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日本で法人口座を開設できない外資系企業はどうする?実務上の対応方法を解説

日本で法人口座を開設できない外資系企業はどうする?実務上の対応方法を解説

会計・税務
2026年10月26日

日本法人を設立したものの、銀行の法人口座をなかなか開設できない――。日本へ進出した外資系企業では、この問題が給与、税金、社会保険料、取引先への支払など、会社設立後のオペレーションに影響することがあります。特に注意したいのが納税です。日本の法人口座がないからといって、法人税や消費税などの納期限が延長されるわけではありません。口座開設を進める一方で、納期限までにどのように税金を支払うかを早めに決めておく必要があります。

本記事では、日本で法人口座を開設できない、あるいは口座開設に時間がかかっている外資系企業を対象に、考えられる対応方法と納税実務上のポイントを解説します。

1.外資系企業でも日本の法人口座は開設できる

まず、「外国資本の会社だから日本の銀行口座を開設できない」というわけではありません。銀行等は法人から新規口座開設の申込みを受ける際、マネー・ローンダリング等の防止の観点から、法人の本人特定事項、取引目的、事業内容、実質的支配者(Beneficial Owner)などを確認します。

金融機関によって必要書類や審査方法は異なりますが、例えば次のような情報・資料が確認対象となることがあります。

  • 法人の登記事項
  • 事業内容
  • 口座を利用する目的
  • 実質的支配者
  • 株主構成
  • 契約書、請求書、発注書等
  • 事業計画
  • 許認可等が必要な事業の場合はその資料
  • 海外の税務上の居住地等に関する情報

金融機関は、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認として、法人の名称・本店所在地、取引目的、事業内容、実質的支配者などを確認します。さらに、実際の事業活動や取引実態を確認するため、契約書や請求書などの追加資料の提出を求める場合があります。外資系企業では資本関係が複雑になりやすいため、最終的な実質的支配者まで確認できる資本関係図に加え、海外本社との関係、日本での事業内容、予定する入出金を一貫して説明できる資料を準備することが重要です。CRS(共通報告基準)に基づき、税務上の居住地等の届出を求められる場合もあります。

必要資料や追加確認の内容は、金融機関や個別の審査によって異なります。口座開設は、登記が完了すれば自動的に進む手続ではありません。特に外資系企業では、会社設立の段階から口座開設までを見据えて準備を進めることが、手続を円滑にするポイントです。

2.法人口座の開設に時間がかかると何が問題になるのか

法人口座がなくても、会社設立直後のすべての活動が止まるわけではありません。しかし、事業を継続していくうえでは徐々に支障が出てきます。

(1)給与や取引先への支払

日本で従業員を採用すれば給与の支払が発生します。また、オフィス賃料、専門家報酬、仕入代金など、日本国内の取引先への支払も必要になります。一時的に海外本社から直接支払うことが可能な取引もありますが、恒常的に本社が日本法人の費用を立て替えると、日本法人と本社の間にIntercompany Payable(関係会社未払金)などが発生します。

資金の性質によっては会計・税務・法務上の整理も必要となるため、単なる「口座開設までの代替手段」として長期間続けるのは避けた方がよいケースがあります。

(2)税金の納付

法人税、消費税、源泉所得税などにはそれぞれ納期限があります。

銀行口座の審査中であることを理由に、法定納期限が延長される制度はありません。国税を法定納期限までに完納しない場合、原則としてその翌日から納付日まで延滞税が自動的に課されます。そのため、法人口座開設の見込みが立たない場合は、申告期限直前ではなく、税額が確定する前の段階から納付方法を検討する必要があります。

3.法人口座を開設できない場合に考えられる対応方法

(1)必要資料を整理して口座開設を改めて進める

まず検討したいのは、銀行口座そのものの開設を引き続き進めることです。一度審査に通らなかったとしても、すべての金融機関で同じ結果になるとは限りません。ただし、やみくもに申込みを繰り返すよりも、事業実態を説明できる資料を整理する方が実務的です。

例えば、日本法人設立直後でまだ売上がない場合でも、

  • 日本で何を販売・提供するのか
  • 海外本社との関係
  • 主な取引先・取引予定
  • 日本法人に資金が入る経路
  • 想定する入出金
  • 実質的支配者までの資本関係

などを説明できるよう準備します。「登記された会社が存在する」という事実だけではなく、「日本でどのような事業を行い、口座をどのように利用するのか」を説明できる状態にすることがポイントです。

(2)海外本社による立替払いを一時的に利用する

口座開設までの間、海外本社が日本法人の費用を直接支払う方法も考えられます。例えば、日本法人宛ての専門家報酬などを海外本社が一時的に支払い、日本法人側では本社に対する債務として処理するといった方法です。

ただし、すべての支払で利用できるとは限りません。また、日本法人の費用を本社が継続的に負担する場合には、単なる立替なのか、本社から日本法人への貸付なのか、その他の資金提供なのかを整理する必要があります。長期運用を前提とするのではなく、口座開設までの暫定対応として検討するのが一般的です。

4.法人口座がなくても国税を支払える方法はある

国税には、口座振替を利用する方法のほか、クレジットカード納付、金融機関・税務署窓口での現金納付などがあります。法人名義の国内預貯金口座がない場合でも利用できる方法はありますが、税額上限、利用可能税目、納付書の要否、決済手数料、領収証書の有無が異なります。

