商業登記関係 司法書士が株式会社の定款の条文を解説します(公告方法編)
定款の条文の内容を解説します。
会社法が施行されてから株式会社の設立も容易になり、また現在は色々なサイトで株式会社の設立に関する情報が溢れているため、起業される方自身で株式会社設立の手続きをされるケースも少なくありません。
しかし、インターネット上にある定款の内容の一部、あるいは全部をよく理解せずにそのまま利用している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、会社設立後にこんなはずではなかった、、、という方が一人でも少なくなるように、日本公証人連合会のホームページに掲載されている
1 小規模な会社(Small-Sized Company)
株式が非公開で、取締役が1名のみの小規模な株式会社の定款記載例であり、定款の内容も簡潔なものを紹介しています。
起業者の方が小規模な会社からスタートしたいと考える場合に、定款ドラフトの作成に当たって、参考にされる一つの定款記載例です。≫定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)【日本公証人連合会】
を基に、定款の各条文の内容について解説をしていきたいと思います。
ビジネスに専念したい方
一方で、会社設立の手続きは初めて行う方には時間がかかる上に、一生のうちにその知識を何度も使うわけではありません。
会社設立の手続きは専門家に任せて自分のビジネスに集中したい方は、こちらのページをご参照ください。
≫株式会社設立サービス
≫合同会社設立サービス
定款の公告方法に関する条文
第4条 当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。
公告方法は必ず定款に定めなければならないわけではありません。
一方で、株式会社の公告方法は登記事項とされていますので、公告方法は必ず登記簿に記載されます。
そのため、ほとんどの株式会社では公告方法を定款に定めています。
公告方法を定款に定めなかったらどうなる?
公告方法を定款に定めなかったときは、登記簿には公告方法がどのように記載されるのでしょうか。
公告方法を定款に定めていない株式会社の公告方法は、「官報に掲載する方法」です(会社法第939条4項)。
実際には、「官報に掲載する方法により行う。」「官報に掲載してする。」のように登記することになります。
公告方法が官報である会社も、あえて定款にその定めを省略する必要はありませんので、公告方法も定款に定めることが一般的です。
公告方法にはどのような種類があるか
株式会社の公告方法は次の3つの中から選択します(会社法第939条1項)。
- 官報に掲載する方法
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告
それぞれを「及び」で繋ぐことはできますが、「又は」で繋ぐことはできません。
- <OK>当会社の公告は、官報及び日本経済新聞に掲載する。
- <NG>当会社の公告は、官報又は日本経済新聞に掲載する。
「又は」の場合、官報と日本経済新聞のどちらを利害関係人が確認すれば良いのか分からないためです。なお、「及び」で繋ぐことは法律上問題ありませんが、実務上は会社の負担が増えるだけですので、それを採用する会社はほとんどありません。
時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法の記載例
第4条 当会社の公告は、日本経済新聞に掲載する方法により行う。
第4条 当会社の公告は、群馬県において発行する上毛新聞に掲載する方法による。
電子公告の記載例
当会社の公告は、電子公告の方法により行う。
当会社の公告は、電子公告の方法により行う。ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告ができない場合は、官報に掲載する方法により行う。
貸借対照表の提供のみ電子公告によることも可能です。
当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。ただし、貸借対照表に係る情報の提供はインターネットを使用する方法により行う。
電子公告の場合や貸借対照表に係る情報の提供をインターネットを使用する場合は、具体的なURLを登記簿に記載しなければなりません。
しかし、定款には上記のように「電子公告の方法により行う。」「貸借対照表に係る情報の提供はインターネットを使用する方法により行う。」だけで足りるとされています。
公告方法を電子公告としている会社につき、公告を掲載するURLが変わる度にその変更登記が必要となりますが、公告方法が電子公告である限り、定款の変更自体は不要です。
どんなときに公告が必要となる?
公告には、「決算公告」と「決定公告」の2種類の公告があり、決算承認をした定時株主総会後に遅滞なく貸借対照表の内容またはその要旨を記載する決算公告と、合併や吸収分割、資本金の額の減少などを行う際にする決定公告があります。
各公告方法のメリット・デメリット
各公告方法にはそれぞれ特徴があります。新しく設立する株式会社においても(既存の株式会社においても)、「官報に掲載する方法」が選択されているケースが多い印象です。
こちらの記事に各公告方法のメリット・デメリットをまとめていますので、ご参照ください。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。