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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

指名委員会等設置会社の取締役、各委員及び(代表)執行役の重任の手続きと登記

指名委員会等設置会社の役員構成

指名委員会等設置会社とは、指名委員会、監査委員会及び報酬委員会(以下「指名委員会等」といいます。)を置く株式会社のことを指します(会社法第2条12号)。

指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の各委員会は、委員3人以上で組織する必要があり(会社法第400条1項)、各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければなりません(会社法第400条3項)。

また、監査委員会の委員は、その会社若しくはその子会社の執行役若しくは業務執行取締役等を兼ねることができませんので(会社法第400条4項)、役員の配置を検討するときはその点注意が必要です。

執行役及び代表執行役

指名委員会等設置会社には、1人又は2人以上の執行役を置かなければなりません(会社法第402条1項)。

取締役会は、執行役の中から代表執行役を選定しなければならず、執行役が1人のときは、その者が代表執行役になります(会社法第420条1項)。

執行役は、取締役の中から選任することもできますし、取締役でない者を選任することもできます。ただし、監査委員会の委員である取締役は執行役を兼ねることはできません。

役員、各役員等の選任、選定機関

取締役、各委員会の委員、執行役及び代表執行役の選任、選定機関は次のとおりです。

対象
選任(選定)方法
根拠条文
取締役
株主総会の決議
会社法329-1
各委員会の委員
取締役会の決議
会社法400-2
執行役
取締役会の決議
会社法402-2
代表執行役
取締役会の決議
会社法420-1

取締役及び執行役の任期

取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法第332条1項、6項)。

執行役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までです(会社法第402条7項)。

取締役の任期は定款又は株主総会の決議によって、執行役の任期は定款によってその任期を短縮することが可能です。

指名委員会等設置会社は、原則として毎年の定時株主総会及びその後の取締役会の決議によって、取締役、各委員等を選任する必要があります。

取締役、各委員、執行役、代表執行役を選任する

取締役、各委員、執行役及び代表執行役の再任手続きの一例は次のとおりです。

  1. 定時株主総会の招集を株主へ通知する。
  2. 定時株主総会を開催し、取締役を選任する。
  3. 取締役がその就任を承諾する。
  4. 取締役会を開催し、各委員、執行役及び代表執行役を選任、選定する。
  5. 各委員、執行役及び代表執行役がその就任を承諾する。
  6. 法務局へ登記申請をする。
就任承諾書の議事録の記載の援用

取締役の就任承諾書は、株主総会に出席した取締役が席上就任承諾をした旨の記載が株主総会の議事録にある場合は、当該議事録を援用することが可能です。

これは、各委員、執行役及び代表執行役についても同様です。

なお、就任承諾書につき議事録の記載を援用する場合は、再任であれば対象者の氏名の記載だけで足りますが、新任の場合は住所の記載も必要となります(再任においても代表執行役の住所の変更があれば住所を記載します)。

≫株主総会議事録を取締役、監査役の就任承諾を証する書面として援用する

執行役又は代表執行役が新任の場合は、執行役には取締役会議事録への記名押印義務がないため、別途就任承諾書を用意し押印してもらうことが一般的でしょうか。

代表執行役の選定と印鑑証明書

取締役会で代表執行役を選定したときは、代表執行役の就任による変更登記の添付書類として、出席した取締役が全員個人実印を取締役会議事録に押印し、当該印鑑に関する印鑑証明書が求められます(商業登記規則第61条6項)。

ただし、変更前の代表執行役(取締役を兼ねる者に限られます)が登記所に提出している印鑑(会社実印)とが同一であるときは、出席した取締役が取締役会議事録に認印で押印してもよく、印鑑証明書の準備も不要となります。

再任の場合は取締役会の前後で代表執行役が変わらないため、代表執行役のうち少なくとも1人が会社実印を取締役会議事録に押せば手続きは楽になりそうですが、商業登記規則第61条6項ただし書きの代表執行役は取締役を兼ねている者に限られています。

全員再任のケースで代表執行役が全員取締役を兼ねていない場合は、代表執行役を選定した取締役会議事録に全員個人実印(又はサイン)の押印が必要となり、その印鑑証明書(又はサイン証明書)も用意しなければならず、また原則として取締役会議事録は同じ用紙に出席取締役が押印しなければならないため登記の準備が大変かもしれません。

取締役、各委員等の重任登記

株主総会等の手続きが終わり、登記書類が揃った後に法務局へ登記申請を行います。登記をする内容は次のとおりです。

  • 取締役(社外取締役はその旨も)の重任登記
  • 各委員の重任登記
  • 執行役の重任登記
  • 代表執行役の重任登記
  • 会計監査人の重任登記

会計監査人の重任登記

指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければなりません(会社法第327条5項)。

会計監査人の任期は、指名委員会等設置会社の取締役と同じく選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法338条1項)。

取締役と異なる点として、会計監査人は、任期を迎える定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなされます(会社法第338条2項)。

会計監査人を新たに選任しない限り、定時株主総会の議案として会計監査人の選任が掲げられることはほとんどありませんが、会計監査人の重任登記は必要ですので登記をし忘れないようご注意ください。

≫定時株主総会と会計監査人の重任登記


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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