商業登記関係 特許業務法人から弁理士法人への名称変更の手続きとその期限
弁理士法の改正
弁理士法の一部が改正され、2022年4月1日から施行されています。主な改正点は次のとおりです。
- 業務内容として農水知財(植物の新品種・地理的表示)業務の追加
- 弁理士の欠格事由の追加
- 法人名称の変更
- 一人法人制度の導入
ここでは、変更に期限のある法人名称の変更について記載しています。
名称の変更の手続きと登記
弁理士法の改正により「業務特許法人」という法人名称は「弁理士法人」という法人名称に変更されました。
2022年3月31日以前から存在するXYZ業務特許法人は、XYZ弁理士法人(弁理士法人という名称が付けばXYZ以外に変更も可)に名称を変更しなければなりません。
名称は定款の記載事項ですので(弁理士法第43条2項)、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をします(弁理士法第47条1項)。
名称に係る定款の変更をしたときは、2週間以内に法務局へ名称変更の登記申請を行います。
名称の変更と法人実印の変更
XYZ業務特許法人がXYZ弁理士法人に名称を変更するときは、一般的には法人実印(法務局へ届け出ている印鑑)も変更することが多いかと思います。
この場合、名称変更の登記申請と同時に改印届出も一緒に行います。この改印届出には新しく登録する法人実印、届出者の個人実印、届出者の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)が必要となります。
名称の変更登記と同時に改印届出も行う場合、登記申請書又は委任状に押印する印鑑は新しい(新たに届け出る)印鑑です。
なお、法人実印の改印は必須ではありませんので、XYZ弁理士法人の法人実印がXYZ業務特許法人と彫られているものでも法的には問題ありません(とはいえ、改印する法人がほとんどです)。
変更期限とみなし解散
業務特許法人から弁理士法人への名称変更は、2022年4月1日から起算して1年を経過する日までです。
この日までに名称の変更をしないと、その日が経過した時に解散したものとみなされてしまいますので余裕をもって変更の手続きをされるのがよろしいかと思います。
弁理士法 附則(令和3年5月21日法律第42号)抄
第7条11項 特例特許業務法人が施行日から起算して一年を経過する日までに前項の名称の変更をしないときは、当該特例特許業務法人は、その日が経過した時に解散したものとみなす。
その他の変更に関する諸手続き
名称を変更すると色々なものを変える必要が生じてきます。
ホームページや名刺、事務所のスタンプの変更から、登記後に特許庁への手続き、税務署への異動事項に関する届出等も必要でしょうから、変更期限が迫ってきてから繁忙期に急いで名称変更の手続きをすると慌ただしくなってしまうかもしれません。
オンライン手続きに必要となる電子証明書の変更も必要となることから、繁忙期を避けて、かつ、今年中に弁理士法人への名称変更手続きを行う法人が見受けられます。
一人法人制度の導入
弁理士法が改正されたことにより、業務特許法人(弁理士法人)の最低社員数が2人から1人に変更されました。
弁護士法人、社会保険労務士法人、行政書士法人、司法書士法人等と同様に、弁理士法人においても一人法人が認められるようになっています。
これにともない、業務特許法人を維持するためだけに社員を2人にしていた法人は、2022年4月1日以降に持分譲渡をする等して(同意のもと)社員に脱退してもらうところもあるでしょうか。
≫士業法人の社員の入退社にともなう登記すべき事項は「加入」「脱退」
また、弁理士法人は弁理士法第52条1項に掲げる理由によって解散しますが、その一つに「定款に定める理由の発生」があります。
2022年4月1日に規定が削除されましたが、特許業務法人は社員が1人なり、その日から6ヶ月間その社員が2人以上にならなかったときは解散する旨が定められていました(改正前弁理士法第52条2項)。
この旨を定款に定めていた業務特許法人は、あえて当該定款の定めを維持する必要性は低いでしょうから、名称を変える定款変更を行うタイミングで当該定款の定めを削除しても良いかもしれません。
(解散)
弁理士法第52条1項弁理士法人は、次に掲げる理由によって解散する。
一 定款に定める理由の発生
二 総社員の同意
三 他の弁理士法人との合併
四 破産手続開始の決定
五 解散を命ずる裁判
六 第54条の規定による解散の命令
七 社員の欠乏
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。