商業登記関係 相談事例 【相談事例】一般社団法人の登記内容に漏れがあったので修正したい
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を以下「法人法」といいます。
一般社団法人の登記事項と登記漏れ
一般社団法人の設立登記を申請するときは、その登記の内容として登記すべき事項を網羅する必要があります。
一般社団法人の登記すべき事項の一部は次のとおりです。
- 目的
- 名称
- 主たる事務所及び従たる事務所の所在場所
- 存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
- 理事の氏名並びに代表理事の氏名及び住所
- 理事会設置一般社団法人であるときは、その旨
- 監事設置一般社団法人であるときは、その旨及び監事の氏名
- 役員等の責任の免除についての定款の定めがあるときは、その定め
- 非業務執行理事等が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあるときは、その定め
- 公告方法
登記すべき事項の全ては、法人法第301条2項をご確認ください。
理事会による責任免除規定
理事が2名以上、監事1名以上いる一般社団法人は、理事・監事がその任務を怠ったときに負う責任について、理事・監事が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、特に必要と認めるときは、その責任の一部を理事(当該責任を負う理事を除く。)の過半数の同意(理事会設置法人は理事会の決議)によって免除することができる旨を定款に定めることができます(法人法第114条1項)。
この定款の定めは登記事項となっています(法人法第301条2項11号)。
一方で、理事・監事の責任を社員総会の決議によって一部免除することもでき(法人法第113条1項)、こちらは法人法により当然に認められているため、定款にその旨を定めたとしても登記事項ではありません。
登記すべき事項の漏れと登記完了
登記申請の内容から登記すべき事項の一部が漏れていたとしても、原則として、登記官がそれを発見して補正するよう申請人に連絡をしてくれることが多いです。
登記すべき事項を登記申請書に記載することは申請人サイドの責任と言えますので、補正の連絡が来ずに登記が完了した場合も、基本的には職権更正をしてくれるわけではなく申請人サイドで更正登記を申請することになるでしょう。
取締役会非設置会社が取締役会設置+監査役設置+取締役及び監査役の就任登記をするときに、監査役設置の旨を抜かして申請した場合は明確に?登記すべき事項を遺漏しているため補正の連絡がくるでしょう。
株主総会で目的変更と発行可能株式総数の変更に係る決議をしたときに、その旨の登記申請をする際に登記内容として目的変更を入れ忘れたときは、補正の連絡がくるかどうかは登記官次第でしょうか。それぞれの項目が独立しているからです(発行可能株式総数の変更のみの登記をする可能性もゼロではない)。
監査役設置会社の定めを廃止する登記申請をするときに 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の廃止の登記も同時にすべきところ、後者の登記を忘れて
前者の登記のみ記録されてしまったというケースもあるようです。
忘れやすい登記
一般社団法人の設立登記において、名称や主たる事務所の登記を遺漏したまま登記が完了することは(おそらく)ありません。仮に申請人が登記すべき事項から漏らしたとしても、登記官が必ず気付くためです。
一方で、「存続期間又は解散の事由」「責任免除規定」の2つは、採用している一般社団法人が少ないこともあるのか、スルーされて登記が完了することもあるのかもしれません。
登記事項が漏れなく登記される申請することは申請人サイドの責任ですので、申請人サイドが気を付ける必要があります。
遺漏による更正登記を申請する
登記事項が漏れていることに気付いたときは、速やかにその更正登記を法務局へ申請します。
更正登記は、何をどう更正するかによって添付書類は異なりますが、設立登記に関する遺漏であれば、次の書類を添付するケースが多いでしょうか。
- 設立時の、公証人の認証がされた定款
- 上申書
更正登記は各案件によって内容が異なり、また法律上の必要書類が明示されていないため、詳細は管轄法務局に確認されるのがよろしいかと思います。
登録免許税
更正登記の登録免許税は1申請につき2万円です。
登記及び登記に至るまでの手続きに抜けや漏れがあると追加の費用や手間がかかるだけでなく、ステークホルダーに迷惑がかかることもあります。
司法書士は登記の専門家です。登記手続きについては、お近くの司法書士にご相談されることをお勧めします。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。