商業登記関係 定時株主総会と会計監査人の重任登記
会計監査人とは
会計監査人とは、株式会社の機関の一つであり、会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類などを監査し、会計監査報告を作成する人のことをいいます。
会計監査人を置くかどうかは基本的には各会社の自由にはなっていますが、次の会社は会計監査人を置かなければなりません(会社法第327条、第328条)。
- 大会社
- 監査等委員会設置会社
- 指名委員会等設置会社
大会社とは、最終事業年度における貸借対照表上、資本金として計上した額が5億円以上または負債として計上した額の合計額が200億円以上の会社のことをいいます。
例えば資本金4億円、負債の額が5億円の会社が事業年度の途中で増資をして資本金が7億円になったとしても、同事業年度内に減資をして資本金が5億円未満となったのであれば会計監査人の設置義務はありません。
会計監査人を置く場合は、定款に会計監査人を置く旨を記載しなければなりません。
会計監査人の資格
会計監査人は公認会計士または監査法人でなければなりません。但し、一定の欠格事由があり、公認会計士法により会社法の計算書類の監査をできない者や当該会社の子会社等から公認会計士の業務以外の業務により継続的に報酬を受けている者等は会計監査人となることができません(会社法第337条)。
会計監査人の任期
会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています(会社法第338条)。
例えば事業年度が3月末の会社であれば、会計監査人の任期は次のとおりとなります。
- 2016年3月25日の臨時株主総会で選任された会計監査人は、2016年5-6月に開催される定時株主総会の終結の時まで
- 2016年4月11日の臨時株主総会で選任された会計監査人は、2017年5-6月に開催される定時株主総会の終結の時まで
「選任後」という任期スタートの定め方がされているため、上記1.の例で会計監査人が2016年4月2日にその就任を承諾した場合でも、その任期は2016年5-6月に開催される定時株主総会の終結の時までであることに変わりはありません。
定時株主総会と会計監査人重任
ある定時株主総会の終結の時に任期満了を迎える取締役Aは、当該定時株主総会でAを取締役に選任(再任)する決議がなされない限り取締役を退任することになります(権利義務取締役を除く)。
それでは会計監査人の場合はどうでしょうか。
会計監査人は自動再任される
会計監査人は、定時株主総会において別段の決議がなされなかったときは当該定時株主総会において再任されたものとみなされます(会社法第338条第2項)。つまり、会計監査人設置会社の定時株主総会で会計監査人に関する決議がなかった場合は、その定時株主総会開催日をもって会計監査人は重任(再任)したことになり、当該定時株主総会開催日から2週間以内に会計監査人重任の登記申請をする必要があります。
別段の決議
別段の決議の一例としては、現在の会計監査人Bの後任として会計監査人Cを選任する議案を盛り込み決議された場合や、積極的に現在の会計監査人Bは再任しない旨の決議をするような場合です。
単に、現在の会計監査人Bについては触れずに新しく会計監査人Cを選任するような決議内容では、Bは重任(再任)し、かつCは新規就任して会計監査人2名となってしまう可能性がありますので、Bを再任しないのであればBは再任しない旨を明示するような決議内容にした方がいいでしょう。
会計監査人重任の登記の添付書類
会計監査人重任の登記申請をする際の添付書類は次のとおりです。
- 定時株主総会議事録
- 会計監査人が監査法人であるときは、監査法人の登記事項証明書
- 会計監査人が監査法人でないときは、会計士であることの証明書
※自動重任する場合は、株主リストは不要です。積極的に重任の決議をした場合は、株主リストの添付がおそらく必要になると思われます。また、就任の承諾を証する書面も必要になると思われます。
会計監査人重任の登記は、登記懈怠にご注意
会計監査人が重任したときは、その旨を登記する必要があります。
ついつい議案として役員などの選任(再任)議案がないと、登記する事項が無く登記申請をする必要がないと思われてしまうかもしれません。
登記事項に変更が生じた日(効力発生日)から2週間以内に登記申請をしなかった場合は、100万円以下の過料に処せられる可能性がありますのでご注意ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。