商業登記関係 合同会社の剰余金を資本金へ組み入れる
合同会社の資本金と剰余金
合同会社には資本準備金・利益準備金がありません。
金銭出資、現物出資に関わらず出資された額のうち、資本金として計上しなかった額は全て資本剰余金となります。
3億円の出資をして設立された合同会社でも、資本金0円、資本剰余金3億円とすることができ、登記簿上は資本金0円の会社となります(資本剰余金は登記事項ではありません)。
株式会社との比較
この点、株式会社の場合は出資された額の2分の1以上は資本金に計上しなければならないため、上記の例では1.5億円は少なくとも資本金として計上する必要があります。
株式会社の場合、その設立登記の登録免許税として1.5億円×1000分の7=105万円かかることになりますが、合同会社の場合は資本金を約850万円以下とすれば6万円となります。
合同会社の剰余金を資本金へ組み入れる
合同会社は業務執行の一環として、剰余金を資本金へ組み入れることができます。
この場合の剰余金は、資本剰余金であれば可能ですが利益剰余金は資本金へ組み入れることができません(会社計算規則第30条)。
なお、合同会社と異なり、株式会社においては利益剰余金を資本金へ組み入れることも可能とされています(会社計算規則第25条)。
業務執行社員の決定
剰余金の資本金への組み入れは、新しく出資がされるわけではなく純資産の部の組み換えになりますので、合同会社がそれを行う際は、定款に別段の定めのない限り、業務執行社員の決定だけで済みます。
崩しやすい資本剰余金を、崩しにくい資本金に計上する手続きですので、債権者保護手続きも不要です。
業務執行社員が複数いるときは、業務執行社員の過半数の決定により、資本剰余金のうちどれだけ資本金へ割り振るかを決定します。
登記の添付書類
合同会社が資本剰余金を資本金へ組み入れる登記申請の添付書類は次のとおりです。
- 業務執行社員の決定書
- 資本金の計上証明書
登録免許税
資本金の額が増加するときは、それに応じた登録免許税を納めなくてはなりません。
剰余金の資本組み入れに係る登記申請の登録免許税は、増加する資本金の額に1000分の7を乗じた金額(この金額が3万円以下の場合は3万円)です。
5000万円を資本金へ組み入れる場合の登録免許税は、5000万×7/1000=35万円となります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。