相続関係 遺言関係 国庫に帰属する相続財産が増加しているというお話と遺贈寄付
国庫に帰属する相続財産の増加
相続が発生し、被相続人の相続人がいない場合、一定の手続きを経た後に、当該相続財産は国庫に帰属します(民法第959条)。
先日、相続人不存在により国庫に帰属する相続財産が増加しているというニュースがありました。
財産を残して死亡したものの相続人がおらず、換金の末に国が引き取った遺産の額が昨年度は603億円に達し、わずか4年の短期間で約1.4倍に急増したことが4日、最高裁への取材で分かった。
産経新聞 THE SANKEI NEWS
「〈独自〉相続人なく遺産漂流 国へ603億円、少子高齢化時代反映」
https://www.sankei.com/west/news/210204/wst2102040011-n1.html(2021年2月4日)
相続人がいない
相続人がいないとは、子や孫、配偶者、父母、祖父母、兄弟姉妹、叔父や叔母等の法定相続人が被相続人死亡時に存在していないことを指します。
加えて、法定相続人はいるけれども、法定相続人全員が相続放棄をした場合も、相続人がいないことになります。
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされるためです(民法第939条)。
相続人不存在と相続財産の帰属
ここでは詳しく述べませんが、相続財産は、相続人がいない場合、次の流れで最終的に国庫に帰属します。
- 利害関係人等の請求による相続財産管理人の選任
- 相続債権者及び受遺者に対する弁済
- 相続人の捜索の公告
- 特別縁故者に対する相続財産の分与
- 残余財産の国庫への帰属
遺言をのこす
自分の財産が国庫に帰属することは決して悪いことではありません。
一方で、自分の財産をのこしたい相手がいる場合は、その想いを実現することが望ましいのではないでしょうか。
自分が亡くなった後、その財産をのこしたい相手に受け取ってもらう方法の一つに「遺言」があります。
遺言で受遺者を指定することにより、相続財産は国庫に帰属することなく、受遺者に帰属させることができます(なお、遺言で受遺者が指定されていない財産は国庫に帰属する可能性が生じます)。
口約束はNG
法定相続人がいない人が「私が死んだら私の財産をあげる。」と口約束するだけでは、原則として、当該財産を相手が承継することは難しいといえます。
確実に相手に相続財産を承継してもらうのであれば、遺言をのこすに限ります。
遺言は要式が決まっており、それを満たさないと無効になる恐れがある行為であり、遺言者の死後に遺言者が修正することができないという特徴があります。
遺言が無効とならないよう、また、遺言が誰にも発見されないという事態が生じないよう、遺言は専門家に相談することをお勧めします。
遺贈寄付
遺贈寄付という言葉をご存知でしょうか。
遺言に記載することによって、自分の財産を、自分が亡くなった後に、自分がお世話になった、あるいは支援したい団体等に寄付することが可能です。
寄付したい団体等が既に決まっているのであれば、当該団体に寄付する旨を遺言に記載します。
予備的に、当該団体等が遺言者死亡時に、消滅してしまった場合に備えて、次の寄付先も記載しておいた方がいいかもしれません。
支援したい分野は決まっているけど、具体的にこの団体に寄付したいという寄付先が見つからない場合は、一般社団法人日本承継寄付協会を通して、そのような団体を紹介することもできます。
もちろん、遺贈寄付に関して紹介料等はありませんので、寄付したい金額が全額、寄付先の手に渡ります(重要)。
何度も申し上げますが、遺言は要式に不備があると無効になる恐れがあります。
遺贈寄付を検討されている方は、弊社または一般社団法人日本承継寄付協会にご相談ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。