相続関係 遺言関係 遺言でできること、記載例(生命保険金の受取人変更)
法定遺言事項
遺言には、(基本的には)何でも記載をすることはできますが、遺言によって法的効力を持たせることができる事項は法律で定められています。この法的効力を持たせることができる事項を法定遺言事項といいます。
法定遺言事項は次のとおりです。
・認知
・未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
・推定相続人の廃除及び取消
・相続分の指定及び指定の委託
・遺産分割方法の指定及び指定の委託
・特別受益の持戻しの免除
・相続人相互の担保責任の指定
・遺留分減殺方法の指定
・遺贈
・一般財団法人設立のための定款作成
・信託法上の信託の設定
・遺言執行者の指定及び指定の委託
・祭祀主催者の指定
●生命保険金受取人の変更(保険契約締結の時期によっては不可)
こちらの記事もご参照ください。 ⇒ 遺言事項について
生命保険金の受取人の変更
平成22年4月1日から施行された保険法において、遺言によって生命保険金の受取人を変更することができることが明文化されました。
ただし、保険契約者の相続人が保険者に通知しなければ、保険受取人の変更を保険者に対して対抗することができないとされており、また、被保険者の同意が必要です。
保険法第44条(遺言による保険金受取人の変更)
保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。
平成22年4月1日より前に締結された保険契約
平成22年4月1日より前に締結された保険契約については、保険金の受取人変更に関する(平成22年4月1日から施行された保険法の)当該規定は適用されないとされています。
しかし、平成22年4月1日以前より前に締結された保険契約においても、保険会社及び保険契約の内容によっては遺言による保険金の受取人変更を受け付けられることもありますので、事前に保険会社に確認することをお勧めします。
遺言によって保険金受取人を変更ができない状態・条件にも関わらず、遺言に保険金の受取人変更の旨を記載してしまうと相続人同士の争いの種となってしまいます。
生前に保険金の受取人を変更
前述のとおり、条件を満たせば遺言によって保険金の受取人変更も可能ですが、遺言の形式の有効性、内容の有効性、条件の有効性、意思能力の有効性、自筆証書遺言の紛失リスクなどを考慮すると、保険金の受取人を変更したいのであれば特別の事情がない限り、生前に変更しておいた方が確実であるといえます。
遺言によって生命保険金の受取人を変更する場合の遺言記載例
遺言によって生命保険金の受取人を変更する場合の遺言記載例は次のとおりです。
記載例
第1条 遺言者は、遺言者を保険契約者及び被保険者として、ABC生命保険株式会社と平成25年8月10日に締結した生命保険契約(保険証券番号1234567)について、その生命保険金の受取人を長女鈴木花子に変更する。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。