商業登記関係 通帳の名義が旧姓のままでも払込証明書として使えるか
株式会社の設立には払込証明書が必要
株式会社を設立するときは、金銭出資の場合、原則として発起人代表者の銀行等口座へ資本金を振込み、その払い込みがあったことを証する書面の一部として当該口座に係る通帳のコピーが必要となります。
株式会社設立の手続きについてはこちらもご覧ください。
>>>株式会社設立サービス
資本金の払い込み先は原則、発起人代表者の金融機関の口座
資本金を払い込む先は、一般的には発起人代表者名義の金融機関の口座です。金融機関とは、銀行以外にも信用金庫や労働金庫等でも問題ありません。最近では実店舗を持たないネットバンクを利用されるケースも多いです。
(H29.3.22追記)設立時取締役、代表取締役の口座も利用可能です。また、一定のケースでは第三者の口座の利用も可能となりました。
>>>設立時、払込証明として利用できる預貯金口座名義人の範囲
口座名義人と発起人の氏名の一致
資本金は、原則として発起人の口座に振り込みがされることが求められているため、会社設立の登記申請時は発起人の(うち一名の)氏名と口座名義人の氏名が一致しているかどうか、法務局の登記官はチェックしています。つまり、この氏名の一致は重要といえます。
では諸事情によって、戸籍上の氏名と口座名義人の氏名が異なっている場合はどうなるのでしょうか。
旧姓の銀行口座の利用
商業登記に関する各種法令には、発起人の氏名と口座名義人の氏名が一致していない場合について触れているものは無いと思います(先例等あったらすみません)。
ですので、どうしても氏名が一致しないまま登記申請をするのであれば、登記申請をする管轄法務局に個別に確認をする必要があります。
新橋太郎さんが結婚をすることにより汐留太郎さんに氏名を変更したときに、旧姓時に開設した銀行口座(新橋太郎名義)を資本金の払い込み先として利用できるかどうか。
結論としては、新橋太郎さんと汐留太郎さんは別人と判断されてしまうため、登記申請は受理されない可能性が高いでしょう。
では、氏名変更をしたことが分かる戸籍を添付してはどうでしょうか。
設立登記申請をする会社の管轄法務局がさいたま地方法務局であったため、さいたま地方法務局の商業登記担当者に確認をしたところ、戸籍等を添付しても払込証明書の再提出を求める可能性が高いと言われました。
振込名義人として、発起人の氏名の記載は必須ではない
資本金を払い込むという行為について、使者として他の方にお願いすることもあり得るため、発起人全員の氏名が口座に表示されている必要は無いとされています。また、当該口座名義人は振込みではなく、氏名の掲載されない入金という形でも問題ありません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。