商業登記関係 合同会社の資本金の額の減少(減資)とその登記手続き
合同会社と減資
合同会社の資本金の額は登記事項とされていて、一定の手続きを経ることにより資本金の額を減少させること(以下、「減資」といいます)ができます。
合同会社の資本金の額は、次の場合に減少します(会社計算規則第30条2項)。
- 退社する社員に対する持分の払戻し(当該社員の出資が資本金に計上されている場合)
≫合同会社の社員が退社をするときの持分の払戻しと退社手続き - 社員に対する出資の払戻し(当該社員の出資が資本金に計上されている場合)
- 損失のてん補に充てる場合
減資と債権者保護手続き
合同会社が減資をするときは、債権者の有無に関わらず、債権者保護手続きをしなければなりません(会社法第627条)。
減資に係る債権者保護手続きは、基本的には株式会社の場合と同様ですが1点だけ若干異なります。
株式会社と異なり、合同会社には決算公告の義務がありませんので、債権者保護手続きにおいても最終貸借対照表の開示状況の記載は不要とされています。
最終貸借対照表の開示が不要な分、決算公告をしていない株式会社の減資手続きに比べて期間が多少短く、公告費用も安くなります。
株式会社の減資についてはこちら
≫株式会社の資本金の額の減少(減資)手続き
合同会社の減資手続き
合同会社が減資をするときの手続きは次のとおりです。
退社する社員に対する持分の払戻しのために減資をするときは、当該社員の退社原因によって別の手続きが必要になることがあります。
- 総社員及び/または業務執行社員の同意
- 官報公告の申込み
- 債権者への催告またはダブル公告
- 登記申請
総社員及び/又は業務執行社員の同意
手続きに応じて、総社員または/及び業務執行社員が減資について同意(決定)します。
この同意は、債権者保護手続きの前後は問われませんが一般的には債権者保護手続きの前に行われることが多いのではないでしょうか。
損失のてん補に充てるために減資をする場合は、業務執行社員の過半数の同意(決定)が必要であり、減少した資本金は資本剰余金へ振り分けられます。
官報公告の申込み
債権者保護手続きのため、官報公告の申込みをします。
官報に掲載する内容は次の2点です(会社法第627条2項)。
- 当該資本金の額の減少の内容
- 債権者が一定の期間(1ヶ月以上)内に異議を述べることができる旨
合同会社の減資に係る官報公告の記載例は次のとおりです。
当社は、資本金の額を●●●万円減少すること
にいたしました。
この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲
載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
なお、当社は計算書類の公告義務はありません
平成●●年●●月●●日
東京都中央区銀座●丁目●番●号
合同会社●●●●
代表社員 汐留太郎
2018年3月現在、官報公告の掲載料は1行につき3,524円(税込)ですので、9行であれば31,716円、10行であれば35,240円です。
債権者への催告またはダブル公告
債権者保護手続きとして、上記官報公告に加えて、知れている債権者がいる場合には、同じ内容を各別にこれを催告しなければなりません。
減資をする合同会社の公告方法が官報以外、例えば電子公告の場合は、官報公告に加えて電子公告もしたときは、知れている債権者への各別催告は省略することができます。
効力発生日
株式会社の減資の場合、効力発生日は株主総会(または一定の場合の取締役会)の決議によって定めます(会社法第447条1項)。
そのため、当該決議によって定められた日に株式会社の減資の効力が生じます。
合同会社の減資の場合は、債権者保護手続きが終了した日にその効力を生ずるとされています。(会社法第627条6項)。
登記申請
減資の効力が発生したときは、その効力発生日から2週間以内に資本金の額の変更登記を申請しなければなりません(会社法第915条1項)。
また、退社する社員に対する持分の払戻しをする場合で、登記事項である業務執行社員や代表社員にも変更が生じたときは、その変更登記も併せて行います。
一例として、損失のてん補に充てるために減資をする場合の添付書類は次のとおりです。
- 業務執行社員の決定書
- 官報
- 債権者へ各別催告をしたことを証する書面(またはダブル公告をしたことを証する書面)
- 異議を述べた債権者がいないことの証明書
- 委任状(代理人に委任する場合)
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。