商業登記関係 相談事例 【相談事例】合同会社に新たに出資をしますが全て資本剰余金に計上します。出資をした証拠があると安心できるのですが…。
合同会社への出資と登記事項
合同会社には新たに出資をすることができ、出資された金銭等は資本金又は資本剰余金に計上されます(会社計算規則第31条)。
貸付ではなく出資をした人は会社法上の社員(従業員ではありません)となり、定款の定めに基づき当該社員は業務執行社員となったり代表社員となったりします。
ところで、合同会社の登記事項は会社法に定められていて、当該事項は次のとおりです(会社法第914条)。
– 商号
– 本店及び支店の所在場所
– 存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
– 資本金の額
– 合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称
– 合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所
– 合同会社を代表する社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所
– 公告方法
合同会社への出資と業務執行社員
合同会社に新たに出資をした人は必ず会社法上の社員になります。
当該社員が業務執行社員となるかは、合同会社の定款の定め次第であり、社員の全員が必ず業務執行社員となるわけではありません。
出資はするけど業務執行を行いたくない人がいるときは、定款に業務執行社員の氏名を直接記載する等の方法によって、特定の社員のみを業務執行社員とします。
なお、原則として業務執行社員ではない社員は代表社員となることはできません(会社法第599条1項)。
登記事項に変更が生じないパターン
合同会社に対して出資がされたときに、当該原因によって登記事項に変更が生じないパターンがあります。
それは、
- 出資した額の全てを資本剰余金に計上する
- 当該出資をした社員が業務執行社員にも代表社員にもならない
パターンです。
出資に関する書類を作成する
合同会社の変更登記を申請するときは、その添付書類を法務局へ提出しなければならないためそれらの書類を作成します。
出資により資本金も増え、当該出資者が業務執行社員となり代表社員ともなる場合は、一例として次のような書類を作成して法務局へ提出します。
- 総社員の同意書
- 業務執行社員の決定書
- 定款
- 払込証明書
- 資本金計上証明書
出資をしたことを証明したことの証拠を残す
合同会社の場合は、上記のとおり出資をしても登記事項に変更が生じないケースがあり、このケースに該当するときは登記に使わないから…と書類の作成が軽視されがちです。
友人や知り合いに彼らが経営する合同会社への出資をお願いされて、信頼関係の下、お金を渡すだけのケースもあるのではないでしょうか。
もし100万円単位のものを手渡しで行っていたとしたら、これが後の紛争の種になってしまうかもしれません。
合同会社の金融機関の口座に振り込んだとしても、それが出資ではなく借入である等とお金の性質についてトラブルになる可能性もあります。
そうならないように、出資をする側も出資を受ける側も書面で残しておくことがとても大切ではないでしょうか。
どのような書面を残すか
「出資として支払ったこと」「相手が受け取ったこと」「業務執行社員とはならないこと」「社員としての権限が確認できること」が明確となるような書面を残すことが望ましいのではないでしょうか。
定款で出資の割合によらない損益の分配方法が定められていたり、特定の社員のみが定款変更を行えるように定められていた場合、後でこんなはずじゃなかった…となってしまう可能性もあります。
仮に私が合同会社へ出資をするなら、次のような書類を準備し(あるいはしてもらい)、証拠として残しておきます。
- 投資契約書
- 総社員の同意書
- 業務執行社員の決定書
- 定款(変更前、変更後)
- 払込証明書
出資は振込みで行う
出資の仕方に法律上の決まりはありません。
出資金の一部を資本金に計上して資本金の額の変更登記を行うときは、(登記手続きのために)合同会社の金融機関の口座に振り込む方法により行います。
登記はしないからと出資金を代表者の個人口座に振り込むことを要求されたり、手渡しを要求されたときは合同会社の口座に振込みたいと要求した方が無難でしょうか。
もし手渡しで現金を渡すときは、少なくとも受領証はもらっておきましょう。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。