日本に中長期間在留する外国人(中長期在留者)には、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、自身の住居地を法務大臣(市区町村の窓口を経由)に届け出る義務が課せられています。
この手続きは、単なる行政上の事務手続きにとどまらず、在留資格の維持や更新において極めて重要な意味を持ちます。本記事では、住居地の届出に関する具体的な手続きの流れ、期限、および実務上の論点について解説します。
1. 住居地の届出の対象者と時期
中長期在留者
<中長期在留者の範囲>入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人で,次の①~⑤のいずれにも該当しない人
① 「3月」以下の在留期間が決定された人
② 「短期滞在」の在留資格が決定された人
③ 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人
④ ①から③の外国人に準じるものとして法務省令で定める人
⑤ 特別永住者
新規入国時の届出(住居地を定めたとき)
新たに中長期在留者として日本に入国し、住居地を定めたときは、その住居地を定めた日から14日以内に届出を行う必要があります。
- 対象者: 新規上陸後の中長期在留者
- 提出先: 住居地の市区町村の窓口
- 必要書類: 届出書及び在留カード又は後日在留カードを交付する旨の記載を受けた旅券の提示
転居時の届出(住居地を変更したとき)
既に住居地を届け出ている者が、転居により住居地を変更した場合も、同様に転居の日から14日以内に新住所地の市区町村窓口へ届け出る必要があります。
2. 実務上の重要な論点と留意点
住居地の届出においては、期限の遵守だけでなく、以下の点について正しく理解しておく必要があります。
14日以内の期限と在留資格への影響
住居地の届出を怠った場合、あるいは虚偽の届出をした場合には、罰則が科される可能性があるだけでなく、在留資格の取消事由に該当するおそれがあります。
- 在留資格取消の可能性: 正当な理由なく、新規入国から90日以内に住居地の届出を行わない場合、または転居後90日以内に新住居地の届出を行わない場合、在留資格が取り消される対象となり得ます。
- 更新・変更審査への影響: 次回の在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請において、居住実態と届出状況の整合性が確認されます。届出が遅延している場合、法令遵守の姿勢が問われ、審査にマイナスの影響を与える可能性が否定できません。
「住居地」として認められる場所
住居地として届け出る場所は、生活の本拠である必要があります。
- 短期滞在用施設の扱い: ホテルやウィークリーマンションなどは、一時的な滞在先とみなされ、生活の本拠としての住居地届出が受理されない場合があります。
- 実態の伴わない住所: 実際に居住していない知人宅や会社所在地を住所として届け出ることは、虚偽届出とみなされるリスクがあるため、避けるべきであると考えられます。
3. 手続きの簡素化(ワンストップ化)
現在、住居地の届出は住民基本台帳法に基づく「転入届・転居届」と一体化されています。
通常、市区町村の窓口で住民票の転入・転居手続きを行う際に在留カードを提示することで、入管法上の住居地届出も同時に完了したとみなされます。
4. 届出が遅延した場合の対応
万が一、14日の期限を過ぎてしまった場合でも、速やかに届出を行うことが重要です。
- 遅延理由書の提出: 市区町村の窓口や入管当局から、遅延した理由の説明を求められることがあります。病気や災害など「正当な理由」がある場合は、それを証明する資料を準備することが望ましいです。
- 正当な理由の判断: 仕事が多忙であった、あるいは制度を知らなかったといった理由は、一般的に「正当な理由」としては認められにくい傾向にあります。
5. 在留カードを所持しない場合の特例
入国時に空港等で在留カードが交付されず、パスポートに「在留カードを後日交付する」旨の記載がなされた場合でも、住居地の届出義務は発生します。
この場合、パスポートを持参して市区町村で手続きを行うことで、後日、届け出た住居地宛てに書留郵便で在留カードが送付される仕組みとなっています。
6. まとめ
住居地の届出手続きは、日本での適法な在留を継続するための基本的な義務です。14日という短い期限設定に加え、届出の懈怠が在留資格の取り消しという重大な結果を招く可能性がある点に十分な注意が必要です。
外国人本人だけでなく、受け入れ企業の担当者においても、入国直後や転勤時の手続き漏れがないよう、管理体制を整えておくことが肝要であると言えます。
