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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

新株予約権の行使条件として定めたノックアウト条項と株価の下落による新株予約権の消滅

新株予約権の行使条件とノックアウト条項

新株予約権とは、株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいい(会社法第2条21号)、役員・従業員・外部協力者等への報酬・インセンティブとして用いられることがあります。

新株予約権にはその行使の条件を定めることができ、行使の条件を定めたときは、当該条件は登記事項となります(会社法第911条3項12号ニ)。

行使の条件の定め方には特に主だった制限はありませんが、発行する新株予約権の趣旨に沿った内容が定められます。

上場会社又はスタートアップ企業では新株予約権の行使の条件として、株価を基準とするノックアウト条項が設けられることがあります。

ノックアウト条項

新株予約権において、主に業績や株価に関連する特定の事由が生じたときに当該新株予約権が行使できなくなる行使の条件は、ノックアウト条項と呼ばれることがあります。

株価に関するノックアウト条項につき、WEB上で公開されている数社の新株予約権の内容は次のとおりです。なお、●●円に対する調整式の記載その他内容の一部を省略していますので、実際に次の記載がそのまま採用されることはありません。

新株予約権者は、本新株予約権の割当日から行使期間の満了日までにおいて次に掲げる事由のいずれかが生じた場合には、本新株予約権を行使することができない。                    
(a)●●円を下回る価格を対価とする当社普通株式の発行等が行われたとき。   
(b)●●円を下回る価格を行使価額とする新株予約権の発行が行われたとき。                  
(c)本新株予約権の目的である当社普通株式が日本国内のいずれの金融商品取引所にも上場されていない場合、●●円を下回る価格を対価とする売買その他の取引が行われたとき。     
(d)本新株予約権の目的である当社普通株式が日本国内のいずれかの金融商品取引所に上場された場合、上場日以降、当該金融商品取引所における当社普通株式の普通取引の終値が●●円を下回る価格となったとき。

●●円には行使価額の金額又は「行使価額」という単語そのものが入るケースが多いでしょうか。

ノックアウト条項への抵触

ある事由が生じたときは新株予約権を行使することができない、という行使の条件が付されている新株予約権において当該事由が生じたときは、別段の定めがない限り、文字どおり当該新株予約権を行使することができなくなります。

(a)乃至(c)は発行会社が関与することがあるため、当該事由が生じたことを発行会社が把握しやすいところではありますが、(d)は発行会社が直接関与することなく生じ得ます。一時的に株価が下落し、数日から数ヶ月後に回復したケースでもこのノックアウト条項に触れてしまうことになります。

ところで、新株予約権者がその有する新株予約権を行使することができなくなったときは、当該新株予約権は消滅します(会社法第287条)。

そのため(a)乃至(d)のいずれかの事由が生じたときは、当該新株予約権は全て消滅することになります。

なお、行使の条件により行使をすることができなくなったときは発行会社が当該新株予約権を取得する旨の取得条項がある場合は、発行会社が当該新株予約権を取得します。

新株予約権の全部消滅と登記

新株予約権の全部が消滅したときは、2週間以内にその旨の登記申請をします(会社法第915条1項)。

新株予約権の全部消滅の日は、(d)においては普通株式の普通取引の終値が●●円を下回る価格となった日となります。

新株予約権の全部消滅の登記に係る添付書類は不要であり、司法書士に依頼する場合は委任状を添付します。

この登記の登録免許税は3万円です。

自己新株予約権を消却するときの登記手続きはこちらをご確認ください。

≫自己新株予約権の消却手続きと登記


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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