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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

2名以上で合同会社を設立するのであれば知っておきたいこと(会社法編)

社員を複数名置く合同会社

新しくビジネスを始める際に営利法人を作るのであれば、設立する法人は株式会社か合同会社になるでしょう(非営利法人である一般社団法人を用いて資格ビジネス・協会ビジネスをするケースもあります)。

ここで、2名以上で法人を作ってビジネスをスタートする際に、イニシャルコストを抑えたいという理由で合同会社が選択されることが少なくありません。

イニシャルコストを抑えるために合同会社を選択すること自体は悪いことではありません。

株式会社ではなく合同会社を選択するのであれば、合同会社の性質・特徴を知った上で選択することをお勧めすることが本ページの趣旨です。

合同会社の特徴

株式会社には無い合同会社の特徴は色々ありますが、2名以上で合同会社を設立するときに、少なくとも知っておいていただきたい合同会社の特徴は次のとおりです。

  1. 所有と経営が分離していない
  2. 1人1票制度
  3. 簡単に社員を除名できない
  4. 出資の払戻し手続きが大変

いざ他の社員(合同会社に出資をし持分を保有する人・法人。以下同じ)とトラブルが生じたときに、これらの特徴が原因で問題の解決が困難となるケースを見かけます。

なお、家族経営の会社や家族を社員とする資産管理会社であれば上記の特徴は気にならないかもしれません。

所有と経営が分離していない

合同会社は株式会社と異なり、所有と経営が分離していません。これが意味することは、合同会社の役員となるためには当該合同会社に出資をしなければならないということです。

執行役員や部長等といった任意の役職は別にして、合同会社においては、業務執行社員や代表社員となるためにはその人が1円でも出資をしないとそれらになれない仕組みとなっています。

1円でも出資をすれば良いのでしょう?と思う方もいるかもしれませんが、後述のとおり1円でも持分を保有した社員の権利は非常に強力です。

主に1人が合同会社のメイン運営者兼所有者あり、もう1名は(できれば)出資をせず役員や社長になってもらうという関係の場合、合同会社ではなく株式会社を選択する方が運営はしやすくなります。

また、投資家(出資はするけれども役員にはならない人)を増やのであれば、間違いなく株式会社が向いています。

1人1票制度

合同会社が定款変更をするとき、新しい社員を追加するとき等、重要な事項を行うときに総社員の同意が必要とされるケースが少なくありません。

文字通り、総社員の同意とは社員全員の同意ですので、これは出資額に関わらず(1円出資の社員を含め)社員全員が拒否権を持っているに等しいと言えます。

定款に別段の定めを置くことで出資額に応じた議決権を付与する設計もできないことはありませんが(解散時除く)、その設計をするのであれば株式会社の方がシンプルではあります。

≫合同会社に社員総会を置く方法

簡単に社員を除名できない

出資をして社員となった人・法人は、当該合同会社の持分を保有します。この持分は当該社員の財産ですので、他の社員が勝手に奪い取ることはできません。

一緒に経営をしてきたけれども特定の社員を追い出したい、となったときに合同会社にはどのような手段が用意されているでしょうか。

会社法上、合同会社は、社員が不正な行為をしたり、重要な義務を尽くさないような事由があったときに、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象社員の除名を請求することができます(会社法第859条)。

「訴えをもって」という点で、行為のハードルは低くありません。

株式会社でも50%ずつ株式を保有するようなケースでは交渉以外に解決が難しいケースもありますが、相手の株式保有割合が低い場合は、特別支配株主等の売渡請求や株式併合といったスクイーズアウトの制度が設けられています。

また株式会社には、損害賠償請求の問題はさておき、取締役に問題があるときは(なくても)、株主総会の決議をもって取締役を解任することができる仕組みもあります。

出資の払戻し手続きが大変

社員が退社するときに、当該社員が出資をした分のうち資本金に計上した額を払い戻すときは、減資の手続きが必要となります。

減資を行うときは、債権者がいない場合でも官報公告+登記の手間と費用がかかり、更に1ヶ月以上(一定のケースでは2ヶ月以上)の期間がかかってしまうため、簡単な手続きではありません。

なお、残る社員が退社する社員の持分を買い取る(譲り受ける)ことができるのであれば、払戻しの手続きや減資の手続きを回避することは可能です。

合同会社から株式会社へ

最初に合同会社を選択し、事業が上手くいきそうな見通しが立ったので役員を増やしたい、あるいは外部からの出資を受けることになった段階で株式会社へ組織変更するという選択もあるでしょう。

資本金100万円、電子定款を前提とすると、株式会社設立の実費(登録免許税+公証人手数料)は約19万円、合同会社設立+合同会社から株式会社への組織変更の実費は約16.5万円(設立6万円+組織変更10万円)であり、後者の方がその部分だけを見ると安いともいえます。

ただし、後者の方が諸々の手続きが大変であり、司法書士に手続きを依頼するとトータルでは高くなるでしょう。

また、組織変更には約1.5ヶ月の期間がかかるため、(出資をしない)役員を追加したい段階で、あるいは外部から投資を受ける段階ですぐに動けないという事態が生じます。

知人同士、複数名で一緒に事業を行うときに、個人事業主や組合ではなく法人を選択されるのであれば、調整のしやすい株式会社を選択しておくのが無難と言えるかもしれません。

加えて、株式会社の場合、株主間契約を結んでおく、取締役の任期を10年にしない等をしておくと、一定のリスクヘッジにはなるかと思います。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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