商業登記関係 司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(株主の住所等の届出編)
定款の条文の内容を解説します。
会社法が施行されてから株式会社の設立も容易になり、また現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、起業される方自身で株式会社設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容の一部、あるいは全部をよく理解せずにそのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、会社設立後にこんなはずではなかった、、、という方が一人でも少なくなるように、日本公証人連合会のホームページに掲載されている
1 小規模な会社(Small-Sized Company)
株式が非公開で、取締役が1名のみの小規模な株式会社の定款記載例であり、定款の内容も簡潔なものを紹介しています。
起業者の方が小規模な会社からスタートしたいと考える場合に、定款ドラフトの作成に当たって、参考にされる一つの定款記載例です。≫定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)【日本公証人連合会】
を基に、定款の各条文の内容について解説をしていきたいと思います。
ビジネスに専念したい方
一方で、会社設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
会社設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
≫株式会社設立サービス
≫合同会社設立サービス
株主の住所等の届出に関する条文
第9条 当会社の株主及び登録株式質権者又はそれらの法定代理人は、当会社所定の書式により、住所、氏名及び印鑑を当会社に届け出なければならない。
2 前項の届出事項を変更したときも、同様とする。
この条文は任意的な記載事項ですので、必ず定款に記載しなければならない事項ではありませんが、多くの会社では定款にこの事項を定めています。
株主名簿と株主名簿記載事項
株式会社(特例有限会社を含みます。)は株主名簿を作成する義務があります。
そして、株主名簿には次の事項を記載します(会社法第121条)。
- 株主の氏名又は名称及び住所
- 上記株主の有する株式の数(種類株式発行会社の場合、株式の種類及び種類ごとの数)
- 上記株主が株式を取得した日
- 株式会社が株券発行会社である場合は、発行されている株券の番号
株主に対する通知
株式会社が株主に対して何か通知や催告をするときに、それを郵送によって行うときは、原則として株主名簿に記載された住所へ通知書等を郵送します(会社法第126条1項)。
この通知には株主総会の招集通知も含まれますので、株主側だけではなく会社側にも株主名簿を正確なものにしておくニーズがあります。
(株主に対する通知等)
会社法第126条1項株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
住所等の変更方法を指定するメリット
株主名簿の記載事項である株主の「氏名又は名称及び住所」は、変更が生じることがあります。
なお、「氏名又は名称」とあるのは、株主が個人の場合は「氏名」ですが、法人の場合はそれに当たるものが「名称」となるためです。
「氏名又は名称及び住所」に変更が生じたときは、その旨を会社に届け出ないと会社からの通知を受け取ることができなくなる可能性があります。
そこで、「氏名又は名称及び住所」に変更が生じたときは、その届出を会社にすることになります。
届出の方法を指定する
会社法上、株主が会社に対して「氏名又は名称及び住所」の変更を知らせる方法は指定はされていません。
しかし、それをどんな方法でも良いとすると会社側の管理が大変になることもあります。
そこで、会社が指定の書式を用意することにより、その管理コストを下げることができます。
印鑑の届出
株主に印鑑の届出をしてもらうことにより、株主から提出された変更届等が株主から提出されたものであることを担保することができます。
(印鑑自体を会社に提出するのではなく、所定の書式により印影を提出します。)
変更届に押された印影と、事前に届出をされている印影を照合して一致していれば、株主本人から提出されたものであることが分かります。
株主が会社に対して印鑑の届出をすることは会社法上の義務ではありませんが、定款に定めそれを義務化することにより、会社側としては管理しやすくなるでしょう。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。