商業登記関係 株式会社の解散決議と解散日
解散の事由
株式会社は、次に掲げる事由によって解散すると会社法第471条にはあります。
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散の事由の発生
- 株主総会の決議 他
3.株式会社の決議とは、普通決議の要件ではなく特別決議の要件を満たす必要があります。特別決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う決議のことをいいます(会社法第309条2項)。
上記の解散事由のうち、定款に存続期間や解散の事由を定めている会社はほとんどありませんので、解散原因のほとんどは株主総会の決議によるものだと思います。
(解散の事由)
会社法第471条
株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第824条第1項又は第833条第1項の規定による解散を命ずる裁判
株主総会の決議と効力発生日
株主総会において、取締役の選任や目的変更などの定款変更の効力発生日を、期限を付けて決議がされることも少なくありません。
例えば、平成28年7月1日開催の株主総会において、平成28年7月10日付けで定款第2条の会社目的を次のように変更する、というような決議をすることも可能であり、登記申請も「平成28年7月10日目的変更」というように定款変更の効力発生日を10日とします。
登記申請は7月10日以降にならないとできません。
解散決議と解散日
効力発生日を決議日とは別の日と定めて決議を行うことそれ自体は法律に反してはいませんが、会社の解散にかかる登記実務においては、解散を決議した株主総会の開催日と効力発生日(解散日)があまり長く空いてしまっていることは良く思われません。
1つの目安として、株主総会決議日と解散日の間が2週間空いていると補正の対象となる可能性が高くなるようです。
法務局の方が書いているブログのこちらの記事(資格者代理人の登記申請に係る補正について)にも【勉強不足に起因すると思われる補正内容】として、「期限付解散で、決議日と解散の日が2週間を超えている。」とありますね。
2週間とされている理由
2週間とされている理由としては、あまりにも株主総会決議日と解散日が空きすぎてしまっていると、本来解散が例えば2ヶ月後に予定されている会社であるのにその旨の登記がされていない会社が存在することは、そのことを知らずに当該会社と取引をする第三者を十分に保護することができなくなってしまうからというものがあります。
株主総会決議日に解散をした場合でも、解散日から最大で2週間後にその登記を申請すればよいとされていますから、「決議日=解散日」でも解散日から2週間後に登記申請がされることも問題ない、こととのバランスをとっているようではあります。
株主が揃うタイミングがこの日しかない
例えば株主が3名(ABC)が40株ずつ持っている、発行済株式総数が120株の会社があったとします。
平成28年4月1日において、何らかの事情でABが平成28年4月2日から海外に転勤することになり(以降全く連絡を取ることができなくなってしまう場所へ!)、何らかの事情で当該株式会社を平成28年6月30日付で解散する必要が生じたとします(こんなことあるんですかね)。
急いで平成28年4月1日の夜にでも集まって、あるいはテレビ電話か何かで株主総会を開催し、解散の効力発生日を平成28年6月30日とする決議をしても、決議日から解散日まで約3ヶ月も空いていますので、登記申請が受理される可能性は低いといえます。
ではどうするか。
解散の事由として「定款で定めた存続期間の満了」というものがあります。つまり、平成28年4月1日の株主総会において、存続期間の満了日を定める定款変更決議をするという方法があります。ただし、存続期間の設定は登記事項ですので、平成28年4月1日存続期間の設定登記申請を株主総会開催日から2週間以内にする必要があり、別途平成28年6月30日解散の登記を申請します。ただ解散をするだけより登録免許税が3万円追加でかかってしまいます。
(これ、存続期間の設定の定款変更にかかる効力発生日を平成28年6月20日にするという決議をした場合、その登記申請は受理されるのでしょうか。。。)
他には、会社法第319条1項の株主総会の書面決議を利用し、ABの同意書は先に受領しておいてCの同意書は6月20日くらいまで会社に提出するのを待ってもらっておくという方法でも大丈夫でしょうか。Cの同意書が会社に届いた日に株主総会決議があったとみなされるため、平成28年6月20日(みなし)株主総会開催、平成28年6月30日株主総会の決議によって解散となり、決議日から2週間以内という期限は守っていることになります。
しかしよほどの事情がない限り、なるべく解散決議にかかる株主総会開催日と解散日は同日あるいは近づけるようにしてもらっています。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。