商業登記関係 【令和3年2月15日施行】商業・法人登記における書類への押印規定の見直し
商業・法人登記と添付書類への押印
商業・法人登記申請の添付書類については、行政が発行する書類を除き、今までは会社や個人の印鑑、あるいは署名が求められてきました。
新型コロナウィルスの蔓延をきっかけに、行政手続きにおいて押印の文化が見直される流れになり、商業・法人登記手続きについても押印規定の見直しがされました。
具体的には、特定の書類を除き、2021年(令和3年)2月15日以降、会社実印等の押印が審査の対象外となりました。
≫会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて(通達)
押印規定の見直しの対象
次の3点については、押印規定が見直され押印義務が無くなりました。
- 登記簿の附属書類の閲覧の申請書
- 事業を廃止していない旨の届出
- 再使用証明申出書
登記簿の附属書類の閲覧の申請書
利害関係人は登記簿の附属書類の閲覧請求をすることができますが、今までは登記簿の附属書類の閲覧の申請書に申請人又はその代表者若しくは代理人が署名し、又は押印しなければならないとされていました。
今回の押印規定の見直しの一環として当該規定は削除されましたので、登記簿の附属書類の閲覧請求をする際は、署名又は押印する必要がなくなりました(商業登記規則第21条2項)。
事業を廃止していない旨の届出
休眠会社(株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したもの)に対してみなし解散に関する通知がされることがあります。
この通知がされた休眠会社が、事業を廃止していない旨の届出又は当該休眠会社に関する登記をしないときは、その2ヶ月の期間の満了の時に、解散したものとみなされます。
この事業を廃止していない旨の届出には、休眠会社の代表者又は代理人が記名押印しなければならないとされていましたが、当該記名押印をする必要がなくなりました。
再使用証明申出書
商業・法人登記の申請をして、却下された又は取り下げをしたときは、当該登記申請の際に納付した登録免許税を、他の登記申請において再度使用するために再使用証明の申出をすることができます。
この再使用証明申出書には申請人が押印しなければならないとされていましたが、その様式から押印欄が削除されましたので押印が不要となりました。
なお、登録免許税を電子納付したときは、再使用証明の申出をすることはできません。
引き続き押印が必要なもの
引き続き押印が必要なものは次のとおりです。
- 定款、取締役会議事録等(の一部)
- 不正登記防止申出書及び取下書
- 登記された事項につき無効の原因があることを証する書面
- その他の書面
- 訂正印
- 契印
定款、取締役会議事録等(の一部)
定款、取締役会議事録、ある取締役の一致があったことを証する書面等の法令の規定により押印又は印鑑証明書の添付を要する書面については、引き続き、押印が求められています。
押印等の必要の有無に関する一覧は、こちらのページにまとめています。
≫【令和3年2月15日施行】商業・法人登記における押印が審査される書類、されない書類
不正登記防止申出書及び取下書
登記名義人以外の者が登記名義人になりすまして不正な登記がされることを防止するため、不正登記防止申出書を行うことができます。
不正登記防止申出書及び取下書については、引き続き、押印が必要とされています。
登記された事項につき無効の原因があることを証する書面
登記された事項につき無効の原因があることを証する書面については、作成者全員の印鑑につき、登記の抹消の申請書に記載された抹消すべき登記事項に係る登記の申請書に添付された書面に押印された印鑑と同一の印鑑若しくは登記所届出印を押印し、又は無効原因証書に押印された印鑑につき市町村長の作成した証明書の添付が必要です。
その他の書面
株主リスト、資本金の額の計上に関する証明書等、法令上、押印又は印鑑証明書の添付を要する旨の規定がない書面については、押印の有無について審査を要されないものとなりました。
押印等の必要の有無に関する一覧は、こちらのページにまとめています。
≫【令和3年2月15日施行】商業・法人登記における押印が審査される書類、されない書類
訂正印
申請書その他の登記に関する書面につき文字の訂正、加入又は削除をしたときにする訂正印等、法令上の根拠があるものを除き、その有無について審査はされなくなりました。
商業登記規則第48条
1 申請書その他の登記に関する書面に記載する文字は、字画を明確にしなければならない。
2(省略)
3 第1項の書面につき文字の訂正、加入又は削除をしたときは、その旨及びその字数を欄外に記載し、又は訂正、加入若しくは削除をした文字に括弧その他の記号を付して、その範囲を明らかにし、かつ、当該字数を記載した部分又は当該記号を付した部分に押印しなければならない。この場合において、訂正又は削除をした文字は、なお読むことができるようにしておかなければならない。
契印
申請書への契印等、法令上の根拠があるものを除き、契印の有無について審査はされなくなりました。
商業登記規則第35条3項
申請人又はその代表者若しくは代理人は、申請書が2枚以上であるときは、各用紙のつづり目に契印をしなければならない。
募集株式の発行に関する払込証明書や、取締役会議事録を登記申請時に添付するときに会社法第370条の定款の定めがあることを示すための定款、株主総会議事録が複数枚にわたる場合のその議事録等につき、割印(契印)がなくても補正の対象ではなくなっています。
※コンプライアンス上、押印や契印があった方が望ましいと考えます。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。