納付方法日本の銀行口座主な注意点

ダイレクト納付

必要

事前届出と対応金融機関の口座が必要

インターネットバンキング等

原則必要

ペイジーが利用できる金融機関の口座とe-Tax利用開始手続が必要

クレジットカード納付

不要

決済手数料が発生 1回1,000万円未満

金融機関・税務署窓口

方法による

納付書を添えて現金納付 
窓口対応が必要

国外からの送金

対象者に制限

国税庁への事前連絡等が必要

(1)ダイレクト納付は法人口座がなければ利用できない

外資系企業でもよく利用されるのがDirect Payment(ダイレクト納付)です。e-Taxで申告した後、登録した預貯金口座から税金を引き落とす仕組みで、税理士が納税者に代わって納付手続を行うこともできます。

ただし、ダイレクト納付には利用可能な金融機関の預貯金口座が必要です。つまり、「税理士に手続を依頼すれば、銀行口座がなくてもダイレクト納付できる」という仕組みではありません。この点は、法人口座をまだ持っていない外資系日本法人が特に注意したいところです。

(2)クレジットカード納付という選択肢

国税については、クレジットカードによる納付も可能です。国税庁指定の専用サイトを通じて納付受託者へ納付を委託する方法で、1回の手続について利用可能額は1,000万円未満かつカードの決済可能額以下とされています。別途、決済手数料もかかります。そのため、一定額までの税金について一時的な選択肢になる場合があります。一方、多額の法人税や消費税を継続的に納付する手段として適しているかは、決済限度額や手数料を含めて検討する必要があります。高額納税から生じる手数料負担を踏まえると恒常的な手段には向かないことも考えられます。 

日本の銀行口座からの振替を必要としない納付方法ですが、当然ながら利用可能なクレジットカードを保有している必要があります。設立直後の日本法人では利用できるカードを保有していない場合もあるため、銀行口座未開設時にすべての法人が利用できる代替手段とは限りません。

(3)「海外の銀行から国税庁へ送金すればよい」とは限らない

国税庁には、国外からの送金によって国税を納付する制度もあります。ただし、これは国税庁が定める国外に住所または居所を有する対象者向けの手続です。利用時には事前に国外納付専用窓口へ連絡し、円建てで送金するなど所定の手続が必要です。自社が利用対象となるかも含めて、事前に確認する必要があります。

(4)国税以外の支払も忘れない

日本法人が支払う公租公課は国税だけではありません。状況によっては、法人住民税・法人事業税などの地方税、従業員に関する社会保険料なども発生します。それぞれ納付先、納付方法、利用できる電子決済等が異なるため、「法人税を支払える方法が見つかったので、すべての支払が解決した」とは限りません。

特に日本法人を新設した直後は、

法人税・消費税等の国税 → 地方税 → 源泉所得税 → 社会保険料 → 給与・ベンダー支払

というように、今後発生する支払を一覧化したうえで、それぞれの資金決済方法を確認しておくとよいでしょう。

5.口座開設と納税対応は並行して進める

実務で避けたいのは、「銀行口座がもうすぐ開くはず」と考え、納期限直前まで代替策を検討しないことです。法人口座の開設時期は企業側だけで確定できません。

そのため、口座開設申請を続けながら、

  1. 今後3~6か月に発生する税金と支払を洗い出す
  2. それぞれの納期限を確認する
  3. 日本の口座が必要な支払と、別の方法が利用できる支払を分ける
  4. 海外本社から必要資金をいつ送るか決める
  5. 自社だけで対応できない納付について外部支援を検討する

このように、口座開設の手続を進めることと、口座開設までの資金・納付手段を確保することを並行して進める方が安全です。

特に初年度は、法人税だけでなく、源泉所得税や消費税など複数の税目が異なるタイミングで発生する可能性があります。「年次決算のときに考える」のではなく、会社設立後のCash Management(資金管理)の一部として納税方法を設計しておく必要があります。

6.まとめ

日本で法人口座を開設できない場合でも、直ちに日本法人の運営が不可能になるわけではありません。まずは銀行が確認する事業内容、取引目的、実質的支配者などを整理し、法人口座の開設を引き続き進めます。

同時に重要なのが、口座が開設されるまでの支払手段を確保することです。特に税金は、銀行口座の審査中であっても納期限を迎えます。国税にはクレジットカード納付など銀行口座を使わない方法もありますが、税額や税目、企業の状況によって利用できる方法は異なります。また、地方税や社会保険料については別途対応を確認する必要があります。

RSM汐留パートナーズでは、日本の銀行口座をまだ開設できていない外資系企業などを対象に、納税代行サービスを提供しています。「日本法人を設立したが、法人口座が開設できず税金を支払えない」「海外本社から日本へどのように納税資金を送ればよいか分からない」「申告だけでなく納付まで一連で管理したい」といった場合には、税額が確定してからではなく、納期限に余裕がある段階で納付方法を確認しておくことが重要です。なお、利用できる納付方法や納税代行の対象範囲は、税目、法人の状況、資金の送金方法等によって異なります。個別の状況に応じた確認が必要です。

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