性が否定されており、役職名だけで判断することの危うさを示す代表的な裁判例としてよく引用されます。

日本法人の従業員数が増えると必要な対応も増える

日本進出直後は数名だった組織でも、採用が進むにつれて就業規則、安全衛生、労働時間管理など、求められる人事労務体制が変わっていきます。

そのため、人事労務アウトソーシングを導入するときは、現在の従業員数だけではなく、今後1~2年の採用計画まで考慮して業務フローを設計することが有効です。

人事労務アウトソーシングのメリット

専任HRを採用する前でも日本の人事労務体制を構築できる

日本進出直後の企業では、従業員が数名しかいない段階からフルタイムのHR担当者を配置することが難しい場合があります。人事労務業務を外部委託することで、組織規模に応じた体制を構築しやすくなります。

人事労務の属人化を防ぎやすい

給与計算や社会保険手続きが一人の担当者に集中していると、退職や長期休暇によって業務が滞る可能性があります。アウトソーシング導入時に手順、期限、必要データを整理することで、業務を標準化しやすくなります。

HR Managerが戦略的な業務に集中できる

HR Managerが毎月の勤怠確認や給与データ作成、入退社書類の処理に多くの時間を使っている場合、採用、人材育成、評価制度、組織開発などに十分な時間を割けません。

定型的な労務オペレーションを外部へ切り出すことで、社内HRがより経営に近い人事課題へ集中しやすくなります。

すべての人事業務を外注するべきではない

人事労務アウトソーシングでは、外部へ任せる業務と社内に残す業務を分けることが重要です。例えば、次のように整理できます。

外部委託しやすい業務社内に残すことが適する業務

給与・賞与計算

採用の最終判断

社会保険等の手続き

人事評価

入退社事務

昇進・昇格判断

勤怠データ確認

組織設計

人事データ管理

従業員との重要な面談

定型的な従業員問い合わせ

経営上の人事判断

基本的には、「定型的なオペレーションは外部へ、会社として判断すべきことは内部へ」という切り分けが分かりやすいでしょう。

外資系企業が人事労務アウトソーシング会社を選ぶ7つのポイント

1.外資系企業の日本法人に対応した経験があるか

海外本社との人事データ連携やGlobal HR Policyとの調整など、外資系企業には国内企業とは異なる業務が発生します。単なる給与計算の経験だけでなく、外資系日本法人の運用を理解しているかを確認しましょう。

2.英語で実務コミュニケーションができるか

確認したいのは「英語対応可能」という表示だけではありません。給与、社会保険、休暇、残業など日本独自の制度について、海外HRやRegional HRへ英語で説明できるかが重要です。

3.給与計算と社会保険等を連携できるか

給与と社会保険は密接に関係しています。それぞれ別の委託先へ依頼すると、情報連携や責任分担が複雑になる場合があります。必要な手続きについて、社会保険労務士等を含む適切な専門家との連携体制があるか確認しましょう。

4.日本の労務相談まで対応できるか

給与計算だけでなく、

「この休暇制度を日本でも導入できるか」
「雇用条件を変更したい」
「勤務時間制度を見直したい」

といった問題が発生することがあります。日常処理だけでなく、必要に応じて専門的な労務相談へつなげられる体制があるかも重要です。

5.自社のHRシステムに対応できるか

外資系企業では、WorkdayなどのGlobal HR Systemや海外本社指定のシステムを利用していることがあります。日本だけ別システムを導入すると二重入力が発生する場合もあるため、既存システムとのデータ連携方法を確認します。

6.個人情報を適切に管理できるか

人事労務では、給与、住所、家族情報、銀行口座など、機密性の高い情報を扱います。アクセス権限、データ授受、保管方法、担当者変更時の管理など、セキュリティ体制を確認しましょう。

7.担当者個人ではなくチームで継続できるか

アウトソーシング後も特定の担当者一人しか業務を理解していなければ、属人化の問題は解決しません。業務マニュアル、レビュー担当、バックアップ体制などを確認することが重要です。

