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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

取締役会を廃止して取締役を1名とする手続き

取締役会、監査役を廃止して会社の機関をスリム化

平成18年5月より前は、株式会社には取締役会と監査役を置かなければならず、会社役員の最低限の人員として取締役3名と監査役1名が必要でした。

平成18年5月以降は会社の規模や機関設計にもよりますが、取締役会を置かない株式会社であれば最低取締役が1名いればOKとなっています。

会計監査人のいる会社は監査役を置かなければならない等の、会社の機関設計についてはこちらの記事をご参照ください。

≫株式会社の機関設計

会社の規模を縮小することや、取締役・監査役の最低人数を満たすために(名前だけ)joinしてもらっていた人を外すこと等を理由に、取締役会を廃止して取締役の数を1名にしたいというお話をいただくことがあります。

取締役会を廃止する

取締役会を廃止するには定款を変更する必要があります。定款を変更するには株主総会の特別決議によって行います(会社法第309条2項)。

≫株主総会とその決議要件

取締役会に関する定款の定めを廃止するときは、「取締役会を置く」旨の規定を削除するだけではなく、代表取締役の選定方法や株主総会の招集通知権者等によく記載されている「取締役会の決議によって決定」する旨の記載についても「取締役の過半数の決定」等と変更します。

そのため、取締役会を廃止するときは、定款の内容を大きく変更する必要が生じます。

なお、各取締役は取締役会を廃止しただけでは自動的に退任しませんので、取締役を減らすのであれば辞任してもらうか、取締役の任期を短縮して任期満了により退任してもらうことが必要です(なお、強制的に退任させた場合は損害賠償請求をされるリスクがあります)。

監査役を廃止する

取締役会を設置している株式会社は監査役を置かなければなりませんが、取締役会を廃止してもそれをもって自動的に監査役は廃止されません。

取締役会を設置していない株式会社も、任意的に監査役を置くことはできるためです。

監査役を廃止するには、株主総会の特別決議によって定款を変更する必要があります。

定款の監査役を置く旨の定めを変更(廃止)すると、その効力発生と同時に監査役は退任することになります。

≫監査役の設置、廃止の登記

株式の譲渡制限規定の変更する

株式の譲渡制限に関する規定が、

当会社の株式を譲渡によって取得するには、取締役会の承認を要する。

等となっている株式会社が取締役会を廃止したときは、以降取締役会で承認することはできなくなりますので、当該規定を変更しなくてはなりません。

一例として、次のように変更することが考えられます。

当会社の株式を譲渡によって取得するには、株主総会の承認を要する。
当会社の株式を譲渡によって取得するには、代表取締役の承認を要する。
当会社の株式を譲渡によって取得するには、当会社の承認を要する。

株式の譲渡制限に関する定款の定めの変更は、株主総会の決議によって取締役会を廃止するのと同じタイミングで行います。

≫株式の譲渡制限の定め

公開会社において取締役会を廃止する

公開会社は取締役会を設置しなければならず、取締役会を設置する会社は取締役3名以上、監査役1名以上を置かなければなりません。

公開会社が取締役会を廃止して取締役を1名とするときは、当該会社は非公開会社へ移行する必要があり、非公開会社へ移行するには株式の譲渡制限規定を新たに設定する方法によって行います。

株式の譲渡制限規定を新たに設定するときは、株主総会の決議によって定款を変更する必要がありますが、この決議は特別決議では足りず、特殊決議の要件を満たす必要があります。

≫公開会社が株式の全部に譲渡制限を設けて非公開会社になる手続きと登記

責任免除規定を廃止する

取締役等の責任免除規定を定款に置くには、取締役が2名以上いて、かつ監査役を設置している会社でなくてはなりません(会社法第426条1項)。

ここでいう監査役とは、業務執行に関する権限を持っている監査役のことを指します(会社法第2条9号)。

監査役を置かなくなるのであれば、取締役等の責任免除規定を定款に置くことはできなくなりますので、株主総会の特別決議で削除します。

この定款の変更(取締役等の責任免除規定の削除)は、株主総会の決議によって取締役会を廃止するのと同じタイミングで行います。

≫取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の登記

責任限定規定の廃止する

会社法第423条1項の賠償責任を負う役員が善意で重過失がない場合は、その責任の一部を免除することができる契約(いわゆる責任限定契約)を、非業務執行取締役や監査役等と締結することができる旨を定款で定めることができます(会社法第427条1項)。

非業務執行取締役や監査役等と責任限定契約を締結することができる旨の定款の定めは登記事項とされています。

取締役1名となることにより非業務執行取締役や監査役等が会社にいなくなるタイミングで、責任限定契約に関する定款の定めを定款から削除することがあります。

≫責任限定契約の登記

取締役会を廃止して取締役1名とする手続きの流れ

一例として、非公開会社である取締役会設置会社が取締役を1名とする手続きの流れは次のとおりです。

  1. 取締役会の決議
  2. 招集通知の発送
  3. 株主総会の決議
  4. 取締役の辞任
  5. 登記申請(効力発生日から2週間以内)

取締役が任期満了によって退任するときは、取締役の辞任は不要です。

取締役会を廃止して取締役1名とする登記の登録免許税

一例として、非公開会社である取締役会設置会社が取締役を1名とする登記申請の登録免許税は次のとおりです。

登記の内容
登録免許税
取締役、監査役の変更
監査役の監査の範囲の登記廃止
1万円
(資本金が1億円を超える会社は3万円)
取締役会廃止
3万円
監査役の廃止、譲渡制限規定の変更
責任限定契約の廃止
責任免除規定の廃止

3万円
合計
7万円

※各会社の内容によって手続きが異なることがあります。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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