ホーム/コラム/外国人雇用・イミグレーション/外国人雇用の法務 ~受入れ検討時~【総論】
シェア
池田 孝太 Kota Ikeda

この記事の著者

池田 孝太 Kota Ikeda

コンサルタント  / 申請取次行政書士

外国人雇用の法務 ~受入れ検討時~【総論】

2023年8月15日

Q1 外国人に働いてもらうには具体的にどのような手続きが必要ですか。

A 雇用する外国人が海外にいるのかそれとも国内に在留しているのかで手続きが変わります。

【海外】

海外にいる外国人を雇用する場合の手続きは以下の通りです。

(1)まずは、外国人(被雇用者)の代理人である会社の職員や出入国管理局へ取次の権限のある行政書士などが日本の出入国在留管理局(法務省管轄)に在留資格認定証明書交付申請/Certificate of Eligibility(俗に「CoE」と言います)の申請を行い、在留資格認定証明書の交付を受けてください。

ただし、この申請は誰でもできるわけではありません。申請を行うことができるのは、法律で定められた代理人や取次権限のある行政書士など特定の人のみです。

なお、外国人本人が短期滞在で日本へ来て直接申請を行うなども可能ですが、結果を知らせる通知は日本国内にしか郵送されません。

(2)2023年3月17日より在留資格認定証明書を電子メールで受け取ることが可能となりました。
このメールを海外の外国人(被雇用者)へ転送することで、査証(VISA)申請を行うことができます。査証が発給されたら、日本で在留カードを受け取ってください。

ちなみにVISAというのはこの査証のことをいい、日本で取得するものはいわゆるVISAではなく、在留資格認定証明書です。

※2023年3月17日以前は、海外にいる外国人へ在留資格認定証明書(CoE)を送り、在外日本大使館/領事館にて査証(VISA)申請方法しかありませんでしたしておりました。

【国内】

国内に在留していてすでに何らかの在留資格を持っている外国人を雇用する場合は、必要に応じて在留資格変更許可申請もしくは届出(所属機関等に関する届出)を行うことになります。なお、「永住者」等の資格を持っており、活動に制限がない外国人はこれらの手続きを行う必要はありません。

在留資格を変更する必要はないものの、在留期限が迫っている場合は「届出(所属機関等に関する届出)」とあわせて、在留期間更新許可申請を採用する会社を所属機関として申請してください。
なお、外国人の被雇用者が転職の際に新たな採用先でも就労可能か否かを出入国在留管理局が証明する仕組みとして、「就労資格証明書交付申請」があります。ただし、これは任意提出ですので必須書類ではありません。

【在留資格認定証明書サンプル】

Q2 外国人を雇用したり在留資格の管理をする上では、どんな点に注意が必要でしょうか。

A 気をつけなければならない点は数多くあります。例えば、厚生労働省が発した資料「外国人労働者の職場・地域における定着」には、外国人労働者の定着に向けた雇用管理改善の取組に関して有識者研究会で得られた示唆の1つとして、「外国人社員との間で起こる労働条件等のトラブル要因として、母国と日本の間の文化や雇用慣行のギャップがあげられること」とあります。

このギャップを埋める手段の一つとして、まずは各企業が労働関係法令等と税法関係法令等を遵守し外国人社員へ丁寧に説明するところから始めるとよいでしょう。

日本人の雇用と外国人の雇用で最も大きく異なるのは、適切な在留資格の取得と維持が必要という点です。企業が内定を出しても在留資格を得られなければ、日本で活動することはできません。

雇用後に在留資格の範囲を逸脱した就労があれば、程度によっては雇用している外国人は資格外活動となり、雇用している企業も不法就労助長罪に問われかねません。

出入国管理及び難民認定法(いわゆる「入管法」)や関連法令を正確に理解することは、外国人雇用において不可欠といえます。企業で対処することが難しい場合は、外部の専門家による意見を取り入れられる体制を整えることをお勧めいたします。

Q3 外国人を雇用した場合、出入国在留管理局に対する手続きの他に何をする必要がありますか。

A まずは採用を決定した外国人が、自社で就労するにあたって適正な在留資格を所持しているか確認が必要です。この確認は面前で行いしっかりと本人であることを確認することが望ましいです。

またこの在留カード自体が真正なものであることを確認する方法として、出入国在留管理庁のホームページからダウンロード可能な「在留カード等読取アプリケーション」があります。これを用いることで、在留カード及び特別永住者証明書が真正なものであることを認証するとともに、在留カード等のICチップ内に記録された氏名等の情報をもとに在留カード等の券面上に印字されている内容をそのまま画面に表示することができます。

もし適正な就労資格を有していない者や不法残留者等を雇用し活動させ報酬を与えてしまった場合、会社は不法就労助長罪に問われる可能性があり、該当した場合は「3年以下の懲役若しくは3百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています。またこの処罰は、これらに該当することを知らなかったことを理由として免れることができない規定であることに注意してください。

