商業登記関係 設立時、払込証明として利用できる預金口座名義人の範囲
発起設立における払込証明書として第三者の預金口座を利用できるか
株式会社の発起設立とは、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法による設立方法のことをいいます。発起設立においては、基本的に、発起人が資本金となる額を発起人の預貯金口座に払い込み、その通帳の写しを払い込まれた金額を証する書面と合綴して登記申請時に添付しなければなりません。
>>>株式会社の発起設立における払込証明書
>>>株式会社設立サービス
募集設立の場合は、金融機関の払込金保管証明書が必要となります。
資本金を払い込む預貯金の口座
発起設立において、資本金は誰の金融機関の口座に払い込んでも良いわけではありません。資本金を払い込む預貯金口座につき、法務省より次のような通達がありました。
<法務省>平成29年3月17日民商第41号通達
1.発起人代表の口座
発起人が1名のときは、その発起人の預貯金口座に資本金となる額を払い込みます。通帳の記載につき、名前の記載される「振込」でも「入金」でも問題はありませんが、資本金となる額分の残高があるだけでは足りません。
発起人が2名以上いるときは、そのうち1名の預貯金口座に資本金となる額を払い込みます。発起人1名1名が、それぞれ自身の預貯金口座に払い込む方法も可能です。
2.設立時代表取締役の口座
発起人の預貯金口座ではなく、設立時の代表取締役の預貯金口座に資本金となる額を払い込むこともできます。この方法は、発起人が外国人・外国法人で日本の金融機関の預貯金口座を持っていないときにおいて、代表者が日本に金融機関の預貯金口座を持っているときに利用されることがあります。
このとき、株式会社設立の登記申請には、発起人から当該代表取締役が払込金受領権限について委任を受けたことを証する書面(委任状)を添付する必要があります。
なお、発起人が2名以上いるときは、このうち1名の発起人からの委任状でOKです。
3.設立時取締役の口座
発起人の預貯金口座ではなく、設立時の代表取締役以外の取締役の預貯金口座に資本金となる額を払い込むこともできます。
なお、発起人から当該取締役への払込金受領権限について委任を受けたことを証する書面(委任状)が登記申請の添付書類として必要なこと、発起人が2名以上いるときに1名以上からの委任状が必要なことは上記2と同様です。
4.第三者の口座(発起人、取締役全員が日本に住所がないケース)
登記申請書の添付書類から、発起人及び設立時取締役全員が日本国内に住所を有していないことが明らかな場合は、発起人及び設立時取締役以外の人の預貯金口座に資本金を払い込むことができます。
なお、発起人から当該取締役への払込金受領権限について委任を受けたことを証する書面(委任状)が登記申請の添付書類として必要なこと、発起人が2名以上いるときに1名以上からの委任状が必要なことは上記2.3と同様です。
金融機関で法人口座を作れるかは別問題
日本に住所のある発起人、取締役がいない場合でも株式会社を設立することはできます。
>>>代表者全員が日本に住所を有していなくても法人登記は可能に
また、上記法務省通達によって、増々日本に住所のある発起人、取締役がいないケースでの会社設立も行いやすくなりました。
ただし、当該株式会社が会社設立後に、金融機関において法人口座を作れるかどうかは別問題です。法人口座を作れるのかどうか、事前に金融機関に確認をしておいた方がいいかもしれません。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。