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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

相続人間の話し合いは終わっているのでいつでも相続登記できます、の勘違い

遺産分割協議と相続登記

相続財産に不動産が含まれているケースにおいて、相続人間で遺産分割協議が無事にまとまり、被相続人の長男が不動産を相続することが決まったとします。

このときに長男は、被相続人名義の不動産を自分名義にする相続登記を行うことができます。

相続税の申告・納税には期限がありますが、(2022年3月現在)相続登記には義務がないこともあってか、相続登記はすぐに行わずに放置されているケースも見受けられます。

相続登記を行うには当該登記の添付書類を集めなければならず、長男は遺産分割協議がまとまったらなるべく早く、遺産分割協議書(+印鑑証明書)を手に入れておかないと、自分が相続した不動産を自分名義にできないというリスクが潜んでいます。

遺産分割協議書と印鑑証明書が必須

相続人が複数いる場合、特定の人へ相続登記をするには、他の相続人全員が家庭裁判所を通して相続放棄をした場合等を除き、原則として遺産分割協議書(相続人全員が実印押印)と相続人全員の印鑑証明書が必要です。

この印鑑証明書は、3ヶ月といった有効期限はなく、遺産分割協議書の作成日の前又は後ろどちらで取得されたものでも結構です。

相続人同士の仲が良く、口頭で遺産分割協議をするだけで終わらせてしまっているケースでは、法的に有効な遺産分割協議書の作成、押印、印鑑証明書の取得を終わらせておきましょう。

相続人が認知症になるリスク

遺産分割協議は終わっているけれども、遺産分割協議書を作らずに放置していた場合、相続人のうち1人が認知症になってしまう可能性もあります。

認知症になり、意思能力が欠けている状況になってしまうと、遺産分割協議を行うことができません。

口頭では遺産分割協議を行った証拠が残らないため、いざ相続登記をする段になったときに、改めて遺産分割協議書の内容を全員で確認して押印することなりますが、この行為には意思能力が必要だと考えます。

意思能力が欠けている人が遺産分割協議等の法律行為を行うには、成年後見制度の利用が求められます。

相続人の気が変わるリスク

口頭では遺産分割協議を行った場合、証拠が残りません。

数年後に相続人の気が変わり、自宅を長男に相続させるなんて言ってない、等と主張されると、不動産を相続することができなくなる可能性すらあります。

数年前の遺産分割協議の際には生じていなかった事象、例えば子どもが私立大学に入学する、夫・妻が失業した等のお金が必要になってくるタイミングで遺産分割協議書の話をすると、話を翻される可能性はゼロではありません。

相続人が法定相続分の相続登記をするリスク

相続人は1人で、法定相続分に応じた相続人全員の相続登記をすることができる仕組みになっています。

遺産分割協議の内容に反しますが、相続人が長男・次男のときに、口頭では長男が不動産を相続するとして話はまとまっていたところ、手続き的には、次男は長男・次男持分2分の1ずつの相続登記を入れた後に、自分の持分を売却することもできてしまいます(長男への損害賠償はさておき)。

また、次男の債権者が代位権を行使して長男・次男持分2分の1ずつに相続登記を入れた後、次男持分を差し押さえることもできてしまいます。

相続人が亡くなるリスク

相続登記をしないで放置しているうちに、相続人が亡くなってしまうこともあるかもしれません。

長男・次男の間では長男が相続することを口頭で約束していたところ、次男が亡くなってしまった後は、長男が相続登記をするときは次男の相続人と遺産分割協議書を作成しなければなりません。

長男が、次男の相続人と仲が悪かった場合、遺産分割協議書にハンコをもらうのも大変でしょう。

長男が先に亡くなった場合、長男の相続人と次男が話をすることになりますが、長男の相続人からしたら、長男が生きているうちに早く長男名義に相続登記を入れておいて欲しかったと思うはずです。

遺言と相続登記の対抗要件

公正証書遺言があるから相続登記をしなくても大丈夫、と誤解されている方も見かけたことがあります。

相続法が改正され、遺言がある場合でも相続登記をしなかった場合、第三者に対抗できなくなっています。

例えば、遺言で不動産を相続すると指定された長男が相続登記をしていなかったところ、他の相続人の債権者が法定相続分で相続登記を行い、当該相続人の持分を差し押さえその登記をした場合、長男は自分が当該不動産の所有者だと主張することができません。

相続人が1名の場合の相続登記

相続人が1名であれば、戸籍等を集められる限り、いつでも相続登記ができるかもしれません。

相続した不動産を売却するためには相続登記が必要となりますし、次項のとおり相続登記の義務化も控えているため、相続人が1名のケースにおいても、できるときに相続登記をしておくことをお勧めします。

相続登記の義務化

2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されます。

2022年(令和4年)3月現在、相続登記の義務化の開始まで約2年ありますが、いつか相続登記をしなければならないのであれば思い立った時にやってしまうのが良いのかなと思います。

なお、2024年以降の相続登記義務の期間は、次のいずれか遅い日から3年以内です。

  1. 2024年4月1日
  2. 自己のために相続開始があったことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日

この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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