商業登記関係 株主総会の決議による定款変更の効力発生日はいつか
定款変更に係る株主総会の決議
株式会社を設立する際に発起人は定款を作成し、設立後の当該株式会社は、その本店及び支店に定款を備え置きます(会社法第31条1項)。
定款を紙ではなく電磁的記録で作成している場合で、支店において株主及び債権者からの閲覧の請求等に対する措置として法務省令で定めるものをとっている株式会社については支店に定款を備え置くことは不要です(会社法第31条4項)。
株式会社の定款は変更することができ(会社法第466条)、その方法は株主総会の特別決議によって行います(会社法第309条2項11号)。
この定款変更の効力発生を特定の日付としたいというニーズがあったときに、どのような方法が採れるでしょうか。
定款変更の効力発生日
定款変更の効力発生は、原則として、当該定款変更に係る株主総会の議案が承認された時に生じます。
2024年1月5日の14:05に定款変更に係る株主総会の議案が承認されたのであれば、その時に定款が変更されることになります。
定款変更の効力発生を特定の日(あるいは時間)としたい場合は、その方法として次の2つが挙げられます。
- 特定の日に株主総会の決議を行う
- 定款変更の効力発生を特定の日として決議する(期限付決議)
先に申し上げますと、上記の2つの方法においては2の期限付決議の方が多く採用されている印象です。
1-1. 特定の日に株主総会の決議を行う(開催型)
定款変更に係る株主総会の議案が承認された時に当該定款変更の効力が生じますので、定款変更をしたい日に株主総会を開催して決議をすることでそのニーズを満たすことができます。
株主総会を開催するには原則として招集手続きが必要であり、会社法や定款で定められた招集期間等といったスケジュールの調整もあるため、特定の日に定款変更を生じさせたいときにこの方法が採用されるケースは少ないかもしれません。
定款変更の効力発生はいつでも良いという場合や、なるべく早く効力発生をさせたいけれども株主全員の同意を得ることが難しい場合に採用されている印象です。
株主全員の同意があれば招集手続きを省略することができますが(会社法第300条)、同意を得られるのであれば次項のみなし決議の方がスムーズでしょうか。
1-2. 特定の日に株主総会の決議を行う(みなし決議型)
株主全員から書面又は電磁的記録による同意に基づくみなし決議(会社法第319条1項)によって定款変更が行われることもあります。なお、当該議案に対して議決権を行使できない株主(例:無議決権株主)の同意は不要です。
みなし決議は、当該議案(ここでは定款変更に係る議案)に対して議決権を行使することができる株主(以下、単に「株主」といいます)全員から同意を得た時にその効力が生じます。
みなし決議日を特定の日とする方法は2つあります。
1つ目は、特定の株主(代表取締役等)の同意日を当該特定の日とする方法です。当該特定の日までに、他の株主全員から同意を得ておく必要があります。
2つ目は、みなし決議の効力発生日を予め定めておく方法です。一例として、2024年1月10日(または11日)までに株主全員から同意を得ることを条件に、2024年1月11日付でみなし決議が成立する旨も株主への提案事項へ含めます。こちらも、遅くとも当該効力発生日までに株主全員から同意を得ておく必要があります。
2. 決議の効力発生を特定の日とする(期限付決議)
定款変更の効力発生日を含めて株主総会の決議を行うことも可能であり、実務的によく用いられているのはこちらの方法です。
2024年1月10日付の株主総会の決議において、定款変更の効力発生日を2024年2月1日とするようなケースです。なお、効力発生日を株主総会の決議日よりも前の日付とすることはできません。
期限付決議につき、決議日と効力発生日の期間に法律上の制限はありませんが、1ヶ月程度に収めておくことが無難でしょうか。法律上の制限はありませんが、当該期間が開く場合でその株主総会議事録を登記の添付書類とするのであれば、事前に法務局へ照会をかけておくと安全かもしれません。
解散決議については、当該期間は2週間程度が限界とされています。
≫株式会社の解散決議と解散日
条件付決議も用いられることがありますが、その場合も効力発生日を記載しておくのが良いかと思います(第●号議案の吸収合併の効力が生じることを条件に、2024年4月1日付で商号に関する規定である当社の定款第1条を変更することにつき、ご承認をお願いするものであります 等)。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。