なお、外国人を雇用した際には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(「労働施策総合推進法」)により事業主に外国人雇用状況の届出義務があります。

【在留カード等読取アプリケーション 情報入力画面】

【在留カード等読取アプリケーション 正常な在留カードの読取結果画面】

【在留カード等読取アプリケーション 異常な在留カードの読取結果画面】

Q4 高校で英語を教えている外国人が、英会話講師として一般企業に就職することとなりました。注意すべきことはありますか。

A 高校教師と英会話講師は、同じ英語を教えるという業務内容ではありますが、このケースの場合は在留資格の変更が必要になります。各在留資格でどのような活動を行うことができるのかを確認するためには、「出入国管理及び難民認定法の別表」を参照してください。

「教育」の項目を見ると、「本邦の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編成に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他教育をする活動」とあります。

このことから、高校で英語を教える活動は「教育」の在留資格が適切と判断されます。

一方、一般企業で英語を教える活動は各種学校やそれに準ずる機関での英語教育には該当しないため、「教育」での在留資格を取得することはできず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更する必要があります。

大学で英語を教える活動を行う場合はどうでしょうか。

これについては、入管法別表第一の「教授」には「本邦の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校において研究、研究の指導又は教育をする活動」とあります。このことから、大学での英語教育職に就く場合は「教授」の在留資格が適切といえます。

Q5 人材紹介会社や人材派遣会社を利用して外国人を雇用する場合の留意点について教えてください。

A 留意点は大きく二つ挙げられます。一つは、利用する人材紹介会社や人材派遣会社が適法に許可を取得しているかどうか、そしてもう一つは、紹介・派遣される外国人が就労するのに適切な在留資格を有しているかです。

新たに在留資格を取得して外国人を雇用する場合、人材紹介と人材派遣では在留資格関連手続に以下のような違いが生じます。

人材紹介人材派遣
手続き上の所属機関はどこか当該外国人を雇用する企業派遣元会社
どの会社の適正性等が審査されるか当該外国人を雇用する企業派遣元会社・派遣先企業
どの会社での業務内容が審査されるか当該外国人を雇用する企業派遣先企業

上記の表のとおり、人材派遣を利用する場合の在留資格関係手続では、派遣元会社と派遣先企業それぞれが出入国在留管理局の審査対象となります。

このため、派遣元会社と派遣先企業の双方の書類が必要になります。

Q6 転職により当社へ入社してきた外国人がいます。採用に当たり留意すべき点があれば教えてください。

A まずは、現在の在留資格でそのままその外国人を雇用することが可能か確認してください。在留カード表面の「就労資格制限の有無」欄に「就労不可」の記載がある場合、原則として雇用することはできません。「就労不可」の記載がある在留カードの例としては、「留学」の在留カードが挙げられます。

ただし、在留カード裏面の「資格外活動許可欄」に「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」もしくは「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」の記載がある場合はその範囲内で就労が可能です。

また在留カード自体の真正性を確認するために、在留カードの原本を本人の面前で確認することやアプリケーションを使用することなども望まれます。これについての詳細はQ3をご参照ください。

なお、在留カードを所持していなくても就労可能なケースもあります。

例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有しているものの、在留期間が「3月」の場合など、非常に稀なケースです。このケースでは、新たに在留カードは付与されず、パスポートに「技術・人文知識・国際業務」の証印シールが貼られることになります。雇用者はこのシールの有無で雇用可能かどうかを確認することになります。

【在留カードサンプル 表面】

【在留カードサンプル 裏面】

Q7 行政書士等法律の専門家に頼むメリットは何ですか。

A メリットは様々ですが、コンプライアンスも一例です。ビジネスの場においてコンプライアンスという言葉はすっかり耳慣れたものになってしまっており、感度が鈍くなっている方も多いと思います。

例えば雇用している外国人労働者の職務内容を変更する際に資格外活動等不法就労活動をさせてしまうことや、それによって企業側が不法就労助長罪に問われるといった事態を避けることができます。

不法就労活動を行ってしまった外国人は「1年以下の懲役若しくは禁固若しくは200万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁固及び罰金を併科する」こととして刑罰の適用を受けます(入管法第73条)。

またこれらを専ら行っていると明らかに認められる場合には、「3年以下の懲役若しくは禁固若しくは300万円以下の罰金、又はその懲役若しくは禁固及び罰金を併科する」として、より重い刑罰の適用があります(入管法第70条第1項第4号)。

一方、不法就労助長罪に問われた企業は「3年以下の懲役若しくは3百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」となっています。併せて出入国在留管理局での該当企業に対する審査が難しくなる可能性も考えられます。

また在留資格関連手続きを内製化している企業も多いと思います。業務を属人化している場合、担当者の人事異動や退職などによってある日突然対応できなくなる場合がありますので、在留資格関連業務も外注化してしまうというクライアントも多くおります。

すべての事案について専門家への相談が必要というわけではないですが、困ったときに頼れる相談先を確保しておくことも良いのではないでしょうか。

お問い合わせ