商業登記関係 取締役はどのようなときに退任するか(取締役の退任事由)
取締役の退任事由
取締役と株式会社の関係は、委任関係とされています。
(株式会社と役員等との関係)
会社法第330条株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
取締役は次の事由が生じたときに、会社との委任関係は終了し、その地位を失うことになります。
任期満了
株式会社の取締役には必ず任期があり、その任期が満了したときは取締役は退任します。
取締役の任期については、こちらの記事をご参照ください。
また、任期満了により取締役が退任するときに、当該取締役が退任することにより会社法または定款に定める取締役の人数を満たすことができなくなってしまう場合は、当該取締役は権利義務取締役として取締役の地位に留まります。
辞任
取締役は、いつでもその地位を辞任することができます。
辞任はその意思表示によって効力が生じますが、登記手続きのために辞任する取締役から辞任届をもらっておくことをお勧めします。
取締役は自由に辞任することができるとはいえ、会社に不利な時期に辞任をしたときは、損害を賠償しなければならないとされています。
また、取締役が辞任により退任するときに、当該取締役が退任することにより会社法または定款に定める取締役の人数を満たすことができなくなってしまう場合は、当該取締役は権利義務取締役として取締役の地位に留まります(取締役の地位を逃れることができません)。
解任
取締役は株主総会の決議によって解任することができます。
取締役を解任するときの株主総会の決議要件は、定款に別段の定めがない限り、普通決議です。
正当な理由がなく解任をされた取締役は、解任によって生じた損害の賠償を会社へ請求することができます(会社法第339条2項)。
欠格事由の発生
取締役が、会社法第331条1項に定められている取締役の欠格事由に該当することになった場合は、当該取締役は退任します。
加えて、定款で欠格事由を定めている場合に、取締役が当該欠格事由に該当することになった場合は、当該取締役は退任します。
死亡
取締役が死亡したときは、株式会社との委任関係が終了しますので(民法第653条)、取締役を退任することになります。
自動的に相続人が取締役に就任することはありません。
相続人が取締役になるには、株主総会の決議によって取締役に選任されなければなりません。
後見開始の審判
取締役が後見開始の審判を受けたときは、株式会社との委任関係が終了しますので(民法第653条)、取締役を退任することになります。
解散、破産手続開始の決定
株式会社が解散したとき、破産手続開始の決定を受けたときは、取締役はその地位を失うことになります。
なお、株式会社が解散するときに株主総会の決議で清算人を選任しなかった、あるいは定款で清算人として定める者がいない場合は、解散時の取締役がそのまま清算人となります。
この記事の著者
司法書士
石川宗徳
1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)
2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。
2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。
また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。