日本国内で、外国特有の料理を提供するレストランや、特殊な加工技術を要する工場などで外国人を雇用する場合、検討されるのが在留資格「技能」です。
しかし、「技能」は数ある就労ビザの中でも、特に「実務経験」の証明が厳格に求められる在留資格の一つといわれています。また、近年新設された「特定技能」と名称が似ているため、混同されるケースも少なくありません。
本記事では、在留資格「技能」に該当する9つの具体的な職種分野と、申請の許可・不許可を分ける重要なポイントについて解説します。
1. 在留資格「技能」とは
在留資格「技能」とは、「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務」に従事する外国人のための在留資格です。
簡単に言えば、「日本人の代替が困難な、外国特有のスキルを持つ職人や専門家」を受け入れるための資格といえます。そのため、単なる労働力不足を補うための単純労働や、未経験者を受け入れることは原則として認められません。
2.「特定技能」との違い
よく似た名称に「特定技能」がありますが、これは人手不足の解消を主目的とした別の制度です。「技能」ビザは、あくまでも高度な熟練した技術(プロフェッショナル)に対して付与される点が大きな違いです。
在留資格「技能」に該当する9つの職種分野
出入国管理及び難民認定法(入管法)の基準省令では、在留資格「技能」に該当する活動として、以下の9つの分野が定められています。
もっとも代表的なものは「調理師」ですが、それ以外にも多岐にわたる専門分野が含まれます。
1. 調理師(外国料理の調理)
「技能」ビザの中で最も申請件数が多い分野です。中華料理、フランス料理、インド料理、タイ料理など、外国等の独特の料理を調理する技能が対象です。 ※日本料理や、日本独自に発展したラーメン、カレーライスなどは、原則として対象外となる傾向にあります。
2. 建築技術者(外国特有の建築・土木)
日本にはない、外国特有の様式による建築や土木工事を行う技能です。 (例:ゴシック建築、中国式建築の修復や内装工事など)
3. 外国製品の製造・修理
日本国内では一般的ではない、外国特有の製品を製造したり修理したりする技能です。 (例:ヨーロッパ特有のガラス製品の製造、ペルシャ絨毯の修理など)
4. 宝石・貴金属・毛皮の加工
宝石、貴金属、毛皮の加工を行う熟練した技能です。一般的な加工技術ではなく、高度かつ専門的な技術が求められます。
5. 動物の調教
動物の調教を行う技能です。 (例:ショービジネスのための動物調教、競馬の厩務員など)
6. 石油探査・地熱開発等の掘削
海底鉱物探査のための海底掘削や、地熱開発のための掘削を行う技能です。高度なボーリング技術などが該当します。
7. パイロット(航空機の操縦)
航空機の操縦を行う技能です。定期運送用操縦士などの資格を持ち、一定の飛行時間を有する場合などが該当します。
8. スポーツ指導者
スポーツの指導を行う技能です。 (例:オリンピック出場経験のあるコーチ、武術の指導者など) ※プロスポーツ選手として試合に出場する場合は「興行」ビザになるため、区別が必要です。
9. ソムリエ(ワイン鑑定等)
ワインの鑑定や評価、提供を行う技能です。国際的なソムリエコンクールでの入賞歴など、高い実績が求められます。
3. 申請における最大の壁「実務経験年数」の要件
在留資格「技能」の許可を得る上で、最もハードルが高いとされるのが「実務経験年数」の立証です。
職種ごとに求められる経験年数は異なりますが、原則として「10年以上の実務経験」が必要とされるケースが大半です。
4. 職種ごとの必要経験年数(目安)
| 職種分野 | 必要な実務経験年数(原則) |
|---|---|
| 1. 調理師 | 10年以上(※一部特例あり) |
| 2. 建築技術者 | 10年以上(当該建築技術者から指導監督を受けて従事する者 は5年) |
| 3. 外国製品の製造・修理 | 10年以上 |
| 4. 宝石・貴金属・毛皮加工 | 10年以上 |
| 5. 動物の調教 | 10年以上 |
| 6. 掘削技術者 | 10年以上 |
| 7. パイロット | 250時間以上の飛行経歴など |
| 8. スポーツ指導者 | 3年以上(五輪等の出場経験者は免除の場合あり) |
| 9. ソムリエ | 5年以上(かつ国際的な実績が必要) |
5. 教育機関での期間も「経験年数」に含まれる
上記の「10年」には、外国の教育機関でその専攻科目を学んだ期間を含めることが可能です。 例えば、本国の調理師専門学校で2年間学び、その後レストランで8年間勤務していれば、合計10年となり要件を満たす可能性があります。
重要な例外:タイ料理人の「5年特例」など
日本とタイの経済連携協定(EPA)に基づき、タイ料理人に関しては、一定の条件(初級以上の国家資格取得など)を満たせば「5年以上の実務経験」で許可される特例があります。このように、国籍や協定によって要件が緩和される場合があるため、事前の調査が重要です。
6. 審査をクリアするための3つの重要ポイント
在留資格「技能」を申請する際、入管(出入国在留管理庁)は以下のポイントを厳格に審査する傾向にあります。
1. 実務経験の「証明書」の信頼性
申請人が「10年の経験がある」と口頭で説明するだけでは認められません。過去に勤務していた店舗や企業から「在職証明書」を取得する必要があります。 在職証明書には、勤務期間、職種、具体的な業務内容などが記載されている必要があります。過去の勤務先が倒産している場合などは立証が困難になるため、注意が必要です。
2. 受け入れ機関(店舗・企業)の業務内容との整合性
採用する日本の店舗や企業で、申請人の持つ技能を十分に発揮できる環境があるかが問われます。
- 調理師の場合: 本格的な外国料理のメニュー(コース料理やアラカルト)が提供されているか。ランチの定食や、解凍して温めるだけの簡易な調理では、「熟練した技能」を要するとはみなされない可能性があります。
- 店舗の設備: タンドール釜(インド料理)や中華鍋用の高火力コンロなど、専門的な設備が整っているかも確認される場合があります。
3. 日本人と同等以上の報酬額
外国人であることを理由に、不当に低い賃金で雇用することは認められません。同じ職務に従事する日本人従業員がいる場合は同等以上、いない場合でも賃金センサスなどを参考に、適正な報酬額を設定する必要があります。
7. まとめ
在留資格「技能」は、プロフェッショナルな外国人を雇用するための重要な資格ですが、その分、審査基準は厳格です。特に以下の点がポイントとなります。
- 9つの職種区分に明確に該当していること
- 実務経験年数(主に10年)を公的な書類で立証できること
- 受け入れ先に、その技術を活かせる業務内容と設備があること
「技能」ビザは、提出書類の不備や、過去の経歴の立証不足によって不許可になるケースも見受けられます。採用計画をスムーズに進めるためには、最新の法令に基づいた正確な準備が求められます。
