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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

3月31日をもって代表取締役が辞任して、4月1日付けで新しい代表取締役が就任するときの手続き

事業年度末と役員の交代

3月末決算の株式会社において、定時株主総会のタイミングではなく、期が変わるタイミングで取締役及び/又は代表取締役が交代することがあります。

例えば、次のような変更内容です。以下、取締役会設置会社を前提としています。

取締役
代表取締役
3月31日以前
ABCD
A
4月1日以降
BCDE
B

このように期の変わり目で役員が交代する会社は、大きい会社の子会社に多いでしょうか。

「付け」と「をもって」

取締役の役職に関する辞任や就任の意思表示は、効力発生日よりも前に行うことができます。

●日に辞任するといった場合、辞任の効力が生じる時間まで意識されることは少ないかもしれません。

事前に辞任届が提出されている場合、厳密には「3月31日付けで辞任します」であれば3月31日の0時00分に辞任の効力が生じ、「3月31日をもって辞任します」であれば3月31日の23時59分に辞任の効力が生じます。

3月31日は取締役の職務を行うのであれば、「3月31日をもって辞任します」という記載にしておくのが良いのではないでしょうか。

取締役の選任と代表取締役の選定

取締役は、株主総会の決議によって選任します(会社法第329条1項)。

取締役会設置会社においては、代表取締役は取締役会の決議によって選定します(会社法第362条2項3号)。

ところで、3月31日の23時59分までは代表取締役Aが職務を執行し、4月1日の0時00分から代表取締役Bが職務を執行するようにしたい場合、4月1日の0時00分に株主総会や取締役会を開催することは現実的ではありません。

そのため、3月31日以前に株主総会の決議で取締役Eを予選する方法が一般的です。

取締役の予選

取締役は株主総会の決議によって選任しますが、選任の効力発生を決議時点ではなく、期限付きで行うことも可能です(なお、効力発生を株主総会の決議日より前の日付とすることはできません)。

そのため、3月24日付けの株主総会で、4月1日付けで取締役Eを選任するという決議をすることもできます。

このときに、取締役Eの就任承諾も、4月1日より前に行っても問題ありません(ただし、取締役となるのは4月1日の0時00分)。

代表取締役の予選

取締役同様、代表取締役も予選することができますが、代表取締役の予選には注意が必要です。

代表取締役選定時の取締役(ABCD)と、代表取締役就任時の取締役(BCDE)が異なるときに、この代表取締役の予選を認めて良いかどうかが明確になっていないように思います。

認めないとする考え方は、取締役会の決議による代表取締役Bの選定は、取締役ABCDではなく取締役BCDEで行うべきであるという主張です(根拠は割愛)。

法務局はこのような予選を否定的に捉える傾向にあるという印象を、今までの登記実務から受けております。

4月1日以降の代表取締役を選定する方法

4月1日0時になった瞬間に、取締役BCDEが取締役会の書面orメール決議(会社法第370条)を行ったり、代表取締役の職務を執行するのは午前10時以降だからということで4月1日の午前中に取締役会を開催するという方法もあります。

これらの方法であれば、取締役会の決議ではあったとしても予選には当たらないため、問題なく登記も通るかと思います。

一方で、定款の定めによって代表取締役を株主総会の決議によっても選定することができるとしておけば、株主総会の決議で代表取締役を予選することができるため、この方法がスマートかもしれません。

≫(株式会社)代表取締役の予選を株主総会の決議で行う手続き的なメリット

取締役の交代と1年任期

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、となっています(会社法第322条1項)。

「就任後」ではなく「選任後」となっていますので、任期計算のスタートは選任時(株主総会の決議時)です。

3月24日付けの株主総会で、4月1日付けで取締役Eを選任したときは、3月24日が任期計算のスタートとなります。

ところで、期の変わり目に役員を交代する会社の多くは、取締役の任期を選任後1年以内~にしている印象です。

そのため、3月末決算の株式会社において、2022年3月24日付け株主総会の決議によって選任された取締役の任期は、2022年5月~6月の定時株主総会の終結時まで、となります。

就任時(2022年4月1日)から任期をスタートすると勘違いしてしまうと、取締役の任期が満了するタイミングを間違えてしまう可能性があります。

なお、任期のスタートを勘違いしていたとしても、定款に取締役の補欠規定や増員規定の定めがあれば、前任又は現任の取締役の任期と同一となりますので、結果としては再任を間違えないでしょうか。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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