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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

取締役会の書面決議、みなし決議(会社法370)に関するよくあるご質問

取締役会の開催

取締役会は、次に掲げる職務を行うため、定期的に開催されます(会社法第362条2項)。

  1. 取締役会設置会社の業務執行の決定
  2. 取締役の職務の執行の監督
  3. 代表取締役の選定及び解職

また、代表取締役等は3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(会社法第363条2項)。

取締役会の書面決議、みなし決議

株式会社は、議決に加わることができる取締役全員が、取締役会の決議の目的である事項について書面又は電磁的記録により同意をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます(会社法第370条)。

≫みなし取締役会(みなし決議・書面決議)-会社法第370条

(取締役会の決議の省略)
会社法第370条

取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

これは書面決議あるいはみなし決議と呼ばれていますが、この方法は取締役の数が比較的少なく(3-4名)、議論が不要な決議事項しかない場合によく利用されています。

最近では、新型コロナウイルスの影響もあってか、人と人が接触しない方法としてみなし決議で取締役会を成立させる会社が増えている印象です。

取締役会のみなし決議に関するQ&A

登記手続きをご依頼いただいた際、みなし決議を用いた取締役会議事録を良く目にするようになりましたので、よくある質問とその回答をまとめました。

取締役会をみなし決議で成立させることをご検討されている法人のご参考になれば幸いです。

以下、単に「みなし決議」と記載しているときは、取締役会のみなし決議のことを指しています。

(みなし決議からは話が逸れますが、テレビ会議システムを用いて取締役会の決議を行う会社は格段に増えました。)

定款にみなし決議の定めがありません。その定めは必要ですか?

みなし決議を行う場合は、定款にみなし決議を行うことができる旨の定めが必要で、当該定めがない会社はみなし決議を行うことができません

定款にその旨の定めがなくても書面又は電磁的記録による決議を成立させることができる株主総会の決議とは、その点が異なります(会社法第319条1項)。

定款にみなし決議の定めがある会社でも、みなし決議を行うかどうかは会社の自由なので、とりあえず定款に当該定めを置いておいても良いのではないでしょうか。

みなし決議の定めはありますが、電磁的記録の記載がありません。

取締役会の目的事項に関する提案につき、議決に加わることができる取締役の全員が書面により同意の意思表示をしたとき~、のようにみなし決議を書面による同意に限った形で定めている会社が稀にあります。

この場合、書面によるみなし決議は可能ですが、電磁的記録(メール等)によるみなし決議を行うことはできません。

電磁的記録によるみなし決議を行うのであれば、電磁的記録によるみなし決議を行うことができる旨を定款に定める必要があります。

定款にみなし決議の定めを設ける手続きは?

定款変更の手続きは、株主総会の特別決議によって行います。

定款にどのような定め方をすればいいですか?

一例は次のとおりです。

(取締役会の決議の省略)
第●●条 当会社は、取締役が提案した決議事項について取締役(当該事項につき議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。ただし、監査役が異議を述べたときは、この限りでない。
(注)監査役に代えて会計参与を設置する場合及び会計監査限定監査役の場合には、ただし書は必要ない。
≫会社等定款記載例(東京公証人会)

株主総会で定款変更をした後、株主総会後すぐにみなし決議をしても大丈夫でしょうか。

定款変更の効力が生じているのであれば、問題ありません。

定時株主総会で定款変更+取締役の任期満了による再任決議をし、その後の代表取締役選定を行う取締役会の決議をみなし決議で行うことは可能です。

みなし決議と持ち回り決議は違いますか?

こちらのページをご確認ください。

≫取締役の持ち回り決議と取締役会の書面決議

取締役会の決議の目的である事項を提案をするための期限はありますか?

期限はありません。

提案をした日に取締役全員から書面又は電磁的記録による同意を得られれば、その日に取締役会の決議があったとみなすことが可能です。

ところで、取締役会を招集する者は、取締役会の日の1週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役及び業務監査権限のある各監査役に対してその通知を発しなければなりません(会社法第368条1項)。

これは、取締役会を実際に開催する場合の話ですので、みなし決議に関する提案を発する場合は当てはまりません。

監査役の同意も必要ですか?

監査役の同意は、みなし決議の成立要件ではありません。

一方で、監査役が異議を述べたときはみなし決議が成立しませんので、実務的には、監査役にも取締役会の目的事項を通知し、確認書等に署名又は記名押印してもらうことが多いでしょう。

なお、会計監査権限しかない監査役には取締役会への出席義務がありませんので、みなし決議において異議を述べることができません(確認書等も不要です)。

議決に加わることができない取締役とは?

取締役会の決議事項について、特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(会社法第369条2項)。

特別の利害関係を有する取締役とは、例えば次のようなケースです。

  • 代表取締役Aの解任決議につき、当該取締役A
  • 取締役Bが保有する株式を第三者に譲渡することを承認する決議につき、当該取締役B
  • 会社が所有する土地を取締役Cに売却する利益相反行為承認決議につき、当該取締役C
報告事項も省略できますか?

取締役及び業務監査権限のある監査役の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会へ報告することを要しません(会社法第372条1項)。

これは、みなし決議とは関係のない話ですので、定款の規定の有無に関係なく行うことができます。

取締役は3ヶ月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならず(会社法第363条2項)、当該報告については、上記「報告の省略」で済ませることができません(会社法第372条2項)。

みなし取締役会議事録の記載事項は?

みなし決議をしたときの取締役会の記載事項は次のとおりです(会社法施行規則第101条4項1号)。

  1. 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
  2. 上記事項の提案をした取締役の氏名
  3. 取締役会の決議があったものとみなされた日
  4. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

報告の省略を行ったときの取締役会の記載事項は次のとおりです(会社法施行規則第101条4項2号)。

  1. 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
  2. 取締役会への報告を要しないものとされた日
  3. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
みなし取締役会議事録の作成者は?

会社法上、取締役であれば誰でも作成者となることが可能です。

一般的には、代表取締役が作成者となり、会社実印を押すケースが多いのではないでしょうか。

なお、登記手続きとの関係で、次項もご確認ください。

みなし取締役会議事録に押す印鑑は?

会社法上、特に指定はありません。

上記のとおり、代表取締役が作成者となり、会社実印を押すケースが多いのではないでしょうか。

代表取締役の選定を証する書面としての取締役会議事録、不動産の登記に絡む利益相反行為の承認に関する取締役会議事録は、押印者やその印鑑について指定があります。

みなし取締役会議事録も登記手続きに使用できますか?

可能です。

ただし、定款にみなし決議に関する定めがあることがみなし決議を行う条件ですので、登記申請時にみなし取締役会議事録を添付するのであれば、定款の添付も求められます。

特例有限会社も取締役会のみなし決議を行うことは可能ですか?

特例有限会社に取締役会を置くことはできません。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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