人事労務アウトソーシング導入の流れ

一般的には、次のように進めます。

  1. 現在の人事労務業務を棚卸しする
    給与、勤怠、社会保険、入退社、問い合わせなどの業務を一覧化します。
  2. 委託範囲を決める
    日本法人、海外本社、アウトソーシング会社の担当範囲を明確にします。
  3. 年間スケジュールを整理する
    毎月の給与計算だけでなく、年末調整、住民税、社会保険関係など年間業務も整理します。
  4. 業務フローとデータ連携を設計する
    誰が、いつ、どのデータを、どの方法で提供するかを決めます。
  5. 過去データ・規程類を引き継ぐ
    Employee Master、給与データ、就業規則、雇用関連書類などを整理します。
  6. テスト・並行運用を行う
    給与計算など重要な業務は、移行時に結果を確認しながら運用します。
  7. 本稼働後も定期的に見直す
    従業員数や組織、Global Policyの変更に応じて委託範囲を見直します。

人事労務アウトソーシングでよくある失敗

海外本社のポリシーをそのまま日本へ持ち込む

Global Policyがあるからといって、日本側の制度確認を省略するのは避けるべきです。日本独自の法令や運用を確認したうえで、日本法人に適したルールへ落とし込む必要があります。

給与計算だけを切り離して委託する

勤怠、入退社、人事データ、社会保険などと給与計算の情報連携が整理されていないと、外注しても社内の負荷が減らないことがあります。単体の作業ではなく、前後の業務フローまで確認しましょう。

「誰が情報を渡すか」を決めていない

給与変更や入退社が発生しても、委託先へ情報が届かなければ処理できません。日本法人、海外本社、委託先の間で、情報提供者と締切を明確にすることが重要です。

価格だけで委託先を選ぶ

人事労務アウトソーシングは、処理件数だけでは比較できません。英語対応、従業員問い合わせ、海外本社との連携、労務相談、社会保険等への専門家対応が必要かによって、求められるサービスは大きく異なります。

自社が最終的にどこまで任せたいかを基準に比較しましょう。

外資系企業の人事労務アウトソーシングに関するよくある質問

従業員数が少ない日本法人でも利用できますか?

可能です。日本進出直後など、専任のHR担当者を採用するほど業務量がない段階では、外部委託が選択肢になります。組織拡大後に一部業務を内製化する方法もあります。

人事労務業務をすべてアウトソーシングできますか?

給与計算、勤怠確認、入退社事務、人事データ管理など幅広い業務が対象になります。一方、人事評価、採用の最終決定、組織設計など、経営判断に関係する業務は社内に残すのが一般的です。

海外本社との英語でのやり取りも委託できますか?

委託先によって異なります。外資系企業では、単に英文メールに対応できるだけでなく、日本の給与・社会保険・労務制度について海外HRへ説明できるかを確認するとよいでしょう。

人事労務アウトソーシングを検討すべきタイミングはいつですか?

日本進出時、従業員数の増加時、HR担当者の退職時、給与計算や社会保険業務が属人化している場合などが代表的です。採用を急速に進める予定がある場合は、従業員数が増えてからではなく、その前に運用体制を整える方法もあります。

まとめ|外資系企業の人事労務は「GlobalとJapanをつなぐ体制」が重要

外資系企業が日本で人事労務アウトソーシングを利用する際は、給与計算や社会保険手続きを外注できるかだけで判断するべきではありません。

海外本社のGlobal HR PolicyやHR Systemを理解しながら、日本の労働法、社会保険、勤怠・給与実務に合わせて運用できる体制が重要です。

特に日本進出直後や組織拡大期では、人事労務を一人の担当者へ集中させるのではなく、日本法人・海外本社・外部専門家の役割を整理しておくことで、継続的に運用しやすいHR体制を構築できます。

RSM汐留パートナーズでは、外資系企業の日本法人に対して、給与計算、社会保険・労働保険手続き、人事労務アウトソーシング、労務相談などを含むHR領域のサポートを提供しています。また、会計税務やビザ・許認可など、日本法人運営に必要となるバックオフィス業務をワンストップで支援しています。

「日本に専任のHR担当者を置くべきか迷っている」「海外本社だけでは日本の労務管理に対応できない」「給与・社会保険を含めた人事労務業務をまとめて見直したい」といった場合は、現在の業務を棚卸ししたうえで、自社に適したアウトソーシング範囲を検討することが重要です。

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